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プロが明かす出世のカラクリ

昇給より昇格 課長になれば100万円の年収アップ 今ドキ出世事情~あなたはどう生きるか(12)

2016/9/20

 平均年収が下がり続けている、ということが言われ始めて20年近くになります。言い換えれば、今の40代前半までの人たちは、平均年収が下がっていく時代しか知らないということでもあります。統計(国税庁の民間給与実態統計調査)では1998年を頂点として、およそ50万円、給与所得者の平均年収が下がっています。

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 しかしより深刻なことは、一般社員層の年収が下がっている点です。全体の下がり幅が50万円ほどであるのに対して、一般社員層の年収の下がり幅はおよそ100万円。月給にすれば6万円~8万円くらいになります。その結果、一般社員のままでは十分な生活ができなくなっているのが現実なのです。

 この事実を人事の仕組みから読み解きながら、会社に人生を預けてしまう「入社」意識の危険性をあらためて考えてみましょう。

■なぜ一般社員の給与は増えなくなったのか

 グラフからもわかるように、2002年時点での一般社員の給与は30代後半までどんどん増え続けていました。

 2002年時点で20~24歳の平均年収は約315万円でした。それが35~39歳になると約565万円にまで増えました。その差は250万円。つまり、誰でも入社して15年くらいは毎年の昇給が14000円くらいはあったということです。

 しかし2016年では20~24歳の平均年収は約295万円。この時点ですでに20万円も下がっています。そして35~39歳でも463万円までしか増えません。その間に増える金額は約170万円で、毎年の昇給平均は9400円ほどです。

 なぜこのような状態になったのかといえば、それは人事制度の仕組みが変化していったからです。

■評価があたりまえになって定期昇給が消えた

 2000年初頭の時点ではまだ多くの会社で、年功主義的な昇給が残っていました。ある一定の年齢までは評価に関わらず昇給をさせていく、定期昇給と言われる仕組みが残っていたわけです。また、ベースアップという仕組みもありましたこれは定期昇給と同じように一律で給与を増やす仕組みですが、定期昇給が年次によって昇給させる理屈であるのに対して、ベースアップは物価上昇にあわせて昇給させる理屈でした。ざっとした金額ではありますが、当時は誰でも定期昇給1万円、ベースアップ3000~4000円の昇給を得ていたわけです。

 このベースアップや定期昇給という仕組みに手をつけられはじめたのは1998年以降のことで、労働組合は春闘で、ベースアップを守ろう、定期昇給を守ろうとしてきました。しかし企業側の業績悪化は著しく、ベースアップは実質的に廃止されてゆきます。さらに定期昇給も見直しが入るのですが、その一つの象徴が、カルロス・ゴーン氏が実施した「日産リバイバルプラン」における「賃金改善」という概念です。誰でも同じくらいは給与が増えた定期昇給ではなく、平均額をベースにして、評価によって大きく給与が増える人とそうでない人を区分する仕組みです。

 私を含めた当時の人事コンサルタントたちは、企業の要望に応えて、評価によって昇給額に差をつける仕組みを広く普及させていきました。やがて定期昇給も死語となり、今では評価によって昇給額が決まることが当然となっています。

■含み益が消えて昇給は利益によって決まるようになった

 評価によって昇給額に差がついたとしても、平均額が同じであれば、グラフのように給与が下がるわけではありません。しかし実際には昇給の平均額がどんどん下げられていきました。それは昇給原資という概念が明確になったからですが、本質的には、右肩上がりの成長が失われてしまったためです。

 例えば売り上げ20億円の会社で、従業員100人を雇用しているとしましょう。平均年収が500万円ならおよそ5億円(+α)が人件費です。昇給というのは、この人たちの給与を増やすことであり、そのための費用が昇給原資です。仮に平均で月1万円の昇給をさせるとするのなら、昇給原資は1200万円+賞与分の原資が必要になる計算です。

 しかし売り上げが前年と同じ20億円であったり、あるいは19億円に減ったりするような状況で昇給を考えるでしょうか。

 バブル崩壊までの多くの日本企業は、不動産をたくさん持っていました。そして不動産の価格はどんどん上がり続け、含み益を企業にもたらしていました。だから仮に売り上げが増えなかったとしても、企業の財務力はどんどん高まっていったのです。だから毎年昇給原資を用意することもできたのですが、バブル崩壊によって不動産は含み益をもたらさなくなってしまいました。

 結果として、昇給原資は売り上げや利益の状況から厳密に計算されるようになっていき、平均昇給額もどんどん減っていったのです。

 誰でも600万円近い年収をもらえた時代は過去のものとなり、課長以上に出世しなければ年収500万円を超えることも難しいのが現在なのです。

■係長になる際にも評価が必要になっている

 人事評価があたりまえになり、昇給に差がつき始めると、誰を昇格させるべきか、という判断の場においても、評価結果が重視されるようになりました。

 このことは当連載の第1回「出世速度に会社の規模がどのくらい影響するか?」でも記しましたが、誰でも30代前半になれば係長になれたのが今や狭き門になっています。また係長になれる年齢も平均して10年ほど後倒しになっています。そして課長や部長などがさらに狭き門になっていることは、ご存じのとおりです。

 出世しなければ年収が増えなくなり、その出世自体も狭き門になっている現状の閉塞感を打破するには、このような人事の仕組みの変化を理解した上で、働き方を選ぶことが重要ではないでしょうか。

■目の前の評価を頑張っても課長より上にはなれない

 狭き門である出世の道を選ぶ際に、人事評価を気にして働く必要があるのか、といえばそうではありません。「出世する人は人事評価を気にしない」(日本経済新聞出版社)にも書きましたが、出世判断のための評価基準は、毎年行われる人事評価とは別に行われるようになっているからです。

 また、目の前にある人事評価で高い成績を収めたとしても、以前のような高い昇給額が保障されているわけでもありません。全国平均で昇給額は5000円ですし、仮に高い評価を得て1万円昇給できたとしても、増える年収は賞与分をあわせても15万円程度。10年で150万円の年収が増える計算ですが、それよりもいち早く課長などの管理職に出世した方が年収の増え幅は大きくなります。たとえば年収500万円の係長が課長になると、年収600万円が最低保証される、という設計の人事制度も多いのです。昇給なら良くて年収15万円アップですが、出世なら100万円の年収アップ、となればどちらを目指すべきでしょうか。

 目の前の評価を積み上げていけばいつか認められる。そういう出世方法もないわけではありませんが、なるべく早いタイミングで意識を引き上げ、上司やそのまた上司の仕事にふさわしい行動がとれるように意識していくこと。その方が出世の近道です。

 そのためには、前々回の記事「スピード仕事術だけでは出世できないのはなぜ?」の後半に記載したような、公私一体の働き方が求められるわけです。

 そして公私一体を苦にしないためには、会社に入るのではなく、職業に就く、という意識を持つ方がよい。それは働く意識そのものの変革になるからです。

 そうして就「職」意識を持つようになると、会社の中での出世以外の道が見えてくるようになります。それは出世で得られるお金や肩書きなどのメリットに加えて、自由も手に入れられる道です。具体的な話はまた次回に。

平康 慶浩(ひらやす・よしひろ)
セレクションアンドバリエーション代表取締役、人事コンサルタント。
1969年大阪生まれ。早稲田大学大学院ファイナンス研究科MBA取得。アクセンチュア、日本総合研究所をへて、2012年よりセレクションアンドバリエーション代表取締役就任。大企業から中小企業まで130社以上の人事評価制度改革に携わる。大阪市特別参与(人事)。

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