REIT価格は停滞感が強まっている。日経平均株価が2016年9月5日に1万7000円台を回復したのに対し、東証REIT指数は6月末以降、1800ポイント前後での動きが続いている。
価格が安定しているという見方もできるが、個別銘柄の動向に目を移すと、実際には銘柄の二極化が進んでいることが分かる。
REITは投資口分割の影響があるので価格だけでは動向を判断しにくい。そこで利回りに着目して各銘柄を比較すると、3%以下で推移するような投資家の需要が高い銘柄がある一方で、利回り6%超まで投資家需要が離散している銘柄も出てきている。
各銘柄の利回りがこれほどまで乖離するのはリーマン・ショックでREIT価格が大幅に下落して以来のことだ。
各国が金融緩和政策を採り、市場から満足な金利を得るのが難しい今、利回り6%超なら長期保有前提で投資したいと考える投資家も少なくないだろう。ただし、こういった高利回りのREIT銘柄に投資する際には、覚えておくべきことが2つある。
高利回り銘柄2つのリスク
1点目は、高利回り銘柄は市場全体が調整する時、他銘柄より価格下落率が大きくなるということ。実際に5月末から8月末の値動きでこのことを検証してみよう。
9月5日時点で利回り3%以下の日本ビルファンドとジャパンリアルエステイトのこの期間の価格下落率は5%だった。これに対して利回り6%超銘柄のスターアジア不動産とサムティ・レジデンシャルは13%ほど下落している。たとえ利回りが3%以上高くても、投資口価格の下落で最終的なリターンは低利回り銘柄の方が大きくなるケースが多いのだ。
2点目は高利回り銘柄は被合併銘柄になるリスクが高いこと。利回りが高い(価格が低い)銘柄は増資を行うことが難しい。低い価格で増資を行うと、分配金の希薄化を招き、増資前の分配金水準を維持できなくなることが多いからだ。
増資が事実上できないということは、スポンサー企業は手持ちの不動産を傘下のREITに売却できないことを意味する。つまりスポンサーにとっては、そのREITを運営するメリットがないということになる。
するとどうなるか。分配金利回りが高い状態が続いているような銘柄は、市場全体が大幅に上がり、増資ができるような時期がやってこないと、いずれ他銘柄と合併をさせられてしまうかもしれないのだ。もし被合併銘柄となると、合併比率にもよるが、分配金が合併前より減ってしまうことが多い。分配金狙いで高利回り銘柄に投資したのにもくろみが外れた、という事態は十分考えられる。6%超の利回りは魅力的だが、こういったリスクは十分認識しておきたい。

不動産証券化コンサルティングおよび情報提供を手掛けるアイビー総研代表。REIT情報に特化した「JAPAN-REIT.COM」(http://www.japan-reit.com/)を運営する。
[日経マネー2016年11月号の記事を再構成]