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臼井流最高の話し方

相手に何倍も喜ばれるほめ方、ほめても嫌われる人

2016/9/21

臼井流最高の話し方

「ほめ言葉」はお互いの距離を縮める

「ほめ言葉」を上手に使えば、潤滑剤となり豊かな人間関係が築けます。そんな「ほめ言葉」の効用は、多くの方が知るところですが、ビジネスの場で活用している人は、まだ少ないのではないでしょうか。

誰でも、ほめられるのは好きなものです。

「さすが」「すごい」「上手ですね」などといった、ありきたりの「ほめ言葉」であってもいい気分になることは、あなたも経験しているでしょう。ほめられると、何だかくすぐったくて反応に困ったりもしますが、うれしさに変わりはありませんよね。

そんなに喜んでもらえる「ほめ言葉」なら、できるだけ効果的に使いたいものです。でも、お世辞と思われるのではないか、魂胆があるのではないかなどと心配して、「ほめ言葉」を使えないという方もいらっしゃるでしょう。

日ごろ「ほめ言葉」を活用しているという自負がある私でも、この人にはちょっと言えない、もし「ほめ言葉」を送ったら怒られかねないからやめようと考える人もいます。

S社長もそうした一人でした。

こわもてな上に、彼には「おれ様的な発言」が目立つこともあって、仕事ぶりは尊敬していても、扱いにくい、鼻持ちならない社長だと、私は敬遠していました。ですから、長い付き合いではあっても、どこか壁があり積極的に話しかけることはありませんでした。

そんなある日、知人のパーティーでS社長の祝辞を聞く機会がありました。それまで傲慢で周囲の思惑なんて考えることなどなく、我が道を行くタイプだと思っていたのですが、彼の話を聞いて意外な面を発見。それは感動に近いものでした。思わず彼のもとにかけより、「素晴らしかったです、さすがS社長ですね」と声にしました。何の迷いもなくそう言えたのです。

「本当? お世辞だよね。臼井さんがほめるなんてあり得ないでしょう」と最初は疑いのまなざしを向けていたのですが、

「こういう場でも祝辞と称して、自己PRをされる方が多いですよね。でもS社長のお話は相手を立て、ユーモアが随所にちりばめられていて、すごくよかったです」

具体的にどういうところが素晴らしかったかを説明し始めると、次第に柔和な表情になり、「照れるな~、でもうれしいよ、ありがとう」。

明らかに声のトーンが高くなって、満面の笑顔。その瞬間、S社長との間にあった壁のようなものがなくなりました。私は見た目の雰囲気で彼を「扱いにくい人」と思い込んでいたのです。会話をするうちに彼の人間性に触れ、その日を契機に親しくお付き合いするようになりました。

あのとき、「素晴らしかったです、さすがS社長ですね」という「ほめ言葉」を送らなければ、心の壁は残ったままで、付き合いを深めることなどなかったと思います。

日本人は「ほめる」ことも「ほめられる」ことも、あまり上手でないと言われます。特に面と向かってほめるのは難しく、つい言葉が上滑りしてしまいがち。「お世辞や社交辞令ととられるだけ損」だとか、「芳しくない印象を抱かれるよりは黙っておこう」と、考えるのも分かります。けれど私のように、ほめ言葉がきっかけとなり人間関係が広がるということもあるのです。

「直接ほめ」と「間接ほめ」

ほめられるときには、

1.直接ほめ 面と向かって、直接ほめられる

2.間接ほめ 他人を介して、間接的にほめられる

主に二つのシチュエーションが考えられます。

1は「臼井さん、営業成績が上がっているね。素晴らしい」と、肩を叩かれるように感じられるほめられ方です。

2は「○○部長が臼井さんのことをほめていましたよ。営業成績が上がっている。素晴らしい……」と、上司などが目をかけている様子が、別の人を介して間接的に伝わってくるほめられ方です。

どちらもうれしいとは思いますが、よりうれしいのは「間接ほめ」でしょう。間接的にほめられると、同じ「ほめ言葉」でも真実味が増すのです。

「そうなんだ……。○○部長は私の仕事をきちんと見てくれている。わざわざ□□さんに伝えているのだから、認めてくれているのだ、ありがたいな。ということは、次のプロジェクトのメンバーに私を推してくれるかもしれない」というように、プラスのイメージが膨らんでいきます。

一方、「直接ほめ」の場合は、人によっては単なるあいさつや社交辞令としか映らないこともあります。だいいち照れくさくて「すなお」に喜べないという側面があります。

ですから、部下やスタッフなどをほめる時には、本人に言うのではなく、「ほめ言葉」をその人に伝えてくれそうな相手に言う、という方法を私は活用しています。

例えば、「山本さんの仕事は正確で速いね」と、信頼が置けてPR力があるような人を選んで言うと、その人から山本さんに「臼井さんがほめていましたよ」と伝えられるはずです。すると「ほめ言葉」を聞いた相手は「もっと頑張ろう」と、やる気が高まり仕事も人間関係もいい流れができます。

「間接ほめ」は、一見、面倒くさそうに思えますが、ほめるのに慣れていない人でも自然に言えます。普段はほとんど「ほめ言葉」を言わないような人が使うと効果が倍増します。

ですから、最近では、「ほめ言葉」を送りたいという人には、もっぱら私は「間接ほめ」を使っています。

「直接ほめ」で開き直られるなんて

先代経営者の後を継いで歩み出したころ、何とかして社員の士気を高めようと、「最近、頑張っていますね」と伝えたことがありました。すると、「最近ですか? いつも頑張っていますよ」「これまでだって頑張ってきましたよ!」と、喜ぶどころか開き直られてしまいました。

原因は言葉の選び方が適切でなかった、人間関係ができていなかった、言葉で人を動かそうと安易に考えていた、私の考え方が甘かったのです。どのように言われたら心地良いかまでは意識していませんでした。以来、「ほめ言葉」はどう伝えるべきか、トライ&エラーを重ねながら今に至ります。

あなたの周囲に「ほめ言葉」を送りたい人がいたら、記事を参考にぜひトライしてみてください。最初は違和感を覚えるかもしれませんが、使い続けるうちにしっくりくるようになります。

「臼井流最高の話し方」は水曜更新です。次回は9月28日の予定です。

[日経Bizアカデミーの記事を再構成]

臼井 由妃(うすい・ゆき)
 1958年東京生まれ。健康プラザコーワ、ドクターユキオフィス代表取締役。理学博士、健康医科学博士、MBA、行政書士、宅地建物取引士、栄養士。33歳で結婚後、病身の夫の後を継ぎ会社経営に携わる。次々にヒット商品を開発し、独自のビジネス手法により通販業界で成功をおさめる。日本テレビ「マネーの虎」に出演。経営者、講演者、経営コンサルタントとして活動する傍ら、難関資格を取得した勉強法も注目される。ビジネス作家としても活躍。著作は50冊を超える。

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