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パート主婦どうする? 「106万円の壁」が出現 「配偶者」巡る制度(1)

2016/9/27

年収を「130万円未満」に抑えているパート主婦は選択を迫られる

会社員の夫がいる専業主婦です。パートで働こうと思いますが、年金保険料の負担などで大きな制度変更があると知りました。働き方によって手取り収入はどう変わるのでしょうか。

配偶者を巡るお金のルールが大きく変化しつつある。まず10月、従業員数501人以上の企業で年金や健康保険の社会保険料を払う基準が変わる。

会社員や公務員の妻はこれまで年収130万円未満なら自分で保険料は払わなくてよかったため、この範囲に仕事をセーブする人が多かった。いわゆる「130万円の壁」だ。この基準が10月から、年収106万円以上、週20時間以上勤務などに切り下がる。

仮に妻の年収が106万円だとすると、9月現在はゼロの保険料が10月から年約15万円かかる(東京都の協会けんぽ加入の場合)。保険料は課税所得を計算する際に差し引けるので所得税や住民税はわずかに減るが、そのメリットは数千円程度。家計の負担は14万円以上“純増”になる。

この手取り減少分を取り戻すのは簡単ではない。同額分の年収を増やしても追いつかないのだ。年金や健保の保険料は「標準報酬月額」という基準報酬に一定率をかけて計算する。年収が上がれば保険料も上がる仕組みだ。さらに妻の年収が上がると、夫の配偶者特別控除も徐々に縮小し、税負担が増える。

社会保険労務士の井戸美枝氏が試算した。妻の年収が106万円で夫の年収が500万円の世帯で、10月から妻が保険料を新たに負担した場合、現在と同じ世帯手取りを確保するには、妻は年収を約130万円まで上げる必要がある。

理論上は年収を減らせば保険料の負担発生は避けられるが、井戸氏は「パートの場合、年収を抑え続けて働くのは現実的に難しい」とみる。個人の都合で働く時間を調整できるとは限らないし、労働時間を減らしすぎると年収も必要以上に下がってしまうからだ。

政府はさらに社会保険料の負担の適用範囲を拡大することを検討中だ。500人以下の企業でも労使合意があれば、保険料を負担する基準を年収106万円などに変更できるとする改正法案が、既に国会に提出されている。加えて「106万円より低年収の人も対象になる改正が将来的に考えられる」(井戸氏)。

これらの動きを考慮すると、無理に年収を抑えるより積極的に年収増を狙う方が有効かもしれない。目先の保険料負担は重いが、デメリットばかりではない。

妻も年金保険料を払えば将来、受け取る年金が増える。年金受給が始まる65歳以降に長生きすれば、保険料による手取り減を上回る年金額も期待できる。また、年収がある程度まで増えれば個人型確定拠出年金(DC)に加入し、税負担を軽減しながら年金額の一段の上積みを狙う手もある。

安倍晋三首相は「一億総活躍」を掲げ、主婦らが職に就きやすくする改革を強力に進めている。「配偶者」のお金を巡る一連の改正の動きを押さえ、新しい基準に見合った働き方を模索する必要がありそうだ。

[日本経済新聞朝刊2016年9月21日付]

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