官僚出身「異なる知」の力に賭ける 山口裕視さん三井物産戦略研究所社長(キャリアの扉)

2016/9/25

世界各地や新しい市場の情報を入手、分析する三井物産戦略研究所。研究員ら約100人を率いるトップに4月、就任した。三井物産本体では女性初の執行役員に就いた。来期に始まる中期経営計画の立案に向けビジネス環境の調査や研究を急ピッチで進めている。

やまぐち・ゆみ 1983年運輸省(現国交省)入省。16年4月から現職。愛読書は「パンセ」。55歳。

1年前までは国土交通省のキャリア官僚だった。観光庁次長として訪日外国人の受け入れを増やすための政策を練っていた。27歳の時に同僚と結婚し子育ても両立してきた。数少ない女性官僚として後輩に経験を伝える役割も担ってきた。

32年勤めた職場から離れることを決めたのは、仕事とは別に取り組んできたライフワークがあったからだ。一つが日本アスペン研究所。古典から経営に必要な教養を学ぶセミナーを開催しており、2000年に初参加して以来、司会進行役を務めてきた。今道友信氏や本間長世氏(ともに故人)ら哲学者や思想史家に感銘を受け、「対話」の大切さを学んだ。活動により参加したいとの思いが募った。

もう一つが在米日系人団体の米日カウンシルだ。国交省の後輩の紹介でアイリーン・ヒラノ会長と知己になった。東日本大震災を機に日米の官民で始めた指導者育成事業「TOMODACHI(トモダチ)イニシアチブ」に関わり日米交流の活動に共感を深めた。

「心から好きで取り組む活動にエネルギーを注ぎたい」。その気持ちを強めたのが、米日カウンシルにつないでくれた後輩の死だった。闘病の末に亡くなった彼の思いを引き継ごうと決意した。

しかし退職後、思いがけないところから声がかかった。12年から2年間、出向していた三井物産だ。当時を知る人事担当者から「経営企画部にこないか」との打診があった。転身を決めたのは、同社が2つの活動と関わりがあったほか、異質な人材や多様な価値観を取り入れて、組織の力を強めようとする「ダイバーシティ経営」に共感したからだ。

戦略研究所には「自分も含めて」様々なバックグラウンドを持つ人材が中途入社する。世界の各拠点を回り、「異なる知を最大限に生かしたい」との思いを強めている。

(成瀬美和)

〔日本経済新聞朝刊2016年9月24日付〕

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