マネー研究所

転ばぬ先の不動産学

相続空き家の特別控除 知りたい疑問に答えます 不動産コンサルタント 田中歩

2016/9/14

PIXTA

 2016年度の税法改正で、相続に伴う空き家の譲渡に関する3000万円の特別控除が新たに加わりました。この制度は相続発生時から3年経過する日の属する12月31日までに、一定の条件のもと、被相続人(亡くなった人)が居住していた自宅を相続した相続人(子供など)がリフォームをしたり売却したりした場合に3000万円の特別控除が使えるというものです。

 詳しく書きますと、(1)当該家屋(耐震性のない場合は耐震リフォームをしたものに限り、その敷地を含む)、または(2)取り壊し後の土地――を譲渡した場合には、当該家屋又は土地の譲渡所得から3000万円が控除されます。

 この特例は「耐震性のない建物を空き家のままにしておくのは問題」ということから創設されており、主な適用条件は次の通りです。

<相続した家屋の主な条件>

・相続開始の直前において被相続人の居住用に供されていたものであること

・相続開始の直前において被相続人以外に居住をしていた者がいなかったものであること

・1981年5月31日以前(旧耐震基準の時期)に建築された家屋(区分所有建築物を除く)であること

・相続から譲渡するまでの間に事業用、貸付け用又は居住用に供されていなかったこと

<譲渡する際の主な条件>

・譲渡価額が1億円以下

・家屋を譲渡する場合(その敷地用に供されている土地なども併せて譲渡する場合も含む)、譲渡時にその家屋が現行の耐震基準に適合していること

 この特例については7月29日に通達が出されたということです。そこで、筆者がお世話になっている東京シティ税理士事務所の税理士、石井力氏に気になる点について聞いてきました。

Q:2013年に発生した相続について適用を受けられますか?
A:2013年1月2日以降に相続が発生した方であれば、今年の4月1日以降、12月31日までに条件を満たして売却すれば適用されます。
Q:相続発生時、被相続人が老人ホームに住んでおり、当該家屋に住んでいなかった場合はどうなりますか?
A:「マイホームを売る場合の3000万円控除の特例」は、住まなくなった日から3年目の年の12月31日までに売れば適用されますが、相続空き家の特例の場合、相続開始直前に被相続人が居住していたかどうかが問われます。
 被相続人が居住していた家屋かどうかは、相続開始直前の現況に基づいて判断されます。被相続人が1人で住んでいたこと、また相続後から売却時まで未利用であったことを「被相続人居住用家屋等証明書」で証明する必要がありますが、被相続人や相続人の住民票、電気もしくはガスの閉栓証明書、又は水道の使用廃止届出書などを入手しなければなりません。
 本年度から設けられた特例のため判断は極めて難しいですが、例えば、相続発生の数年前に介護上の理由により老人ホームなどに入所し、住民票も移している場合、認められない可能性が高いでしょう。
Q:3人の相続人が3分の1ずつの割合で被相続人の居住用家屋と土地を相続したとします。合計売却額は1億5000万円だとしても、1人当たりの売却額は5000万円です。この特例は適用されますか?
A:1億円の判定は、被相続人の居住用家屋および土地を取得したすべての相続人の譲渡対価の額で判定しますので、このケースの場合、特例が適用されません。
 例えば、母と子供で2分の1ずつ所有していた母の自宅を、母の他界後に子供が引き継いで1億5000万円で譲渡した場合、子供がもともと所有していた部分の譲渡対価も含めて判定しますので、この場合も特例の適用が受けられません。
Q:相続人3人が3分の1ずつの割合で被相続人の居住用家屋と土地を相続し、合計売却額が9000万円だったとします。この場合の控除の取り扱いはどうなりますか?
A:相続人の譲渡対価の合計が1億円以下ですので、特例の適用が受けられます。なお、適用対象者それぞれが1人当たり3000万円まで控除を受けられますので、この場合、譲渡所得税はかからないことになります。
Q:賃貸併用住宅を相続した場合は適用されますか?
A:「マイホームを売る場合の3000万円控除の特例」は賃貸併用住宅であっても、居住用部分の面積割合に応じて適用を受けることができます。しかし、この特例については賃貸併用住宅の賃貸部に賃借人が居住している場合、「相続人が1人で住んでいる居住用家屋」には該当しないことになりますので、適用を受けられません。

 「相続で空き家を承継したけれど、このままにしておいてよいものだろうか」とお悩みの方は多く、空き家を修繕して賃貸で運用すべきか、売却すべきかについて筆者のところに相談に来られる方も多くなっています。

 今後は、相続空き家の売却にかかる3000万円控除の特例を利用するケースが増加すると思われますが、上述のように、マイホームを売ったときの特例に比べて適用条件のハードルが高いため、事前に税理士などの専門家に相談をしたほうがよいでしょう。

田中歩(たなか・あゆみ) 1991年三菱信託銀行(現・三菱UFJ信託銀行)入行。企業不動産・相続不動産コンサルティングなどを切り口に不動産売買・活用・ファイナンスなどの業務に17年間従事。その後独立し、ライフシミュレーション付き住宅購入サポート、ホームインスペクション付き住宅売買コンサルティング仲介など、ユーザー目線のサービスを提供。2014年11月から「さくら事務所(http://sakurajimusyo.com/)」執行役員として、総合不動産コンサルティング事業の企画運営を担う。9月22日、不動産コンサルタントの長嶋修&田中歩が東京不動産市場の“今”と“これから”を徹底解説するセミナーを開催します。不動産の購入・売却を検討されている方はぜひご参加ください。詳細はこちらへ http://www.sakurajimusyo.com/160922

マネー研究所新着記事

ALL CHANNEL