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夫婦で起業 5年間売り上げゼロから急成長

屋代浩子フォルシア社長インタビュー

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日経DUAL

商品検索エンジンを独自開発し、急成長を遂げているフォルシア社長の屋代浩子さんは、外資系金融機関で活躍後、夫婦ともに会社を辞めて起業。同社が開発した、膨大なデータベースから必要な情報を的確に探し出す情報検索プラットフォーム「Spook(スプーク)」は、国内の航空・大手旅行会社の8割に採用されているという。現在は、3人の子育てをしながら、年率2ケタの成長を続けている会社を経営しています。

商社マンの父から仕事の楽しさを学ぶ

南アフリカで生まれ、小学校2年生から6年生の夏までギリシャのアテネで過ごした屋代さん。商社マンの父の仕事を身近で感じながら、元気で野性的な小学生時代を過ごしたという。

「日本から来た人を接待することが多く、当時は日本食レストランもなかったことから、週に3回は自宅で夕食をおもてなし。私も同席し、為替レートが360円ではなくなった、船を買ったなど、大人たちが繰り広げるビジネストークにわくわくしながら夕食を食べていました」

明るく個性的な商社マンたちの話は興味深く、大人の世界を垣間見ることができる楽しい時間だったそう。

「ビジネスのタネを探しまわっていた父は、『これを日本に送ったら売れるかな』と、ウナギを家に持って帰ってきて、プラスチックの箱に詰めて空輸便で送るなどしていました。そういう父の姿を見て、仕事って楽しそう、誰かの奥さんになるよりも船を売買する立場になりたい、と思うようになりました」

就活を始め、男女で異なる職種しかない現実に驚く

「父の背中を見ているうちに、グローバルなビジネスをしたいと思い、大学は経済学部に進学しました。

子どものころに体感していたビジネスや世の中の動きを学問として学ぶことで、『こういうことだったんだ!』というのが分かり、面白かったです。次第に自分もリアルビジネスをやりたいと思うようになりました」

当時は、男女雇用機会均等法が制定されたばかり。商社では、女性は一般職しか採用していなかった。

「今まで普通に男女関係なく勉強してきたのに、クラスメートの男子は商社を受けられるけれど、私は受けられない、ということを知って衝撃を受けました。他の企業も女性の総合職採用は1人とか2人というレベル。そんな中、野村證券が初めて総合職の女性を5人採用する、というのを知りました」

バブルの絶頂期で日本の証券会社の中でトップの収益を誇っていた野村證券。エキサイティングな仕事ができ、何よりも女性も男性と同じ仕事ができる、という点に引かれて選考試験を受けてみると採用された。「帰国子女で英語ができる、という点が評価されたのだと思います」

"総合職"というバッジでは仕事ができず、打ちのめされた野村證券時代

野村證券で女性の総合職第一号となった屋代さん。英語ができる帰国子女という看板で入社したものの、つらいことのほうが多かったという。

「一般職の女性は全員制服を着ている中、22歳の若い女性がスーツを着て歩くという状況。どんなに謙虚に振る舞っても、『あの子は偉いの?』『お茶いれないわけ?』と言われることも……。父たちのように、『おう、仕事しようぜ』とやりたかったのですが、そうそういかない。やりにくい環境でした」

配属先は、商品開発部。株式、債券、為替などの金融商品の価格変動リスクを回避する目的で開発されたデリバティブの部署だった。数学・物理学者が考え出した商品ということもあり、数理的頭脳がなければ理解するのが難しく、同じ部署には理系の博士や教授クラスなど、理系出身者がほとんどだったという。皆が話し合っている内容自体理解できない日々が続いた。

「当時は『デリバティブ』という単語もまだない時代。新しい分野で、本もなければインターネットの情報もなく、勉強しようと思ってもできません。英語が少ししゃべれたからって、総合職だからって、それだけでは仕事ができない状況に打ちのめされました。そこで、金融工学のメッカであるMIT(マサチューセッツ工科大学)で学び、自分の武器を持ちたいと思うようになりました」

