ボールペンでも万年筆でもなく パーカーの第5世代

日経トレンディネット

新モデルの一つ「パーカー インジェニュイティ スリム ブルーバイオレットCT」。アルミ素材ならではの複雑な発色と表面の加工が特徴的
新モデルの一つ「パーカー インジェニュイティ スリム ブルーバイオレットCT」。アルミ素材ならではの複雑な発色と表面の加工が特徴的
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2016年9月15日発売の「パーカー インジェニュイティ ラグジュアリーライン」(各2万7000円)

高級筆記具メーカーのパーカーは2016年8月23日、独自技術「パーカー 5th テクノロジー」を搭載した「インジェニュイティ」の新作を発表した。

2011年、パーカーは、面倒なメンテナンスや書き方のコツが必要なく、万年筆のような書き味を実現するパーカー 5th テクノロジーを発表。そのテクノロジーを使用したインジェニュイティシリーズは、当時、画期的なペンとして話題を集めた。

筆記具の長所を集めた“第5世代の筆記具”とは?

インジェニュイティはよくしなり、書き手のクセに合わせてなじむペン先で、筆圧をほとんどかけずになめらかに書けるペンだ。ボールペンのようにペン先を気にせずに使え、メンテナンスがラクなのが特徴。しかもインク溜まりも起こさず、サインペンのようにクッキリと濃い線で書けるのに、キャップを外して放置してもドライアップしにくい。従来の筆記具の良い点を併せ持った「第5世代の筆記具」として作られたシリーズなのだ。

ボールではなく、独自の多孔性のペン先から、速乾性の水性インクが最適な量だけ供給されるインク供給部分。筆圧をかけるとしなる蛇腹状のリフィルとそれを覆うような金属製のフードの組み合わせで万年筆のようにしなり、使い続けると個人の書きグセに対応したペン先になる機構が特徴だ。ビジネスユーザーを中心に世界中で人気が高い。

左はインジェニュイティのプレミアムライン「パーカー インジェニュイティ ブラックラバー&メタルCT」。前のモデルとは、ラバー部分のパターンのデザイン、キャップのリングの大きさ、首のデザインなどが変わっている。右は従来の「パーカー インジェニュイティ ブラックCT」

インジェニュイティは、2011年に発売された当初から、その先進性や手入れ不要で誰でも扱えること、独特の書き味で注目度が高かった。現在は比較的増えた「ラバー塗装」を最初に筆記具に採用したのも、このインジェニュイティの初期タイプからだったと思う。インジェニュイティに使われているラバー塗装は、パーカー独自のもので、数年程度でベタベタにならないのだ。

発表会に登壇したパーカー創業者のひ孫、ジェフリー・サッフォード・パーカー氏

軽いアルミニウム製、デザインも一新

今回のニューモデルはパーカー 5th テクノロジー部分ではなく、筆記具としてのインジェニュイティのリニューアルだった。新たに加わったインジェニュイティの「ラグジュアリーライン」は、全部で6種類。デザインも一新されたが、それ以上に大きく変わったのは、軸とキャップの素材がアルミニウムになったことだ。これにより、軸が軽くてスリムになった。

インジェニュイティの新しいシリーズ「ラグジュアリーライン」の6本。左3本がスリムタイプ。価格は各2万7000円。左から3本目が「パーカー インジェニュイティ スリム ディープブラックレッドBT」、右端が「パーカー インジェニュイティ ディープブラックBT」

スリムタイプの3種類は、軸から首軸まで段差がない作りで、とても持ちやすく書きやすい。そのぶん、キャップをしたときに軸とキャップの間に段差ができるが、軸が細身なのでデザインのバランスが崩れず、キャップをした状態でも十分にカッコいいのだ。残りの3種類は、キャップをした状態で軸からキャップがまっすぐで段差がない、従来と同じデザインだが、「ディープブラックBT」はカッコいい。

