コンビニの支払いでバレてしまう「人としての器量」

私「でも声を上げて、クレームつけられるわけじゃないから受忍限度じゃない?」

経営者「いきなり声を上げる方もいるんです。例えば、お釣りとともにレシートを渡す、これが原則。<お釣りとレシートです!>と言うんですが、無言で手や眉の動きで<要らない>を表現する人が多い。レジのベテランになると、そういう<ちょっとしたしぐさ>で<要る・要らない>の判断がつくようになるんですが、ごくたまにミスを犯すと、えらいことになる……」

ちょっとしたことでキレる客

事故の起きる様子はこんな感じだという。

レジ係「お釣りが~でございます、ありがとうございます!」

客「レシート?!」

レジ係「あ、失礼いたしました、申し訳ございません!!」

平謝りでお渡しすると、なんと客が目の前でそのレシートをひねり潰して放り投げ、声を荒らげたのだそうだ。

客「要る要らないは、お前が決めるんじゃない! 判断するのは俺だあ!!」

「キレる客」は珍しくないらしい。

コンビニでは切手も扱っている。82円1枚だけだって大事なお客様だから丁重に接客する。

「ここに、貼ってくんない?」と言われればスポンジで指を濡らしてお貼りする。キチンと貼ったから喜んでもらえると思ったら、激怒された!

「おい、ちょっと傾いてないか? ほら! こんなんじゃ大事な取引先に出せないんだよ。貼り直せ!!! 俺は、お前たちのそういういいかげんな態度が許せないんだよ!!!!」

改めて断っておくが、「キレるみなさん」は見た目も普通。キチンとネクタイを締めた30代から40代の、中堅サラリーマン、なのだそうだ。

将来ああいう人にはなりたくない……

でも、なぜこの人たちはレジで代金を支払いうわずか数十秒の出来事に「チェッ」と舌打ちしたり、声をあげたりするのだろう。世代的な立場、職業的役割が特段にストレスフルなのか……? この辺りは社会学者の論文が山のようにあるはずだから深追いしない。もちろん客の大半は「普通の人」なのだ。

とはいえ、1日一人平均200人ほどの接客をする、取材先経営者のコンビニのレジ係たちの「この中の何人かが突然……」と日々おびえる緊張感は想像するに余りある。そりゃあストレスもたまることだろう。

経営者「レジをやっていて思うんですが、お金を払う場面には、人格が現れやすいのではないでしょうか? 昔から『金離れがいい』とは『使いっぷりが見事』とか『金にきれい』とか、人柄を表現する時にお金が登場しますよね。うちで働いているバイトにも、しっかり勉強する将来有望な子がいるんです。彼ら、彼女たちはしっかり見ていますよ、レジでの振る舞いや人柄を。『将来ああいう人にはなりたくない』『ああいう人とは付き合いたくない』、そんなふうに話すのを聞くこともあります」

「どうせ、こんな、たかがコンビニ」などと思って“本性”を表したら、数年後、コンビニでレジ係をしていた若い人が、大事な取引先にいた! なんてことがないとも言い切れない。

コンビニのレジ。数百円の支払いだって「要注意」なのだ。

[2015年12月10日掲載の日経Bizアカデミーの記事を再構成]

梶原しげる

1950年生まれ。早稲田大学卒業後、文化放送のアナウンサーに。92年からフリー。司会業を中心に活躍中。東京成徳大学客員教授(心理学修士)。「日本語検定」審議委員。著書に「すべらない敬語」「まずは『ドジな話』をしなさい」など。

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