寿退社をして、MITへ。1年半の留学生活でMBAを取得

同じ部署の1つ上の先輩でメンターだったのが、現在のご主人(現フォルシアのCOO)だった。

「夫は入社3年目のタイミングで、企業派遣でMITに合格。私も翌年行きたいと思って勉強していたら、『結婚して一緒に行こう』という話になりました。企業派遣の場合、受ける時期や学校が指定されてしまいます。そのため、一緒に行くなら会社を辞めるしかないと思い、寿退社。それから家で猛勉強をし、翌年無事に合格することができました」

2人とも会社に入って2~3年目。結婚はしたものの、貯金があったわけではなかったので、夫の父母にお金を借りて留学したそう。

「学生だし、時間もあるし、同じ講義をとって一緒に勉強をして……。まるでハネムーンのようで楽しかったです(笑)」

その後、1年先に卒業し日本に帰国したご主人に続き、屋代さんもMBAを取得。野村證券で働いていた実務経験とMBAが武器となり、ゴールドマン・サックスに入社することになりました。

ゴールドマン・サックスで仕事が楽しくなり、マックススピードで働く

ゴールドマン・サックスでもデリバティブの開発・マーケティングに8年間従事。現マネックス証券会長の松本大さんをはじめ、優秀でパワーを持ち合わせている人に囲まれながら仕事をしていたそう。

「総合職第一号の次は、MBAのバッジをもらえたのですが、そんな肩書きは仕事の役に立ちません。『仕事が分からない』といっても皆忙しく誰にも返事をしてもらえない状況で、とにかく毎日が大変でした。周囲のスピードにがむしゃらについていき、ようやく自分が主体で仕事ができるようになったのが、入社3年目のころ。それから仕事がエキサイティングで楽しくて楽しくてたまらなくなりました」

同じころ、ご主人も外資系証券会社に転職。2人でろくに会話をするヒマもないほど、お互いに忙しい日々だったという。

「朝目が覚めて顔を洗い、15分ぐらいで家を出て、会社に着くのは6時前。それから深夜の2時、3時まで働き、家に帰ったらシャワーを浴びて寝るだけ、という生活。土曜日は夕方まで、夫婦で爆睡していました。仕事自体は楽しかったのですが、あまりにもマックススピード過ぎて、これをずっと続けるのかという疑問はありました」

2人目出産後に転機が訪れる

そんな中、1998年に1人目を妊娠・出産。産前もぎりぎりまで働き、産休の8週間だけ取得して、すぐにフルタイムで復帰した。

「夫の子育て参加率は2%ですが、夫の両親の参加率は100+100で200%。ものすごく優しいご両親で、自分が育てるよりもいい子になる、細かいことは言わないので、主人のような人に育てば十分です、とお願いしました」

何時に帰宅できるか分からない仕事のため、義母が月曜から金曜まで自宅に泊まり込み、義父は毎日通いで子育てをしてくれていたそう。

「転機が訪れたのは2人目の出産後。朝は私と主人で1人ずつ子どもを抱えて家を出て、それぞれ別の保育園に預け、帰りには私が1人、義母がもう1人のお迎え。帰宅後は2人の子どもにごはんを食べさせてお風呂に入れる。フルタイム勤務は続行したものの、マックススピードで働くのは無理だと感じました」

そんな中、次女が肺炎で入院する事態となる。あまりにも仕事と生活のバランスが悪く、このままいったら家庭が崩壊する、と思っていた矢先の出来事だった。

「自分たちは一体何をしたいのか、夫と話し合いました。外資系の仕事はエキサイティングで楽しいけれど、子どもの命をリスクにさらしてまでも一生続けたい仕事なのか、私たちにしかできない仕事は何か、人のためになる仕事は何か。たくさんお給料をもらって別荘を建てて、悠々自適の生活をするのが夢じゃない。それなら会社を辞めて2人で起業しよう、と決めました」

MITに留学していたときに、様々な起業についての講座を受講し、いつか一緒にビジネスを立ち上げたい、と語り合っていたこともあり、起業することは自然の流れだったそう。

「私も夫も真面目なタイプ。子どもの送り迎えで働く時間が短くなり、マックス働いてパフォーマンスを出せないことに不満足を感じたり、他の人に迷惑を掛けたりするのが最大の心労でした。起業することで自分たちが大変になるかもしれないけれど、自分でリスクをとり、自分で責任をとるという働き方ができる点も大きかったです」

