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「中村紘子さんを偲ぶ会」芸術・政財界から参列者

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NIKKEI STYLE

日本を代表するピアニストの中村紘子さんが7月26日に亡くなった。9月12日にはサントリーホール(東京・港)で「中村紘子さんを偲ぶ会」が開かれ、芸術界や政官界、経済界などの関係者約850人が参列した。親交の深かった指揮者の外山雄三さんらが追悼の辞を述べ、サントリーホール館長でチェリストの堤剛さんやバイオリニストの大谷康子さんらが献奏した。

中村さんと親交の深かった女優の檀ふみさんが司会を務め、黙とうから始まった。追悼の辞は、ピアノをたしなむ政治家としても知られる衆議院議員の細田博之さん。「日本国にとっても世界の芸術にとっても大変な損失である」と述べた上で、中村さんからポーランドのピアニスト兼作曲家で、同国独立後の初代首相イグナツィ・パデレフスキにちなむ「日本パデレフスキ協会」の会長職を頼まれた話を披露した。「中村さんに頼まれたらもう断れない。パデレフスキは19世紀末に世界中を席巻した大ピアニスト。『ピアニストという蛮族がいる』(中村さんの自著)で21ページも費やして書いている。パデレフスキの名前をもっと広めてほしいと言われてスタートしたばかりだった。ご遺志を継いでいきたい」と述べた。

政官界にも多くのファン

中村さんには政官界や経済界のファンが多かった。終演後、楽屋を訪ねると、何人もの政治家がねぎらいに来ていることがあった。元文化庁長官の近藤誠一さんは「私がワシントンの大使館にいた時に初めてお会いし、ショパンの『バラード第1番』を聴いてとても感動したのを覚えている」と振り返る。「その後、中村さんのホームコンサートに何度も招かれて、家内とピアノ連弾をやって笑われたりした。ピアニストとしては超一流、人柄も素晴らしかった」と話す。

細田さんの次に追悼の辞を読み上げたのは、指揮者で作曲家の外山雄三さん。1960年にNHK交響楽団の世界ツアーに中村さんと一緒に回った当時を思い起こしながら「まだ10代の半ばでいらしたあなたを思い出すから『紘子ちゃん』なのですが」と追悼の辞を始めた。ショパン、グリーグ、ベートーベン、モーツァルト、そしてラフマニノフの名前を挙げて、それぞれピアニストと指揮者として共演したピアノ協奏曲の数々を振り返るとともに、「私のコンチェルト(ピアノ協奏曲)まで演奏してくれました」と述べた。中村さんの「鋭い耳、研ぎ澄まされた感性」を指摘しつつ、「オーケストラと練習していてあなたの表情が一瞬、キッとなることが時々ありました。潔癖なあなたの感性が許せないことが起きた瞬間だったに違いないけれど、すぐに思い直して優しい表情に戻るのをしばしば見ました」と振り返った。

外山さんは故・岩城宏之さんらと並び、指揮者として中村さんと長年コンビを組んできた。2014年9月23日、中村さんはオーチャードホール(東京・渋谷)で外山さんの指揮による東京フィルハーモニー交響楽団と共演し、リストの「ピアノ協奏曲第1番」を弾いた。中村さんが出演した前半が終わって休憩時間になり、筆者は中村さんに連れられて楽屋に入った。「今日の外山さんのテンポは遅かった」と彼女は話し始めた。「私は追い立てたのですけど」と。それから話が止まらない。演奏会後半の外山さん指揮の東京フィルによるチャイコフスキー「交響曲第4番」が始まろうとしていた。結局、後半を聴くのは諦め、音楽レビューも中村さんのリストの協奏曲までのみ書くことになった。

3歳からピアノを始め、桐朋学園の前身の「子供のための音楽教室」に入室した。慶応義塾幼稚舎に在学中、全日本学生音楽コンクール・ピアノ部門の小学生の部で1位に輝いた。慶応義塾中等部を経て桐朋女子高校音楽科に入学。同高校を中退し、米ジュリアード音楽院に進学した。「(日本では)高校中退だろって私に言う人もいた」と語っていたが、そこには偏狭な学歴主義への軽蔑と強烈な自負心が込められていた。1965年のショパン国際ピアノコンクールで4位入賞し、最年少者賞を受賞した。偲ぶ会では、桐朋学園の「子供のための音楽教室」にともに通った幼なじみのチェリスト堤剛さんが、バッハの「無伴奏チェロ組曲第4番」の「プレリュード」を献奏した。

優れた文筆家としても活躍

文学の造詣も深く、芥川賞作家の庄司薫さんと結婚した。自身も優れた文筆家だった。自著「チャイコフスキー・コンクール」は1989年の大宅壮一ノンフィクション賞を受賞した。日本文学研究者のドナルド・キーンさんは追悼の辞で「中村さんは文章も優れていて、エッセーをたくさん書かれて読まれています」と述べた。演奏会のトークでも中村さんの深い教養や文学センスが発揮された。2015年8月15日、軽井沢大賀ホール(長野県軽井沢町)での開館10周年記念の「中村紘子トーク&コンサート」では、ドストエフスキーの文学やハルトマンの美術についてのエピソードを交えながら、その日の演目だったムソルグスキーの組曲「展覧会の絵」を詳しく解説した。

政官界や学界に華麗な人脈を持つ高貴なピアニストというイメージがある一方、庶民的で気さくな人物でもあった。「ものすごく記憶力がいい人で、会った相手のことは人柄や性格を含めよく覚えていた。必ず手書きの文章で返事をくれる人だった」と音楽評論家の萩谷由喜子さんは話す。実際、中村さんと親しく接した人は非常に多いと思われる。知り合った人を分け隔てせず、親身に相手をした。後進への面倒見も良かった。自身が世話をした若手ピアニストの将来を案じて延々と話し続けたりもした。「ピアニストという蛮族がいる」で自己中心的で気位が高いのがピアニストの典型と指摘したにもかかわらず、自らは他人を細やかに思いやる人だった。浜松国際ピアノコンクールの審査委員長を務めるなど教育者としての功績も大きい。

高貴なロマンチシズムの響き

演奏会の回数は国内外で3800回を超える。地方公演に力を注ぎ、日本全国を回った。演奏会場に行けなくても、テレビ番組を通じて中村さんの演奏に触れたことのある人は多い。指揮者の小澤征爾さんや岩城宏之さん、作曲家の山本直純さんや黛敏郎さんらとともに、テレビ時代のクラシック音楽界のスターを演じた。テレビで中村さんの演奏を見て、ピアニストに憧れた子供たちは数知れない。

偲ぶ会のステージ正面の高台に置かれた漆黒のグランドピアノ。誰も弾くことはない。故人をおいて弾ける者はほかにいない。欧州や旧ソ連をはじめ世界を舞台に活躍したピアニスト。戦後日本で奇跡のような、気高くも豪放なピアノを鳴らし、ショパンやラフマニノフの音楽を全国津々浦々まで浸透させた功労者。とりわけラフマニノフやチャイコフスキーなどロシアのロマン派音楽で情感あふれる華麗な演奏を聴かせた。19世紀ロシアの貴族文化を現代によみがえらせたかのような、高貴なロマンチシズムの響きは、ジュリアード音楽院で師事したウクライナ生まれのユダヤ系女性ピアニスト、ロジーナ・レヴィーンの直伝による。残された55点ものレコーディングアルバムはこれから改めて聴き込まれる。中村紘子さんはピアニストの代名詞であり続ける。

(映像報道部シニア・エディター 池上輝彦)

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