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6400通りを調べてわかった 資産分散のメリット QUICK資産運用研究所 高瀬 浩

2016/9/28

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資産運用の世界には「すべての卵を一つのカゴに盛るな」という格言がある。一つの金融資産に集中投資するのではなく、複数の金融資産に分散投資する「資産分散(アセットアロケーション)が大切」という意味だ。では、資産分散すると具体的にどんなメリットがあるのだろうか。

実際に購入可能なインデックス型の投資信託を使って、資産配分の違いで価格変動リスクとリターンがどう変化するのかを検証してみた。すると、得られるリターンが同程度でも、一つの投信に投資するより、複数の投信に分散投資した方がリスクをより小さくできることがわかった。

■8つの資産分散で検証

投資信託は単独でも多くの銘柄を組み入れるので、1本の投信自体が分散投資しているのが大きな特徴だが、ここでの「資産分散」とは、値動きの傾向の異なる投信を複数組み合わせることを指す。

投資対象は株式、債券、不動産投資信託(REIT)の3種類とし、主な投資先の地域別に分けて(1)国内株(2)先進国株(3)新興国株(4)国内債券(5)先進国債券(6)新興国債券(7)国内REIT(8)海外REIT――の8つの資産とした。

他にも、ヘッジ付き海外債券やコモディティー(商品)など特徴的な資産はあるが、今回は世界の金融資産の多くをカバーするこの8資産で資産分散の効果を検証することにした。

8資産を代表する投信として、インデックス型投信の中から、5年間分配金を出していないなどの条件を満たしたうえで、各資産ごとに過去5年間のリターンが最大となったファンドを選出した(表A)。

いずれもネット証券や銀行のネット専用取引を通じ、販売手数料なしで購入可能な投信だ。国内株投信は日経平均連動型となったが、これは東証株価指数(TOPIX)連動型よりも5年リターンが大きかったためだ。

ここで重要となるのは、8つの投信(8資産)の組み合わせ方と配分比率だ。配分合計が100%になる8投信の組み合わせは無数にあるが、今回は実践的な組み合わせを検証するため、各投信の配分比率は12.5%(=100÷8)を基にして決めた。

8投信の組み合わせパターンの配分比率をみると、8資産を12.5%ずつ均等配分するパターンや、一部の資産をゼロにするパターンなど、組み合わせの数は6400通りあまりに上った。

この組み合わせパターンすべてについて、5年前にそれぞれ所定の配分比率で投資してそのまま放置した場合の5年後のリターンと、その間の価格変動リスク(値動きの上下への振れ幅)をしらみつぶしに計測した。

そして、約6400通りの資産配分のうち、同程度のリスクの中でリターンが最高か最低となった組み合わせに絞り込んで抽出。それに加え、各8資産に単独投資した約40通りについて、価格変動リスクを横軸に、リターンを縦軸にとってプロットした(グラフB)。

■リスクとリターンを可視化

グラフBを見ると、リスクとリターンの関係性の大原則である「ハイリスク・ハイリターン」「ローリスク・ローリターン」が浮き彫りになっている。

つまり、高いリターンを獲得するには、リスクも高くとる必要がある。単独投資では、グラフ右上の「(8)海外REIT」や「(1)国内株」などが当てはまる。一方、グラフ左下の「(4)国内債券」はリスクも低いがリターンも小さい。ただ、グラフ右下の「(3)新興国株」のように、ハイリスクだからといってハイリターンになるとも限らない。

特筆すべきは、リスクとリターンを可視化したグラフBに資産分散の効果が現れている点だ。「同じ程度のリターンをより小さなリスクで獲得する」「同じリスクならリターンをより高くする」組み合わせが見つかり、資産分散すると「リスクを抑えながらリターンをより高くする」のが可能だとわかる。

例えば、単独投資の「(6)新興国債券」(リスク:約14%、リターン:約2%)と比較すると、同じ程度のリスクでリターンが約17%とより高い組み合わせの「合成X」がある。「合成X」は「(5)先進国債券12.5%、(7)国内REIT25%、(8)海外REIT62.5%」の配分比率だ。さらに、「合成X」はリターンがほぼ同程度の単独投資「(2)先進国株」よりもリスクが4%程度小さい。

同様に、「(3)新興国株」単独のリスクは20%を超すが、リターンが同水準の「合成Y」のリスクは約4%と5分の1に縮小。「合成Y」の配分比率は「(4)国内債券75%、(5)先進国債券12.5%、(8)海外REIT12.5%」になっている。

リターンが同程度となった「(2)先進国株」と「合成X」、「(3)新興国株」と「合成Y」の値動きをグラフで比較してみよう(グラフC)。「合成X」は「(2)先進国株」に比べ上下の振れ幅が抑えられ、「合成Y」は「(3)新興国株」より緩やかな値動きとなっている。

検証した過去5年間では新興国の株式や債券市場に逆風が吹き、リターンが振るわなかった。今後もこうした低調が続くのか、反騰に向かうのかどうかは予測困難だ。経験則としていえるのは、好調な資産も不振な資産も毎年のように入れ替わる。その点でも複数の投信、それもできるだけ値動きの傾向が異なる投信に資産分散するのは、常にベストといかなくてもベターな選択になる。

■リバランスも重要に

最近話題のプロが資産運用を指南するファンドラップや、コンピューターが資産配分を自動決定するロボット運用は、個々人のリスク許容度を判定のうえ、そのリスクに応じて最適と判断する資産配分を弾き出す。

ただし、リターンは今回の検証のような過去の実績リターンではなく、期待値として想定するリターンを仮定するのが一般的だ。期待リターンを基にするので、こうしたアドバイスを活用したとしても、金融市場が急変して運用成果が期待外れに終わる可能性からは逃れられない。

資産分散を自己流で行うにしても、資産の組み合わせと配分比率に決定打はないのが実情だ。自分なりの資産配分が心もとない場合は、8資産を各12.5%ずつの比率で均等配分するのも一法だ。グラフBに示すよう、8資産均等配分した組み合わせのリスクとリターンは全体のほぼ中間に位置する。1本の投信で国際分散投資するバランス型ファンドを選ぶことも選択肢になるが、リスクとリターンの特性や運用コストを十分に調べて、納得しておくことが肝心だ。

資産分散投資をしていると、各投信の値動きに合わせ、資産の配分比率は最初に決めた比率からだんだん乖離(かいり)していく。これを基の配分に戻す「リバランス」も重要だ。

今回の分析では5年前に所定の配分比率で一括投資し、途中リバランスは行っていない。リバランスの頻度はどうするといいのか、注意すべき点は何かなど、リバランスを行ったリスクとリターンの分析内容は次の機会に解説する。

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