2人同時に会社を辞める、というリスクに周囲は大反対。けれども屋代さんは逆に、1人では無理だけど、2人でやればどうにかなる、と思ったそう。

「お互いに自分の持っていないものを相手が持っているので、うまくバランスが取れています。2人なら苦境に陥っても耐えられるし、壁を乗り越えられるという心強さがありました」

社会貢献できるビジネスをしようと、まずは起業

2001年3月、フォルシアを設立。その時点では、どのような事業にするか決まっていなかった。

「決まっていたのは、2人の小さな力だけど、社会に貢献できるビジネスをしよう、みんながハッピーになることをしよう、ということだけ。夫は大学時代にコンピューターサイエンスを専攻していたこともあり、プログラミングで何かのサービスを作ることにしました」

当時はインターネットバブルが崩れ始めたころ。マーケットニーズを把握し、堅実なビジネスを展開しようと考えた。

「どのようなビジネスを立ち上げれば人のためになるか考えた結果、行き着いたのが、ネット上のサービス提供の課題は、検索性をどう担保できるかに尽きるということ。そこで、どのようなビジネスを展開するにしても必ず必要になる、高機能な検索エンジンを開発しました」

資本金がゼロになる直前、大手旅行会社が導入

検索エンジン「SPOOK」を開発したものの、売り上げゼロの日々が続いた。

「社会のために頑張ろう、と思って起業したものの、そんなに簡単にはいきません。会社員時代はたくさんお金を稼いでいたけれど、外資系金融機関の看板や組織があったから。良いものを作っただけでは売れないことを痛感しました」

B to Bのビジネスモデルで、まずは大企業に買ってもらおうという戦略。商品価値を認めてもらえたとしても、実績がないことで買えない、買ってもらえないと実績ができない、というどうにもならない状況でした。

「2人でこれまで貯めてきた資金だけで起業したので、それがゼロになるまでは頑張ろうと決めていました。会社はオフィスを借りたり、給料を支払ったり、あっという間にお金が出ていくし、経営状態が悪いと人も辞めていってしまいます。会社の資金が底を突くゲームオーバーの直前、1年半通い続けたお客様が、ようやく検索エンジンを導入してくれることに。今でもお世話になっている旅行業界最大手の企業です」

夫が大病に。「会社を守ってくれ」という言葉に決意

諦めないで絶対に成功させると決意したのは、夫が病に倒れたのがきっかけだった。

「起業して2年経過した2003年、夫が病に倒れました。病院での検査の結果、大病ということが分かりました。もしかしたら死んでしまうのではないかと思い、仕事どころではなくなりました。そんなとき、死に目に会えないようなことがあってもいいから、会社を守ってくれと言われました。夫は、自分の命よりもちっぽけで潰れそうな会社を大事にしている。夫が命を懸けてフォルシアを守るという強い思いでいることを知り、絶対に成功させると決意しました」

治療開始から3カ月後、病気が消え、無事に退院することができました。

「会社がどん底のときに経験した夫の病からの生還という奇跡は、その後の人生を明るく照らしてくれています。日々の生活に感謝できるし、仕事でつらいことがあっても当時がボトムライン、とポジティブに捉えることができるようになりました」

仕事って楽しい! 会社も育ち、人も育つ、という世界が夢

今では子どもも3人になり、一番上の子は高校3年生。それぞれが個性豊かに、伸び伸びと育っているといいます。会社自体もこの2~3年で従業員数は倍増、売上高も右肩上がりで増加と、堅実な成長を続け、現在「SPOOK」は国内の航空・大手旅行会社の8割に採用されているほか、物販、資材、福利厚生など様々な業種のECサイトの検索に採用されている。

「いまは『SPOOK』があるからこそできるビジネスを発展させているところです。若い世代もたくさん入ってきて、色々な形にして色々な花を咲かせてほしいと思っています。会社も育ち、人も育つ、という世界が夢ですね」

とにかく、仕事が楽しくてたまらない、と屋代さんは言います。

「仕事をしてお金ももらえて、人も喜び、成長して、良いことばかり。疲れたとかさぼりたいとか思わないですね。ずっと仕事をしていきたいです」

(ライター 平野友紀子)

[日経DUAL 2016年8月19日付記事を再構成]

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