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東京都内を中心に、全国に140店舗以上を構える成城石井。
世界中から集められる高感度な商品群と両輪で店を支えるのがスタッフたち。
成城石井マインドの浸透とサービス向上を掲げ、5500人の社内教育を担う!

――成城石井で働く人はほぼ全員、私の研修を受けています

成城石井で、お客様満足度向上のためのスタッフ教育を担当しています。現在、成城石井で働く従業員は約5500人いますが、社員であれアルバイトであれ、ほぼ全員が入社時に私の研修を受けていると思います。

私は成城石井に勤めて29年。成城学園前駅に1店舗しかなかった時代に入社していまして、店舗で働いていた経験も長く、いわゆる「成城石井マインド」というものが身にしみ込んでいます(笑)。それを全国の店舗で働く新しいスタッフたちに伝えていくのが私の役目でもあります。

――お店に自分の分身をつくるように

具体的な仕事の内容も多岐にわたり、社内接客コンテストの運営、CSリーダー会議、新人スタッフ研修など多くのことに取り組んでいます。

CSリーダー会議というのは、140店舗超の各店舗に1人ずつ任命しているCSリーダーたちとのミーティングです。私が全店舗に立つことはできないので、お店に私の分身をつくるような思いで皆とコミュニケーションを重ねています。

――皆を巻き込み気づいてもらう

新人スタッフ研修は週に1、2回は開催しています。新しく入社したパート、アルバイトも含めた全従業員を対象とし、1回50~80人を相手に約3時間、グループワークやディスカッションを交えて実施していきます。

肝心なのは、私が一方的に経営理念などを熱く語るのではなく、皆に気づいてもらい、自ら考え動ける人を育てること。「なぜお客様は他のお店ではなく成城石井にくるのだろう?」という身近な問いから始めて、自分たちが大切にすべきものは何かを、自分たち自身で認識していきます。

3時間の研修のなかで、成城石井で求められるお客様満足とは何か?を知り、「成城石井の理念」と「接客のいろは」だけは持って帰ってもらいたい。そんな思いで、毎回全力で臨んでいます。

――静岡の実家に、常務が軽自動車でシラスを買いにきた!

私と成城石井を結びつけたものは、実はシラスです(笑)。私の実家は静岡で水産業をしていて、シラス漁もしているのですが、そこに当時常務だった女性が軽自動車に乗って突然訪ねてきたのです。「お宅のシラスを店で扱わせてほしい」と。漁港で評判を聞きつけたそうで。

それがきっかけで我が家と成城石井の取引が始まり、私はその女性常務へのあこがれもあり、高校卒業と同時に上京して成城石井に入社しました。18歳でした。

――お客様たちと話ができるようになりたくて勉強した

先ほどもお話した通り、まだ成城に1店舗しかなかった時代です。そこでスーパーマーケットのあらゆる仕事を経験させてもらいました。レジにも立ちますし、青果部門としてトマトのパック詰めもしましたし、総菜部門として天むすも握りました。

成城という土地柄、企業の経営者や文豪、映画関係者など、文化人も多く住まれており、お客様たちは食に対する知識や経験も豊富。少しでもお話ができるようになりたいと思い、一生懸命勉強しました。日経を読むようになったのも、その頃からです。おかげでずいぶんお客様にかわいがって育てていただきました。

やがて私はレジのリーダーとして働くようになり、会社も大きくなり、5、6店舗に増えた頃でしょうか。店によって接客サービス力にバラつきが出始め、成城石井としてのサービスレベルの統一化が課題になってきました。そこで、入社12年目の私がトレーナーとして異動。本社勤務となり店舗を離れました。以来、サービス向上に取り組み続け、現在に至ります。

――共感できる上長との出会い

転機は2004年、組織が変わった時でした。新組織では、それぞれが本業以外のプロジェクトに参加するCFT(クロスファンクショナルチーム)が立ち上がり、私はお客様満足度を高める全社的な取り組みを考えるCSチームに入りました。

