コナ直行便も就航 ハワイシフトはさらに続く
日経BPヒット総合研究所 石井和也
16年の夏休みは、円高や燃油サーチャージ無料の追い風もあって、海外を訪れる旅行者数が増えた。JTBの16年夏休み海外旅行人数推計を見ると、前年比7.4%増の見込み。遠方ではオーストラリアやニュージーランド、近くは中国、韓国などが2桁の伸びを見せて目立っていたのだが、実は、定番のハワイも6%増やし、その人気の底堅さを見せていた。HISが発表した「遅めの夏休み」予約トレンドでも長距離区間ランキングの1位は、やはりハワイ・ホノルルだった。
言うまでもなく、ハワイは年間150万人もの日本人が訪れる常夏の楽園だ。慌ただしい日常を忘れさせてくれる開放感があり、比較的治安も良く、日本語が通じ、都会的なショッピングや食事も楽しめる。そんな過ごしやすさもあって、カップルから孫を連れた3世代ファミリーまで幅広い客層が訪れ、リピーター率も6割とすこぶる高い。
日本だけでなく、米国本土からの観光客も増えており、その需要に応えて新規施設も続々オープンし、話題には事欠かない。例えばオアフ島では16年7月に「フォーシーズンズ・リゾート・オアフ・アット・コオリナ」や「ザ・リッツカールトン・レジデンス・ワイキキビーチ」がグランドオープンしたほか、8月にはワイキキの中心街の屋台村だった「インターナショナル・マーケット・プレイス」も大改装が終わり、洗練されたショッピングモールに生まれ変わった。
また、15年末から改装中のハワイ最大のショッピングモール、「アラモアナセンター」にも、屋台村のようなフードコート「シロキヤ・ジャパン・ビレッジ・ウォーク」が6月に開業し、行列ができる人気店となっている。
ハワイの街は毎年リフレッシュを重ね、いつ訪れても飽きさせないよう、少しずつ変化することを忘れないのだ。
もっとも、オアフ島観光の中心街のワイキキ周辺は、開発できる土地がほとんどない。そのため、改装や買収が盛んに行われている。ホテルの客室数も足りない状況が続いており、リッツカールトンのようにワイキキビーチからは少し離れた立地で新設したり、16年3月にオープンした「ザ・サーフジャック・ホテル&スイムクラブ」のように既存のホテルをリノベーションしてモダンなデザインのブティックホテルとして開業したり、といったトレンドも生まれている。
JALやハワイアン航空がハワイ線を増強
ハワイ人気を裏付けるようにハワイ線の増便も決まった。現在、日本ーハワイ間で直行便を運行中なのは、日本航空(JAL)、全日本空輸(ANA)、デルタ航空、ユナイテッド航空、チャイナエアライン、大韓航空、そしてハワイアン航空の7社。その中でまず動いたのが、JALとハワイアン航空だ。
成田-ホノルル間で毎日3便運行していたJALは、16年9月から臨時便を追加して、毎日4便体制にシフト、さらに年末年始には、羽田空港、関西国際空港、中部国際空港からのホノルル線でボーイングB777-300ER機を使用し、ファーストクラスを設定する予定だ。
一方、ハワイアン航空では、東京圏では、羽田-ホノルルの毎日1便だけだったが、16年7月末に成田-ホノルル線を毎日1便運航開始し、12月には羽田-ホノルルで週4便を追加する。さらに、これまで直航便のなかった羽田-コナ線を週3便就航させることを決めている。
「2010年の羽田-ホノルル間の初就航以来、日本からの送客は安定しており、まだまだ旅客数は増やせる。コナ線も就航し、ハワイ島への直航便ができることで、オアフ島と違うハワイ島の魅力でさらに観光客を呼び込みたい」とハワイアン航空日本支社の宍戸隆哉社長。
ハワイ島はハワイ諸島の中で最も大きく新しい島。貿易風とマウナケアやマウナロアなどの4000m級の山々によって、東西南北さまざまな気候と景観に恵まれた自然を満喫できるリゾートアイランドである。今も溶岩が海岸線まで流れ出ているキラウエアのような活火山もあれば、多様な植物が育つ雨の多い街のヒロ、ショッピングモールやゴルフ場を併設し、ロングステイ向けのホテルやコンドミニアムが並ぶ巨大リゾートのある晴れの街のコナなど、オアフ島とはまた違った魅力がある。
「コナ線の直行便ができたことで、まずハワイ島で雄大な自然を楽しみ、国内線を使ってオアフ島に渡り、ワイキキ辺りで買い物や食事を満喫してから日本に帰る」というのが宍戸社長のお薦めプランだ。
16年12月の国際線就航に向け、これからホテル、リゾート、周遊などを盛り込んだ、さまざまなハワイ島直行便プランの旅行商品が発表され、今年の年末は例年以上にハワイ人気は盛り上がりそうだ。
ハワイ島の面白さに味をしめて、次は雲海を望むマウイ島、渓谷美のカウアイ島、神秘と静寂のラナイ島へと、未知なるハワイを周遊するトレンドなども生まれるかもしれない。
日経BPヒット総合研究所 研究員。コンシューマー局プロデューサー。『日経トレンディ』『日経ゼロワン』『日経キッズプラス』の副編集長、『日経おとなのOFF』の編集委員などを経て現職。キッズからシニアまで各世代のライフスタイルをウオッチ。共著に『ものづくりの未来が見える 3Dプリンター完全マスター』(日経BP社)がある。
日経BPヒット総合研究所(http://hitsouken.nikkeibp.co.jp)では、雑誌『日経トレンディ』『日経ウーマン』『日経ヘルス』、オンラインメディア『日経トレンディネット』『日経ウーマンオンライン』を持つ日経BP社が、生活情報関連分野の取材執筆活動から得た知見を基に、企業や自治体の事業活動をサポート。コンサルティングや受託調査、セミナーの開催、ウェブや紙媒体の発行などを手掛けている。
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