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不振のバランス型投信、「悪者説」に異議あり QUICK資産運用研究所 北澤千秋

2016/9/14

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 この1年、バランス型投資信託の運用成績が振るわない。少額投資非課税制度(NISA)のスタート前後に証券会社や銀行が販売に力を入れ、その後は「ラップ型」と呼ばれるバランス型ファンドが人気化。投資の初心者層が多く保有する投信だけに、市場には「バランス型の不振が個人の投資マインドを冷え込ませた」と、「悪者」扱いする声もある。果たしてバランス型は本当に悪者なのだろうか。

■金融庁のイチ押し投信?

 どんな資産が値上がりするのかを予想するのは運用のプロでも難しい。だから1つの資産に集中投資せず、国内外の複数資産にベット(賭ける)しておく。投資理論に従えば、値動きの異なる資産に分散投資をすれば、価格変動のリスクも低減できる(はず)。そして、個人にはハードルが高い国際分散投資を投信を通じて実現する――。これがバランス型投信の基本的な考え方だ。

 本来、リスクを抑えてそこそこの利益を上げるのが目的だから、上昇相場に乗って大もうけするのは難しいが、長期で安定的なリターンを望む資産形成層などには向いている。NISAの導入にあたって、金融庁が金融機関にバランス型投信の販売強化を求めたのもうなずけなくはない。そして多くの金融機関は実際にバランス型の販売に力を入れた。それが、足元では「裏目に出ている」(業界関係者)という。

 確かにこの1年、バランス型投信(追加型、ETFを除く842本)のリターンは平均でマイナス2%と、運用成績はさえない。昨年夏のチャイナショックや原油安による世界の株式市場の動揺、そして3年余り続いた円安局面から円高への転換など、市場環境の悪化に揺さぶられた結果だ。

 しかし、バランス型といっても中身は千差万別だ。投資対象の国や資産をきちんと分散しているファンドもあれば、新興国の株式・債券だけ、あるいは先進国の株式と不動産投資信託(REIT)だけに投資するといった、高リスクのファンドも少なくない。バランス型とひとくくりに評価するのは乱暴で、個別のファンドごとに分散投資の中身や運用手法を吟味しなければならない。

■為替リスクなし、波乱相場で健闘

 実際、ファンドのタイプによってバランス型投信の運用成績には歴然とした差が出ている(表A)。

 過去1年の実績を見ると、リターンが低いのは資産配分の比率が一定の「資産配分固定型」。一方、ここ数年、新規設定が相次いだ、市場環境に応じて配分比率を変える「可変型」はマイナス幅が全体平均の半分ほどにとどまっていた。

 さらに、為替ヘッジ付きなど、為替リスクのないタイプはリターンがプラスで、それなりに健闘していた。過去1年、円高がいかにバランス型の運用成績に大きな影響を及ぼしていたかがわかる。表にはないが、「可変型」かつ「為替リスクなし」のファンドは市場環境の悪化にもかかわらずプラス3.5%のリターンを確保していた。

 バランス型投信を長期の資産運用の手段と考えるなら、実力をわずか1年程度の成績で判断するのも早計だ。バランス型全体を見ると、過去3年間では年率3.7%、5年間では年率9.1%のリターンを上げており、運用成績は決して悪くない。購入するファンドは慎重に選ばなければならないが、バランス型に投資するなら長期保有と割り切って、短期的な上げ下げに一喜一憂すべきではない。

 ちなみに、3年、5年の運用成績をタイプ別にみると、リターンは「資産配分固定型」が「可変型」を、「為替リスクあり」が「リスクなし」を上回っていた。「固定型」や「リスクあり」のタイプの方が、この間の国内外の株高や円安の恩恵をフルに享受できたからだろう。

 ただ、だからといってそうしたファンドに飛びつくのも早計だ。高リターンのファンドはおおむねリスクも高く、過去1年の運用成績で確認できるように、市場環境が悪化したときには基準価格の下げも大きくなりがちだ。基準価格の変動率の大きさを表す標準偏差を見ると、3年、5年のいずれでも、「固定型」より「可変型」が、「為替リスクあり」より「リスクなし」の方が3ポイント前後低くなっていた。資産価格の上げ下げが気になる人は、やはり低リスクのファンドを選択する方が無難だ。

■リーマン危機を乗り越えたファンド

 本来、投信の実力を判断するには少なくとも3~5年の運用実績をみた方がいい。円高や株安といった逆風が吹いたときに下げに対する抵抗力がどの程度あったか、円安や株高の局面ではどれだけ追い風に乗れたかを、他のファンドと比較できるからだ。

 特にバランス型は投資対象とする資産や資産配分の比率、比率の決定方法などで大きく値動きが変わるだけに、リターンやリスクの数値、基準価格の推移などは必ずチェックしておきたい。

 最後に、今回は10年以上の運用実績があるバランス型投信を対象に、(1)過去1年のリターンがプラスを維持(2)過去10年の年率リターンが3%以上(3)過去10年の年率リスクが20%以下――などの条件で選択してみた(表B)。

 残ったのは「100年に1度」の大激震といわれたリーマン危機を乗り越えて、着実にリターンを積み重ねてきたバランス型投信だ。

 中でも運用成績が安定していたのはラッセル・インベストメント・グローバル・バランス安定型と、マイストーリー分配型(年6回)Aコース(野村アセット)だ。

 10年年率の標準偏差は5~6%と突出して低く、リーマン危機時にも基準価格の下落率は2割前後にとどまっていた。過去の実績を見る限りでは、長期で堅実に資産を増やしたいという資産形成層に向いたファンドといえる。

 ラッセルのグローバル・バランス安定型は純資産総額が2億円にも満たず、償還リスクは気になるところ。ただ、純資産の規模や売れ行きばかりに目を奪われていると、小粒でもきらりと光るファンドは見落としてしまうので注意が必要だ。

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