点検 LINE格安SIM、データ残量確認もトークで
格安SIM最前線
ケータイメールに代わるスマートフォン(スマホ)時代のコミュニケーション手段として、広く定着しているスマホ向けアプリの「LINE」。そのLINEを手がけるLINE株式会社が、「LINEモバイル」のサービス名で格安SIM事業に参入した。LINEを運営する会社が手がけるだけあって、LINEユーザーを想定したサービスが用意されている。本サービス開始に先立って実施された、先着2万人限定の先行申し込みで契約したSIMカードが到着したので、さっそく使用してみた。
料金プランは大きく分けて2つ
9月5日に発表された「LINEモバイル」は、NTTドコモのネットワークに相乗りした格安SIMサービスだ。SIMフリースマホやNTTドコモの中古端末などでデータ通信や音声通話が利用できる。
料金プランは「LINEフリープラン」「コミュニケーションフリープラン」の2種類。
「LINEフリープラン」は、毎月1ギガバイトの容量まで高速データ通信が利用可能。月額料金は音声通話もできる音声通話SIMが1296円(税込み、以下同)、音声通話ができないデータ通信SIMが540円になる。
「コミュニケーションフリープラン」は、4種類のデータ容量が用意される。一番安い毎月3ギガバイトの場合、月額料金は音声通話SIMが1825円、データ通信SIMが1198円となっている。
料金プラン | LINEフリー プラン | コミュニケーションフリー プラン | ||||
データ容量 | 1GB/月 | 3GB/月 | 5GB/月 | 7GB/月 | 10GB/月 | |
月額 料金 | 音声通話 SIM | 1296円 | 1825円 | 2397円 | 3110円 | 3477円 |
データ通信 SIM | 540円 | 1198円 | 1771円 | 2484円 | 2851円 | |
下り最大 通信速度 | 375Mbps |
どちらのプランも、通信速度は下り最大375Mbps。データ容量を使い切ると200kbpsに制限される。
LINEモバイルではSIMカードの単体提供だけでなく、SIMフリー端末にSIMカードをセットした「格安スマホ」も取り扱う。9月5日の時点では、富士通製のSIMフリースマホ「arrows M03」(販売価格3万5424円)をはじめとしたスマホ7機種、タブレット1機種が販売中だ。
LINEやSNSの通信は無料に
価格だけをみると、LINEモバイルはやや割高だ。他社の格安SIMには、毎月3ギガバイト使える音声通話SIMでも1300円を切る料金プランがある。
だが、LINEモバイルには「LINEアプリの通信が無料になる」という大きな特徴がある。LINEアプリでテキストや写真・動画を送受信したり、無料通話(音声・ビデオ)を利用したりしても通信量としてカウントされず、データ容量を消費しないのだ。
またLINEモバイルではデータ容量を使い切ると通信速度は下り200kbpsに制限されるが、もともとデータ容量を使わないLINEの通信は速度制限の対象外となるため、いつでも通常の速度で利用できる。
このほか、購入したスタンプのダウンロードやアプリの設定を行った際の通信なども、無料の対象となる(ただし、ライブ動画を視聴できる「LINE LIVE」のように、LINEのサービスであっても無料の対象にはならない通信もある)。
さらに、コミュニケーションフリープランでは「Twitter」と「Facebook」も無料通信の対象となる(ライブ動画の配信・視聴などは対象外)。LINEやSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)のヘビーユーザーほど、無料の対象になる通信量の割合が多くなり、データ容量の小さな安価のプランを契約することが可能になる。
格安SIMでもLINEのID検索が可能に
そのほか、LINE自身が運営するサービスならではの特徴もある。
これまで格安SIM利用者がLINEを使う場合、IDの検索による友だちの登録ができなかった。
LINEで他のユーザーを友だちとして登録する方法には、「招待」「QRコード」「ふるふる」「ID/電話番号」という4種類がある。相手が目の前にいれば、画面に表示したQRコードや、互いの端末を同時に振る「ふるふる」を使って登録できる。相手が離れた場所にいても、電話番号やメールアドレスを知っていれば「招待」で登録することが可能だ。