この活動のなかで現在の上司と出会ったことが、私の仕事人生の上で大きな転機になりました。とにかくお客様目線で考える人で、売り上げはその結果としてついてくるものだ、と考える。そのぶれない考え方に強く共感できました。今、確信をもって研修の場で「成城石井マインド」を語れるのは、この上司のおかげだと思います。

――この看板を嫌いになりたくないから、辞職を思いとどまった

かつては直近の結果ばかりを求められたこともありました。それを達成するために、自分のやりたい長期的な目標をあきらめ、目の前の利益を追わねばならない……。その経験は本当に辛いものでした。自分の信念や性格を変えてまでやる必要があるのか?と、その時初めて本気で会社を辞めようと思いました。

辞職を思いとどまることができたのは、当時の上司や仲間たちから説得されたからでもありますが、「このまま辞めたら、街で成城石井の看板を見るのも嫌になってしまう! 成城石井を嫌いになりたくない!」と思ったからでした。それほど、私は成城石井が好きだったんですよね。

――子育てすることで、仕事も家事も効率が上がった

体力と気持ちの強さに自信アリ!の私が、唯一長期間休んだのは出産のためです。産休・育休を10カ月取りました。でも、休業中もアンテナは張り続けていました。CSの仕事では、一顧客としての気持ちも大切なので、お客様目線で買い物しながら気づいたことを書き留めていましたし、トレンド情報も変わらず追いかけていました。

子育てをするようになり変化したことは、オンとオフを切り替えられるようになったことと、仕事や家事の効率が上がったこと。仕事と家事はコントロールすることもできますが、子供のことは「想定範囲内」という言葉がないくらい計画通りにいきません。ほかでやりくりするしかないので、スキルも上がるというわけです(笑)。

今は夫が海外赴任中なので、一人で子育てしているような状態です。朝は5時起きでお弁当づくり。仕事から帰って、ゆっくり過ごせる親子の時間は90分くらい。せわしない毎日ですが、子供と一緒に早寝しているおかげでたっぷり8時間睡眠がとれていて、健康そのものです。

――これまでの経験に「専門性」をプラスしていきたい

企業で教育の仕事をしていると、毎回研修で伝える内容が変わらないように思うかもしれませんが、伝える相手が変われば反応も変わりますし、一人ひとり感じ方も違います。研修を通じて私のほうが、皆からいろんなものをもらっています。次に生かしていこう!と、頑張る糧になりますね。

私は長年、人を育てる仕事をしてきましたが、多くは自分の経験に基づいたものです。今後は、ホスピタリティーとは何か、メンターの役割とはどういったものか、専門的な勉強もしていきたいと思っています。そうした専門性がこの先、私の力になってくれるようにも感じています。

これからも人と関わり、社会とつながりながら、おいしいものを食べて生きていきたいですね。私のような食いしん坊が多いのも、この会社の魅力です(笑)。

深沢祐三子(ふかさわ・ゆみこ)さん
株式会社成城石井 人事部CS推進室主任
1986年、成城石井に入社。レジ部門リーダーを経て、98年から本社勤務のレジトレーナーに。2004年、CSチームに所属。08年より、現職。一児の母。静岡県生まれ。

●取材後記

成城石井の1号店は今も変わらず成城にありますが、現在の本社は横浜。取材当日も本社の一室では研修が行われていて、フロアにはその熱気が広がっていました。深沢さんが見せてくれたのは、「成城石井BASIC」という経営理念などがまとめられた手帳。「研修で1人に1冊必ず渡すものですが、テキストに使うわけではありません。これは復習で使ってもらえればいい。文字を追うよりもお互いの顔を見て話すほうが大切です」。時間も労力もかかりますが、こうしたFACE TO FACEの積み重ねが組織の大きな実りを生むのですね。

成城石井のホームページ http://www.seijoishii.co.jp

[2016年9月1日公開のクラブニッキィの記事を再構成]

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