気になる人とグッと親しくなる! 4つの会話のコツ
何気なく会話をしていて、出身学部が同じとか、学生時代、同じようにバンド活動に熱中していたということが判明したとたんに話が弾み、相手と打ち解けた、仲良くなったという経験を持つ方は多いでしょう。
「すごい出会いだ」「ご縁がある」――そう考えるのはもっともですが、学部が同じという確率は、同業者ならば比較的多いでしょう。私と同年配の方は「バンド世代」。ギターをはじめとする楽器に親しんだ経験をもつ方が多いのも事実です。ですから、本当のところ「すごい出会い」とまでは言えないでしょう。
しかし相手に自分と似たところを見つけると、その相手に魅力を感じるようになり、より関心が向いてくるという傾向は、心理学の分野でも証明されています。それは、深層心理に「自分と似た人を見つけたい」という思いがあるからです。
さらに言えば、共通点を見つけると、自分の考え方や行動、生き方を正当化して「安心感」や「安堵感」を得たいからだと言われています。
逆に言えば、気になる存在の人がいて、親しくなりたい、会話を弾ませたいと思うならば、まず、何かしら相手との類似点を探すのです。それを会話のきっかけにしたり、さりげなくそのことに興味があるとアピールしたりするのです。それが相手からの好意を引き出す第一歩になります。
例えば、
(例1)相手が「○○を見て感動した」といった場合、それがあまり興味のない「絵画」だとしても、「評判がいいですね。私も○○の絵には興味があります。今度の休日に見に行きます」と伝える。
(例2)相手が、本屋大賞を受賞した和田竜さんの「村上海賊の娘」が面白いと言った場合、その小説に関心がなかったとしても、「和田竜さんの作品はいいですよね」などと相手が教えてくれた物事には同意するといいでしょう。ただし、このような場合、中途半端な同意は逆効果になります。
(例1)では、「□□さんがおススメの○○の絵を教えてくれませんか?」と返されると、まったく知識がなければ言葉に詰まり、ぼろが出ますよね。そのような場合でしたら、「正直、絵画には興味がなかったのですが、△△さんが感動したのならば素晴らしいに違いありません。早速、見に行きます」と伝えたほうが自然です。
(例2)では、「和田竜さんの作品は他にどんなものを読みました?」と質問されて答えられなかったとしたら、「本当は何も知らないのに調子のいい人だな」と相手は思うでしょう。ですから、「話題になっていますね。小説はあまり読まないのですが、△△さんが面白いと言うのならば間違いないですね。帰りに本屋さんに寄ってみます」と伝えたほうが無理がありません。
会話の中で類似点が見つけにくい場合では、相手の発言に共感するだけでも、親近感を呼び相手の関心を向ける効果があります。
良好な人間関係を築く上で大切なのは、相手の名前を覚えることです。そして親しくなりたいと思うのならば、積極的に会話の中で名前を呼ぶようにしましょう。先の例でも「○○さんが感動したのならば」「○○さんが面白いと言うのならば」と伝えているのは、親近感を抱かせるのに効果的だからです。
「おはよう、○○さん」
「○○さんは、この企画、どう思う?」
仕事に厳しく少々煙たい存在の上司が、このように言ってくるとしたら、いつしかその上司に親しみを抱き、やがて仲間意識も育つでしょう。しかし「おはよう」「この企画、どう思う?」では、あいさつ程度の会話だと受け取られ、心には響かないはずです。
名前は大勢の中から特定の人を区別するもの。名前を呼ばれるということは、大勢の中から「選ばれた人」ということになり、相手は喜びを感じるのです。あなたにも覚えがあると思いますが、初対面で緊張している時には、警戒心のようなものがありますよね。そのような時に自分の名前を呼ばれると「安心」し、警戒心も自然に解けていきます。
相手が年長者や有名人、業界の大物など立場が上の人ならば、名前を呼ばれた人は、なおさら感激し、いっぺんで相手のファンになるでしょう。
8年ほど前、誰もが知る「大物女優」にお会いする機会がありました。ビジネスではないのですが、名刺を差し出した私に、「臼井由妃さん……ゆきさんですね」と確認した上で、「由妃さんは、どんなお仕事なの?」「由妃さん、私のこと、怖いって思っていなかった?」などと冗談交じりで話しかけてくださいました。緊張でガチガチだった私もすぐに打ち解け、それ以来、彼女の出演する映画やドラマは欠かさず見るファンとなりました。立場に大きな隔たりがあるほど感激は大きいというわけです。
商談の場、プライベートでのおしゃべりにかかわらず、
「○○部長のご意見をお聞かせいただけませんか?」
「ありがとうございます、○○さん」
「○○さんは物知りですね」
「○○さんがおいしいといっていた焼肉屋、名店ですね、おいしかったですよ」
などと、積極的に相手の名前を呼んでみましょう。繰り返すうちに、相手の脳裏にあなたの言動が深く刻み込まれるはずです。
ちなみに、これは男女問わず有効ですから、気になる異性に対してもまずは名前を呼ぶことを心がけてはいかがでしょうか。
気になる人と親しくなるポイントは、
*類似点を見つけ共有する
*同意を示す
*共感を示す
*名前を会話の中に入れる
さらに相手の「しぐさ」や「口ぐせ」をまねるのも、おススメです。これは心理学で「ミラーリング」と呼ばれ、まねられた人は、無意識のうちに相手に対して好意を持ちます。「私はあなたと同じことを考えています」「共感しています」という、心の共通性にもつながります。なかでも「くちぐせ」は、比較的簡単にまねできるのではないでしょうか。
私の口ぐせの一つに「きょうもいい日になりますね」がありますが、「臼井さん、きょうもいい日になりますね」と、言われると思わず笑顔になって「私に関心を持っているのかな」と思うものです。だからといって「しぐさ」や「口ぐせ」をやたらにまねしたら、相手はバカにされたと受け取る可能性がありますから、ほどほどにしましょう。
[日経Bizアカデミーの記事を再構成]
1958年東京生まれ。健康プラザコーワ、ドクターユキオフィス代表取締役。理学博士、健康医科学博士、MBA、行政書士、宅地建物取引士、栄養士。33歳で結婚後、病身の夫の後を継ぎ会社経営に携わる。次々にヒット商品を開発し、独自のビジネス手法により通販業界で成功をおさめる。日本テレビ「マネーの虎」に出演。経営者、講演者、経営コンサルタントとして活動する傍ら、難関資格を取得した勉強法も注目される。ビジネス作家としても活躍。著作は50冊を超える。