だが、昔の同級生のように離れた場所にいて連絡先もわからない相手や、互いの電話番号やメールアドレスを交換していない相手を友だちとして登録するには、LINEのIDを検索しなければならない。
LINEではIDの検索ができるのを18歳以上のユーザーに限っており、LINEアプリで「年齢確認」の手続きを経ないと、IDの検索ができない。しかし、LINEではユーザーの年齢を確認するのに大手キャリアのオンラインアカウントを使っていたため、格安SIMでは年齢確認の手段が存在せず、18歳以上でもIDの検索による友だちの登録ができなかったのだ。
LINEモバイルでは、各ユーザー固有の「利用コード」を入力することで、LINEモバイルの契約者情報を使ってLINEの年齢確認ができる。利用コードはLINEモバイルのマイページでのみ取得できる。現時点でLINEモバイルはLINEの年齢確認に対応する唯一の格安SIMとなっている。これはLINE自身が運営するサービスならではの強みといえるだろう。
残り容量も「トーク」で確認
LINEモバイルは9月21日に本サービスが開始されたが、これに先立って先着2万人限定で先行申し込みを受け付けていた。受け付けが始まった9月5日にさっそく申し込んでみたところ、2日後の9月7日にSIMカードが到着した。
パッケージはグレーの一色で、他社の格安SIMパッケージと比べてサイズは小さめ。左上に小さく「LINE MOBILE」のロゴと内容物が英語で記されているのみ、というシンプルな外見だ。内容物はSIMカードとマニュアルのみ。マニュアルにはSIMカードの取り付け方や設定方法が記されている。
設定については他社の格安SIMと同様で、Androidの場合はLINEモバイルのアクセスポイント情報を設定アプリに登録する。iPhoneやiPadの場合は、LINEモバイルのウェブサイトからWi-Fi経由で構成プロファイルをインストールすればいい。
ユニークなのは、今月の通信量やデータ容量の残り容量のチェック方法だ。
一般的な格安SIMでは専用アプリやウェブサイトで残り容量を確認する。しかし、LINEモバイルもマイページで容量を確認できるのだが、LINEモバイル公式アカウントとの「トーク」でも残り容量を確認できるのだ。マニュアルにはユーザーのLINEアカウントとLINEモバイル公式アカウントの連携方法が記されており、アカウントを連携すれば、今月の通信量やデータ容量の残りをトーク経由でチェックできるようになる。
トークを使った残り容量の確認手順は以下の通り。まず公式アカウントの「トーク」をタップする。
トークが開くので、次に「データ残量確認」をタップ。
「通信量参照」の確認画面が出たら、右上の「閉じる」をタップしてトークに戻る。
データ残量を通知したメッセージが読める。
普段使っているLINEアプリで確認できるので、操作に戸惑うことなく、手軽にデータ残量をチェックできるという方法には、LINEらしさを感じた。
気になる通信速度だが、本サービスが始まった9月21日の12時台に3回測定して平均を算出したところ、下りは12.02Mbps、上りは7.21Mbpsだった(長野県佐久市にて速度測定アプリ「RBB SPEED TEST」を使って測定。機種はASUS製Androidスマホ「ZenFone Go」を使用)。
格安SIMの通信速度が遅くなりがちな平日の12時台としては十分な速度だが、今後ユーザーが増えるにつれて変化することも考えられる。
他社にはまねできない「LINEアプリとの親和性」
昨年はデータ容量当たりの最安値を競っていた格安SIMだが、今年に入ってからは通話定額オプションの登場や通信品質の向上など、安さとは違った競争軸を打ち出す通信会社が増えてきた。
そんななか、現時点では最後発といえるタイミングで登場したLINEモバイルは、「LINEアプリとの親和性」という簡単にはまねできない強みを持って登場した。
冒頭でも述べたように、LINEは今やスマホにとって欠かせないコミュニケーションツールの一つだ。データ容量の残量を気にすることなく「トークも無料通話も使い放題」のLINEモバイルに、通話定額オプションがある格安SIMよりも魅力を感じるユーザーは決して少なくはないだろう。
サービスが始まったばかりのLINEモバイル、今後の展開にも注目していきたい。
(ライター 松村武宏)
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