ハーバード式ケースメソッドに悪戦苦闘堀義人・グロービス経営大学院学長に聞く(上)

授業での評価が低いと、学期の途中で学校から Warning Letter が届きます。このままだとカテゴリーIII になりますよという警告です。英語の発言に慣れなかったので、私も一部の科目で受け取りました。そして、教授に直談判に行きました。「日本人なので英語の議論についていけません。考えが思い浮かんでも、頭の中で意見を英語で組み立てるのに時間がかかってしまいます」などと正直に話し、「今度手を上げたら優先的に指してください」とお願いしました。

教授もこちらのやる気を評価してくれ、その後は、きちんと指してくれるようになりました。危機感を抱いて必死で勉強した甲斐もあり、終わってみれば、1年目はとても良い成績でした。

HBSに在学中、起業家になることを決意。日本でビジネススクールを開校する構想も浮かんだ。

ベンチャーを作る夢を熱く語る米国人たちに驚いた

毎週金曜の夜は、よくクラスの仲間4、5人と大学近くのバーに行きました。そこで互いに将来の夢を語り合うのですが、いつも驚いたのは、米国人の大半が、自分でベンチャーを作る夢を熱く語ることでした。

日本では優秀な人材はまず中央官庁、次に大企業を目指すというのが、少なくとも当時の常識でした。ところが、米国では、大企業に勤めていると言うと、「なぜ大企業に勤めるのか」とけげんな顔をされます。米国では、自分で会社を作って大きくすることこそが、エリートが夢見る一番格好いいキャリアなのです。

それまでの私は、起業家になろうなどとは一度も考えたことはありませんでしたが、HBSの仲間とバーで夢を語り合ううち、起業家になる決心をしました。人生で初めて自分のキャリアが明確に見えてきたのです。それからの私は、帰国後の起業に備え、ベンチャー経営戦略とかベンチャー財務とか、ベンチャーと名の付く授業はすべてとりました。

起業家になるための心構えも学びました。HBSには様々な起業家が来てスピーチをしますが、彼らの話を聞き、起業家として成功するために最も大切なのは「可能性を信じること」ということを学びました。人間には無限の可能性があるのに、その可能性を殺しているのは自分の中の意識であり、自分の中で完全に可能性が否定されるまでは、可能性を追い続けていくことが大切だという教えです。この教えは、HBSで学んだことの中で最も印象に残っていることです。

グロービス設立のアイデアが浮かんだのは、大学の図書館前の芝生にのんびりと寝転がっていた時でした。「HBSって優秀な卒業生を数多く輩出し、世界経済にも大きく貢献していて、すごいなあ」と頭の中で独り言をつぶやいていたら、突然、「HBSのような大学院を日本につくったら面白いんじゃないか」というアイデアが浮かんだのです。心が急にワクワクし始めました。

その後、HBSのMBAプログラムの責任者や総務や法務の担当者、さらにはHBSで教えている日本人の教授などに次々と会い、意見交換しました。頭の中で、構想が徐々に形になっていきました。

インタビュー/構成 猪瀬聖(ライター)

「私を変えたMBA」は原則月曜日掲載です。

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