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腕の良いファンドマネジャーの見分け方(窪田真之) 楽天証券経済研究所所長兼チーフ・ストラテジスト

2016/9/13

「腕の良いファンドマネジャーが運用するファンドを選ぶには長期の運用成績を見る必要がある」

前回のコラム「まだ続く? 投信業界の不思議な慣行」で述べたように、日本の個人投資家は過去の運用実績がない新しいファンドを販売会社の勧めるままに買う傾向があります。大切なお金を預けるのに、そんな他人任せの姿勢でいいのでしょうか?

誰でも腕の良いファンドマネジャーが運用するファンドに投資したいと考えているはずです。それなら過去の実績を見て、良好な運用実績のファンドを選ぶべきです。

ところが、現実には販売会社の勧めに乗って「バイオ関連」とか「フィンテック(金融と情報技術=IT=の融合)関連」とか、はやりのテーマの新しいファンドばかりに投資してしまう人が多いことを、日本株の投資信託を長く運用してきた私はとても残念に思っていました。

販売会社は売れそうなテーマを選ぶのが得意です。「今なら○○関連」と個人投資家が魅力を感じそうなテーマを次々と見つけてきます。ただし、その運用を担当するファンドマネジャーは新たに設定されるファンドのテーマを見て、大いに困惑することもあります。

既に人気が過熱していて、関連銘柄はどれもこれも割高になっていることが多いからです。人気テーマに投資するファンドは人気が続いている間は上昇しても、人気が去ると大きく下がることがあり、注意を要します。

私は過去の運用実績を見ないで、投資ファンドを決めることは大きなリスクがあると考えています。最低でも3年、できれば5年以上の良好な運用実績を持つファンドを選ぶべきです。

過去1年だけのパフォーマンスを見てファンドを選ぶと、むしろ危険な場合があります。1999年にITバブルといわれる相場がありました。IT関連株に投資する日本株ファンドはどれもこれも、基準価格が短期的に大きく上昇しました。2000年初頭に過去1年の運用実績が良いファンドを選ぶと、IT関連ファンドばかりになっていました。

ところが、そこがITバブルのピークでした。00年以降、ITバブルは崩壊に向かい、IT関連株は暴落しました。00年初頭にIT関連ファンドに飛びついた投資家はその後、大幅な基準価格の下落に苦しむことになりました。

やはり過去の実績を見るなら、最低でも3年、できれば5年の運用実績を見るべきです。なぜかというとファンドマネジャーの腕の差は、相場環境が大きく変わるときに顕著に表れるからです。1年だけの運用では、相場環境に大きな変化がなく、ファンドマネジャーの変化への対応力は判断できない場合がほとんどです。

日本株ファンドでいうと、99年の1年だけなら割高なIT関連株を何の疑いも持たずにどんどん投資したファンドマネジャーが高い成績を上げました。ところが、そのファンドマネジャーの成績はIT関連株が暴落した00年にはぼろぼろになりました。

00年の1年間だけ見ると、割安株ファンドの成績が良好でした。ただし、そのほとんどはITバブル期の99年の成績は不振だったのです。このように、大きく投資環境が変わるとき、大勝ちしていたファンドは大負けし、大負けしていたファンドは大勝ちすることが多いのです。つまり、1年だけの成績はファンドマネジャーの腕ではなく、投資スタイルや運によって決まることが多いと私は考えています。

そのなかで、大きく環境が変化しても良好な成績を維持しているファンドもあります。私は99年、00年と高い運用成績を上げ続けた日本株ファンドマネジャーを知っています。

そのファンドマネジャーは、ITバブル相場ではIT関連株に積極投資していましたが、IT関連株が実体以上に割高になっていることに疑問を持っていました。ITバブルの崩壊が始まると、IT関連株をどんどん売って、割安株に乗り換えていきました。環境変化に応じて、相場の流れに逆らわず、柔軟にポートフォリオの中身を入れ替えていく、それこそがファンドマネジャーの腕だと思います。

その人がよく語っていた言葉を私は思い出します。「相場は勝ちすぎてはだめなんだよ」。過剰なリスクを取って、大勝ちして浮かれているファンドマネジャーは相場の流れが変わったときに大負けしてしまいます。そうした危険性を肌感覚で知っていたのだと思います。

私は日本株ファンドマネジャーの腕を判断するには、流れが変わったときの対応力を見ることが大切だと考えています。日経平均株価の急騰・急落、あるいは成長株相場・割安株相場など相場の流れが変わる前後で勝ちすぎず負けすぎず、ほどほどに良好な成績を上げているかどうかをじっくり見ます。運用期間が長ければ、自然とその中で、相場の流れが何回も変わっているはずです。そこでファンドマネジャーの運ではなく、腕前を見ることができると思います。

個人投資家の皆さんも投信運用会社のホームページなどで個別ファンドの運用実績を見ることができます。パフォーマンスの掲載期間は会社によりまちまちですが、なんらかの形で開示されています。投信の無料比較サイトなどもありますので、参考にしてみてください。

なお、手数料(毎年ファンドから差し引かれる信託報酬)の高過ぎるファンドは長期投資に向きません。3年・5年と運用期間が長くなるほど、手数料の負担は増していきます。日本株ファンドでいえば、手数料水準はほどほど(理想的には年1%以下)で毎年、安定的に勝っているファンドが投資対象として理想的と考えています。

プロのポートフォリオは運用に精通したプロが独自の視点で個人投資家に語りかけるコラムです。原則火曜日掲載で、楽天証券経済研究所所長兼チーフ・ストラテジストの窪田真之氏とレオス・キャピタルワークス社長兼最高投資責任者(CIO)の藤野英人氏が交代で執筆します。
窪田 真之(くぼた・まさゆき) 楽天証券経済研究所所長兼チーフ・ストラテジスト。1961年生まれ。84年慶応義塾大学経済学部卒業後、住友銀行(現三井住友銀行)入行。90年海外業務開発プロジェクトチーム、91年ニューヨーク駐在。92年住銀投資顧問(当時)日本株ファンドマネジャー、99年大和住銀投信投資顧問日本株シニア・ファンドマネジャー、2014年2月楽天証券経済研究所チーフ・ストラテジスト。15年7月から所長兼務。大和住銀投信投資顧問では日本株の運用歴25年のファンドマネジャーとして活躍した。99年の運用開始から13年まで担当した「大和住銀日本バリュー株ファンド」(愛称「黒潮」)は長期に安定した成績で知られる。著書に「投資脳を鍛える!株の実戦トレーニング」(日本経済新聞出版社)など多数。

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