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会話をしていて、2人の間に急に沈黙が生じる時があります。気まずさに耐えられなくなり、あわてて会話のネタ探しをするのですが、突破口がなかなか見いだせなかったりします。

こんな時「そういえば」とか「ところで」と、話を転換して場を盛り上げようとする方もいらっしゃいますが、なかなかうまくいくものではありません。いきなりそれまでと違う話題を振られても、ピンとこないし、その話題についていけないのです。その様子に、ますます話が空回りして余計気まずくなるという場面を、あなたも経験しているのではありませんか?

沈黙は、苦手だという人は多いものです。それまで何事もなく会話をしていても、沈黙が生じた途端に、「嫌われているのではないか?」「つまらない話に、付き合わせてしまったのではないか?」などと、マイナスの方向へ考えてしまいがちですね。

沈黙を必要以上に怖がることはありません。むしろ間髪入れず会話が続いていることで「好感を持たれている」「関心を向けられている」と満足するほうが、危険だといえるでしょう。

この状態は言葉のキャッチボールが円滑にいっているのではなく、相手に考えたり話をさせたりする時間を与えていない、独りよがりの話を進めている可能性も考えられるからです。少々の沈黙ならば気にしないでいいのです。

話題選びで失敗する人の共通点

とはいえ、相手が腕組みをしたり、ため息が出るようになったら放ってはおけませんね。こういう場面では、たわいない世間話や得意な分野の話を始める方が多いと思います。

世間話ならば、「大雪の日は通勤に苦労しましたね」「○○がオープンしましたが行かれましたか?」「インフルエンザがはやっていますね」など。

これらは質問のかたちをとっています。相手の発言を促す意味では悪くはありませんが、「イエス」か「ノ―」、あるいはただうなずくしか答えようがありません。これから会話が広がる可能性は低いでしょう。また、否定的な話題はその場を重苦しくします。

「話題になっている○○、どこがいいんでしょうかね」「月曜日は、やる気がでませんね」「最近、疲れが取れなくて……」などでは、気がめいってしまいますよね。

また、得意な分野の話は、自慢するつもりはなくても、相手にはそう聞こえる場合があります。自慢話を進んで聞きたがる人は少ないでしょう。その証拠に、あなたの周囲の人が自慢話を始めたら、適当にあいづちを打って聞き流す場合もありませんか。

中には「この人、自慢したいんだな」と感じたら、存分に自慢できるように誘導してくれる人もいます。サービス精神を発揮して、一生懸命に聞き、感動したり共感しながら、どんどん質問をする「気配り上手な人」がいますが、調子に乗ってしゃべりすぎたら、反感を買って終わりです。

では、沈黙が生じたら、スポーツや趣味の話題を持ち出すのはどうでしょう。経験則ですが、これは大盛り上がりになるか、こけるかのどちらか。当たり外れが激しいといえます。

以前、大阪出身の人と会話の最中、沈黙になり、「どうしよう……確かプロ野球ファンだったな、そうだ!」。大阪といえば、阪神ファンという考えしか浮かばなかった私は、

「今年は、阪神が調子いいですね」

しかし相手は「……」(無関心)

「優勝するんじゃないですか?」

「……」(渋い顔)

後で分かったことですが、彼は「巨人ファン」だったのです。オリンピック、ワールドカップ……たとえ、タイムリーなスポーツの話題だったとしても、盛り上がるとは限りませんし、趣味の話は、相手の趣味嗜好がはっきりと分かっている場合以外は、範囲が広すぎて会話を盛り上げる材料になるのは難しいです。

沈黙の特効薬は「失敗談」

会話が途切れてしまい、何を話せばいいのか分からなくなった時、いちばんの特効薬になるのが自分の失敗談です。失敗談を話題にすると高い確率で場がなごみます。

人は普通、自分が失敗した話を知られることを嫌がるものです。だからこそ、そんな究極のプライベートともいえる失敗談を自ら打ち明けることで、相手は「こんなにも自分に気を許してくれているんだな」と心を開いてくれます。

失敗談は、どんな時でも人間関係を良好にする妙薬、沈黙を回避する「特効薬」として働きます。どうせ失敗談を話すなら、面白おかしく盛り上げて一緒に笑えたら、より楽しい時間になります。

まだお互いによく知らない間柄や、一緒にいると緊張するような相手の場合には、こうして自分のダメな部分をさらけだしてしまうことで、「こんなおちゃめなところもあったんだ」「正直な人だな」「意外と付き合いやすい」と親しみを感じてもらえます。

沈黙がきっかけで仲間意識が生まれることも

「失敗談」はいわば、2人だけの秘密。秘密を共有することにより、お互いが仲間であると認識するのです。すると、そこからは急速に仲良くなることができます。失敗談を打ち明けて盛り上がることで、会話が途切れて沈滞していた気まずいムードがなくなり、それをきっかけにどんどん会話が弾むのです。

自慢できる話をしたがる人は大勢いますが、失敗という恥ずかしい話をできる人はそれほど多くありません。失敗談をすれば盛り上がるかもしれないと分かっていても、不思議なもので、つい逆のことをやってしまうのが人情なのです。

自分をカッコよく見せたいし、失敗は恥という思いがそうさせるのでしょう。ですが、失敗談が人間関係にマイナスに働くということは、ほとんどありません。自ら失敗を語れる器の大きさと心の余裕に、人は魅力を感じます。そういう人は他人の失敗に対してもおおらかな対応をするので、信頼され慕われます。

「この人と話をすると楽しい」「落ち着く」「心が晴れる」――失敗談を打ち明けることには、このような効果もあります。何もない時にいきなり失敗談をしても、あまり効果を感じないかもしれませんが、沈黙が生じた時にすれば、

●場が和む

●会話が盛り上がる

●仲間意識が生まれる

●信頼される

●慕われる

あなたの魅力が引き出され、人間関係はますます円滑になるでしょう。

 「臼井流最高の話し方」は水曜更新です。次回は10月26日の予定です。

[日経Bizアカデミーの記事を再構成]

臼井 由妃(うすい・ゆき)
1958年東京生まれ。健康プラザコーワ、ドクターユキオフィス代表取締役。理学博士、健康医科学博士、MBA、行政書士、宅地建物取引士、栄養士。33歳で結婚後、病身の夫の後を継ぎ会社経営に携わる。次々にヒット商品を開発し、独自のビジネス手法により通販業界で成功をおさめる。日本テレビ「マネーの虎」に出演。経営者、講演者、経営コンサルタントとして活動する傍ら、難関資格を取得した勉強法も注目される。ビジネス作家としても活躍。著作は50冊を超える。

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