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家を買う前に 重大な欠陥、瑕疵担保と住宅診断で備え

2016/9/17

 「家を買う」をテーマに議論をしている筧ゼミ。マイホームを買うとき予算や立地、間取りなどと並んで気になるのが住宅の欠陥や災害への備えです。どんな点に注意するといいのでしょうか。宗羽士郎君が発表します。

筧花子(かけい・はなこ、50=上)経済大学院教授。家計の経済行動や資産形成、金融リテラシーが専門。 宗羽士郎(そうば・しろう、23=中)大学院1年生。中堅証券「宗羽証券」創業家の一人息子。IT好き。 岡根知恵(おかね・ちえ、38)パート主婦。将来の家計に不安を覚え、金融知識を身に付けようと大学院に。

 岡根 宗羽君はまだマイホーム購入を考える年齢ではなさそうですが?

 宗羽 実は両親が実家の建て替えを考えているのです。最近は住宅の欠陥を巡るトラブルが増えていますし、台風や地震などへの備えも大切です。私が調べて両親に伝えようかと。

  いい心掛けですね。確か住宅には一定の保証があるはずです。

 宗羽 その通りです。新築の戸建て、マンションとも引き渡しから10年以内に重大な欠陥が見つかれば、売り主が責任を持って無償で修理することが法律で義務付けられています。これを瑕疵(かし)担保責任といいます。修理するのは住宅の基礎や柱、壁といった構造上主要な部分と屋根など雨漏りを防ぐ部分です。大まかに言うと、そのままでは住めないような不具合が対象です。

 岡根 無償で修理するといっても、売り主が倒産したりしていたら無理では?

 宗羽 新築住宅の売り主は住宅瑕疵担保責任保険という専用保険に加入するか、保証金を法務局に預ける供託という制度のどちらかを選び、一定の修理費用を確保することを義務付けられています。保険を引き受けるのは国土交通省が指定する「住宅瑕疵担保責任保険法人」という専門法人で、現在5つあります。売り主が倒産した場合でも、住宅の購入者は保険法人や法務局に請求すればお金を受け取れる仕組みです。

  新築物件のうち保険と供託の割合は戸数ベースでほぼ半々です。保険金などの請求手続きが異なるので、自分の家がどちらで守られているか確認しておくといいでしょう。

 岡根 新築のケースは分かりました。中古はどうでしょうか。

 宗羽 まず知っておきたいのは中古物件の保証は新築に比べ不十分ということです。売り主、買い主とも個人で、仲介会社を通じて取引をするのが中心ですが、個人は専門知識がない場合がほとんどです。ある大手仲介会社の営業担当者は「売買契約書のひな型で保証に関する項目を用意し、具体的な保証期間などを買い主と売り主の間で決めてもらう」と話していました。構造上主要な部分の欠陥や雨漏りなどについて、保証期間は3カ月とする例が多いそうです。

 岡根 3カ月は短いような気もします。

 宗羽 中古でもリフォーム業者や仲介業者などが任意で加入する瑕疵担保保険があるので、保険付き物件を探すのも一案です。新築と同じく構造上主要な部分と雨漏りを防ぐ部分が対象ですが、オプションで給排水管を含む場合もあります。保証期間は一般的に1~5年程度で、保険金は500万円や1000万円という例があります。

  新築も中古も保証するのは重大な欠陥が中心だから、壁に細かなひびがある程度では瑕疵保険の対象外のようですね。

 宗羽 そうした不具合に備えるには、住宅診断サービスを受ける方法があります。ずさんな工事や欠陥がないかを専門家にチェックしてもらえます。新築一戸建ての場合は、1級建築士などが現場に入って施工状況を確認します。例えばコンクリート基礎の鉄筋にゆがみがないか、壁に入れる断熱材に偏りがないかなどを調べます。断熱材に偏りがあると結露が発生しやすく、湿気が高まってシロアリの原因になるおそれがあるそうです。

 岡根 マンションの場合は建築中に立ち入ることが難しいそうですね。

 宗羽 完成後に専有部分の内装や流し台の排水管などをチェックします。管の継ぎ手がずれていると漏水の原因になりかねません。費用は点検回数や項目数などによりますが、数万~数十万円です。

  中古住宅はどんな方法で調べるのでしょうか。

 宗羽 目視で確認できる範囲でチェックします。点検口から屋根裏をのぞいて雨漏りの跡がないかをみたり、通風口から床下を調べたりします。柱にシロアリの被害がないか、床が過度に傾斜していないかなどもチェック項目です。検査結果は書面でもらえるので、リフォーム計画の資料になることもあります。国交省は住宅診断の普及を後押ししています。先の通常国会では、仲介業者が売り手と買い手に住宅診断のあっせんを希望するかどうかを確認することを義務付ける法律が成立しました。

  豪雨など自然災害にも備えたいですね。

 宗羽 それには火災保険をかけます。火事による損害だけでなく、暴風雨で屋根が壊れて雨漏りしたり、床上浸水があったりした場合に補償されます。最近は保険料が値上がりしていますが、10年の長期契約をすれば1年当たりの保険料は1年契約より約2割減らせます。マンションの上層階に住んでいるなら浸水被害を受ける可能性が小さいので水災補償を外したり、最低限にしたりするのが選択肢でしょう。

  ただし地震で建物が倒壊したり、火事になったりしても火災保険では補償されないことに注意が必要です。火災保険とセットで地震保険に加入しておくことが大事です。

■内覧会で不具合確認
 さくら事務所住宅診断士 川野武士さん
 新築中に施工会社以外の人がする検査には、建築確認をした審査機関などがする検査や、住宅瑕疵担保責任保険の保険会社による現場検査がありますが、主に構造上主要な部分と雨漏り、防水が対象です。断熱工事や傾斜などは一般的に第三者の検査はありません。民間の住宅診断サービスでは、建築中に床や壁が傾いていないかなど審査機関や保険会社が見ない箇所も検査します。施工不良のリスクを減らす効果が期待できます。
 購入する住宅に不具合がないかは引き渡し前の内覧会などでチェックします。住宅診断会社が立ち会うこともできます。ここで見落とすと、引き渡し後の細かな不具合の修理は基本的に自己負担となります。内覧会後2~3日で引き渡す売り主もいますが、補修する場合は最低1週間必要です。引き渡し日の延期を頼むことをお勧めします。(聞き手は川鍋直彦)

[日本経済新聞朝刊2016年9月10日付]

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