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住宅ローン、交渉の電話1本で新車1台分削減 ある会社員の住宅ローン見直し奮闘記

2016/9/23

 加えて、実際の融資までもっていくには時間がかかるという。「先月からの審査待ちがすでに数十件ありまして、Aさんの場合は仮審査だけでも最低2~3週間かかるとお考えください。中には審査だけ先に通しておき、融資の実行は毎月の金利動向をみながらタイミングを探っているお客様もいらっしゃいます」(B行の担当者)。今は月初に申し出たとしても、実際に融資できるのが最短でも翌月になるほどの盛況なのだそうだ。店舗では他の客を見かけなかったが、週末になると住宅業者から審査依頼がまとめて持ち込まれるため、処理が追いつかないと窓口では言う。Aさんは審査に必要な書類は全て持参してきたのだが、「まずは当行のサイトから審査申し込みをしてください」と言われてしまう。「要するにその支店で引き受けたいという積極的な声はかからずじまいで、担当者の名刺ももらえなかったんです」(Aさん)。担当者は「半年前なら月内に融資実行できたんですがね……」と、表情にも疲れをにじませていたという。

 ただ適用金利に関しては、この銀行では審査が通れば、借り換えでも新規と同じ水準の低金利で借りられることがわかった。定期預金や少額投資非課税制度(NISA)を同時に申し込めばさらなる金利優遇も受けられる。とはいえ、審査が通らなければそこまでだ。そういえば、3年前に相談した際、審査が通らなかったので別の銀行にしたことをAさんは思い出した。B行は厳しい審査で貸し倒れリスクを低減させているからこそ、低金利が実現できているようだった。残念ながらこの銀行には頼めそうにない。

 同じ足で、近隣にあるメガバンク3行の支店でも話を聞いてみた。共通して印象に残ったのは、入り口に立つ係員に申し出ると、すぐさま融資担当者が駆けつけてくれたことだ。「ぜひ説明させてほしい」と相談カウンターに招かれ、名刺を渡されるなど、前述の信託銀行とはだいぶ異なる印象を受けた。中には最短3日で審査結果が出て、返済先の銀行との日程調整が済めばすぐに融資実行できるという銀行もあり、「銀行によって対応がだいぶ異なるのを実感しました」(Aさん)。

 気を良くしたAさんは他行の低い金利を材料に、もう一段低い金利で借り入れできないかと交渉もしてみた。結果、借り換えの場合の最優遇金利は、新規で提示している金利と同水準で、これをさらに引き下げることはできないということだった。「既に相当低い金利だから無理もない。これは大手行で共通していましたね」(Aさん)

■元の鞘が一番

借入先の銀行から送付されてきた金利引き下げ手続きに関する書類

 主要各行で借り換えの際の金利がわかり、明らかに得になることもわかったので、あとは銀行を決め、実際の手続きを進めるのみだ。まずは今住宅ローンを借りているメガバンクのC行に返済手続きの方法を電話で聞いてみた。借り換えの一括完済にも事前の申し入れが必要だし、固定期間中の完済には手数料も発生するからだ。C行は「手続きの日程が決まったら、3週間前までに電話で連絡してください」ということだった。

 ここで「はい、わかりました」と言って電話を切らないのがAさんの粘り強いところ。他行で借り換えるための手続きを聞く電話だったのに、最後にだめもとでC行に金利引き下げをお願いしてみたのだ。「C行さんが下げてくれるなら、自分としても他行でまたいち(審査)からやり直すよりは楽」(Aさん)だからだ。

 しかし、「相手は住宅ローンに精通したプロ。なのでただやみくもに引き下げをお願いするのではなく、調べた中で一番低い金利を提示している銀行名と適用金利を伝えたんです」。すると、電話口の担当者は意外にも「行内で検討したいので1日待ってほしい」というではないか。

 同じ日の夕方、C行からかかってきた電話は「金利引き下げに応じることは可能」といううれしい回答だった。内容は8月適用金利の10年固定型で0.55%。手続きに日数を要するため、実際には9月適用金利で条件変更となり、9月からの10年間が固定金利になるという。この条件変更にかかる費用は、手数料5400円(税込み)と200円の収入印紙だけ。0.55%という金利自体は他行よりは高いが、数十万円かかる借り換えの諸費用を考えるとほぼ一緒で、絶妙な水準だった。「経験者ならわかると思いますが、住宅ローンを借りるときは大変な量の書類に署名やなつ印をしなければならない。会社員なのでそうした手続きの煩雑さを考えると、元の鞘(さや)に収まって、同じ銀行で借り続けるほうがどう考えても得策だったわけです」(Aさん)

 初めに状況確認のために他行の支店にも足を運んだものの、実質的にはたった1本の電話で新車1台分の支払額を削減できたことになる。C行の担当者によると、やはり住宅ローン見直しの相談が最近非常に多くなっており、個別に対応しているが、顧客からの引き下げ要請に応じるかどうかはケースバイケースだという。借入金額や期間などが考慮されるようだ。

 最後に、Aさんに今回うまく交渉できたコツを聞いてみた。「うーん、まずは誠意ある対応を心掛けることですかね。それと金利引き下げ交渉では、検討している具体的な銀行名や金利を伝え、本気であることを伝えるのが大事だと思いました」

 手続きを終えたAさんの適用金利は9月から引き下げられ、10月から毎月の返済額は1万円程度、ボーナス分返済月は3万円程度抑えられる予定だ。今は、これから届く新しい返済予定表を楽しみに待っているという。

 9月の適用金利は0.10%程度上がりましたが、それでもマイナス金利導入前に比べるとまだ大幅に低い水準です。借り換えで得られた「臨時ボーナス」は、Aさんの家計に直接キャッシュを生み出すわけではありませんが、少なくとも心理的な面で個人消費活性化の原動力になっていくでしょう。数年以内に住宅ローンを組んだばかりの人でも、検討する価値は十分ありそうです。(マネー研究所 小野啓一)

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