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家を買う前に 購入・所有・売却でかかる税金

2016/9/24

マイホームの購入をテーマに議論してきた筧ゼミ。最終回は中堅証券会社の御曹司、宗羽士郎君が住宅にかかる税金について発表します。株式や債券といった金融商品に比べて税目が多いことに驚いたようです。

筧花子(かけい・はなこ、50=上)経済大学院教授。家計の経済行動や資産形成、金融リテラシーが専門。 宗羽士郎(そうば・しろう、23=中)大学院1年生。中堅証券「宗羽証券」創業家の一人息子。IT好き。 岡根知恵(おかね・ちえ、38)パート主婦。将来の家計に不安を覚え、金融知識を身に付けようと大学院に。

宗羽 株式に税金がかかるのは主に売却益や配当が出た場合です。ご存じの少額投資非課税制度(NISA)の枠内なら、それも非課税になります。ところがこちらの一覧表を見てください。マイホームは買っただけで消費税、不動産取得税、登録免許税、印紙税がかかるのです。

岡根 消費税は大きいですよね。いまの税率8%で計算すると、5000万円の家を買ったら400万円、税率が10%に上がったら500万円……。

 そんなにかかりませんよ。宗羽君、説明してください。

宗羽 はい。実は消費税がかかるのは建物だけで、土地にはかかりません。例えば5000万円する新築一戸建ての価格の内訳が土地3000万円、建物2000万円だとしたら、税率8%で消費税は160万円です。中古の場合、不動産会社がいったん買い取って販売する物件は新築と同じ扱いですが、個人が売り主になっている物件は建物にも消費税はかかりません。

 個人から買う中古であっても、取引を仲介する不動産会社に支払う手数料に消費税がかかりますが、仲介手数料の上限は取引価格の「3%+6万円」なので、5000万円の家を買う取引でも消費税は12万円余りです。

岡根 税率3%の不動産取得税というのは初めて聞きました。5000万円の家なら150万円かかるのですか。

宗羽 税率をみると不安になりがちですが、マイホームは税負担がかなり軽くなる措置があります。

 宗羽君、まず課税標準について説明したほうがいいですね。

宗羽 はい。課税標準というのは、税率をかける対象のことで、消費税なら建物部分の購入代金です。一方、不動産取得税の課税標準は市町村が一定のルールで計算する固定資産税評価額で、土地も建物も時価を下回ります。

岡根 マイホームには、どんな軽減措置があるのかしら?

宗羽 まず土地は固定資産税評価額の2分の1が課税標準になります。新築の建物は評価額から1200万円を控除できます。

 先ほどの5000万円の新築一戸建ての例で試算してください。

宗羽 土地の固定資産税評価額は時価の約7割ですから2100万円、建物の同評価額は一概にはいえませんが、とりあえず時価の約6割として1200万円としましょう。土地の取得税はまず2100万円の2分の1に3%をかけて31万5000円。実はここから土地の同評価額と建物の面積によって大きな軽減措置があって、平均的な宅地なら税額がゼロになることが多いのです。建物も1200万円を控除できるから課税標準がゼロになって、取得税はかかりません。

岡根 安心しました。でも登録免許税と印紙税も知らないのですが。

宗羽 登録免許税は土地と建物に関する権利関係を、だれもが見られる公式の帳簿である登記簿に記載するときにかかります。所有権を記載するには、土地は固定資産税評価額の1.5%、新築建物は0.15%を納税しなくてはなりません。土地と建物を担保に入れて住宅ローンを借りると、その抵当権にも登録免許税がかかります。印紙税は契約書にかかる税金です。1000万円超5000万円以下の売買契約なら1万円、5000万円超1億円以下なら3万円です。

岡根 不動産は買ったときだけでなく、所有している間もずっと税金がかかりますよね。

宗羽 土地や建物の所有者にかかる固定資産税です。課税標準は固定資産税評価額です。毎年1月1日の所有者にかかる税金で、市町村によって異なることもありますが、税率は1.4%。ただし住宅用地に限っては特例があり、土地は200平方メートルまでは課税標準を6分の1にできます。新築建物も特例があります。一般的な2階建ての一戸建てなら3年間、マンションは5年間、床面積120平方メートルまで課税標準を2分の1にできるのです。耐久性に優れた「長期優良住宅」に認定されていれば、特例の期間が2年間延びます。都市計画税も土地200平方メートルまで課税標準は3分の1です。

 固定資産税も都市計画税も、土地が200平方メートルを超えても建物の床面積の10倍までは軽減措置がありますよ。

宗羽 これまで話してきた税金のほかに、転勤など何らかの理由で家を売るときに売却益が出ると課税されます。例えば所有期間が5年超10年以下なら、税率は20.315%です。もっともマイホームの売却益は3000万円まで特例で非課税です。課税されることは少ないでしょう。ただしこの特例と住宅ローン減税には、併用できない期間が設けられています。一般的な住み替えの場合、売却益の特例か、ローン減税かどちらか一方を選択することになります。都心の人気エリアのマンションなどを売って住み替える場合は、どちらが有利か検討する必要があります。

■気をつけたい贈与の税制
辻・本郷税理士法人 公認会計士・税理士 高橋智也さん
住宅購入をめぐっては贈与の税制にも気をつけましょう。まず新居を夫婦それぞれ2分の1ずつの共有名義にしたくても、妻が専業主婦などで購入資金を出していなければ、税務上は夫から妻への贈与とみなされることがあります。これを知らずに共有名義にしてしまっても、登記を改めれば贈与税は課税されない場合があります。ただし、登記に余計なコストがかかったり、金融機関の了承が必要だったりします。
一方、父母や祖父母から購入資金を贈与してもらう場合、最大1200万円まで贈与税がかからない特例があります。この非課税枠を2019年4月から最大3000万円に拡大することが閣議決定しています。消費税は10%に上がる予定ですが、将来の相続税まで含めて考えれば、トータルでは節税につながる可能性があります。(聞き手は表悟志)

[日本経済新聞朝刊2016年9月17日付]

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