ラグジュアリーラインのディープブラックBTと「スリム ディープブラックレッドBT」の2種類は、リング、クリップ、ペン先までマットブラックになっていて、スタイリッシュな仕上げ。特に、首軸の赤がキャップと軸の間からのぞくスリム ディープブラックレッドBTは今回のインジェニュイティのキービジュアルに使われているが、ルックスのカッコよさは相当なものだ。

今回の新作のデザイン的なアイコンになっている「パーカー インジェニュイティ スリム ディープブラックレッドBT」。スリムな軸と、マットブラックの軸とキャップの間にのぞく赤のラインが印象的
「パーカー インジェニュイティ スリム ディープブラックレッドBT」のキャップを外すと、軸と首の間に段差がなく握りやすい。また、ペン先のフードも黒になっている
新しいインジェニュイティは、パッケージも新しい「デュオフォールド」などと同じデザインに刷新されている

そのほか、「コアライン」「プレミアムライン」として、従来のモデルをベースに細部をリニューアルしたタイプも発表された。コアラインは、パーカーの万年筆の伝統を感じさせるブラックラッカー軸のスタンダードモデル。プレミアムラインは、インジェニュイティの初期のデザインアイコンになっていた、ラバー塗装の軸に金属のリングを3本はめ込んだ独特なモデルを中心にしたもの。少し小ぶりのホワイト軸もラインアップされている。

左2本が「コアライン」(各2万1600円)、右の4本が「プレミアムライン」(各2万5920円)
インジェニュイティのリフィル。ペン先の独特の形状がしなる書き心地を生む。インク色は現在、ブラック、ブルー、ピーコックブルー、パープル、バーガンディ、オリーブグリーンの6色(各1080円)

ジェフリー・サッフォード・パーカー氏によると、インクやチップなどのパーカー 5th テクノロジー部分も、2011年の発表以降、より良くするための細かい改善は続けているとのこと。また、インジェニュイティのスリム ディープブラックレッドBTを実際に使ってみたところ、アルミニウムによる軽量化の効果は大きく、かなりラクに扱えるのに加え、軸と首の間に段差がない握りやすさで、よりスムーズに心地よく書ける印象だった。

エリザベス女王に献上された特別限定品の万年筆に出合えるイベント

もう一つ、今回、ジェフリー・サッフォード・パーカー氏が来日したのは、エリザベス女王生誕90周年特別限定品とその製造工程を日本初公開する世界巡回展「パーカー トラベリングミュージアム」開催のためでもある。

「パーカー トラベリングミュージアム」のショーケースを紹介するジェフリー・サッフォード・パーカー氏。ショーケースの引き出しを自分で開けてパーカー社の歴史に触れるという企画だ

2016年8月25~31日まで、銀座・伊東屋 K.Itoya(東京都中央区)2階で一般公開される「パーカー トラベリングミュージアム」は、英国王室御用達(ロイヤルワラント)ブランドとしてのパーカーが、エリザベス女王奨学財団に寄贈品として献上した特別限定品などの、普段見る機会がない万年筆や、その製作過程のパーツ類や設計図などを持って、イギリス、日本、中国を巡回するイベント。このために作られたショーケースに収められた万年筆や関連資料を間近で見ることができる本当に貴重な機会だ。

展示されるのは、エリザベス女王生誕90周年特別限定品「デュオフォールド QESTペン」の実物と、そのデザインスケッチなどの資料、プロトタイプのパーツやペン先をはじめ、エリザベス女王生誕80周年特別限定品「デュオフォールド クイーン ソリッドゴールド リミテッドエディション万年筆」の実物、エリザベス女王即位50周年記念特別限定品「デュオフォールド アクセッション」の実物とパッケージ、チャールズ皇太子/ダイアナ妃ご成婚特別限定品の実物など。

最上段に飾られているエリザベス女王生誕90周年特別限定品「デュオフォールド QESTペン」
最上段にはもう一本、エリザベス女王生誕80周年特別限定品「デュオフォールド クイーン ソリッドゴールド リミテッドエディション万年筆」が並んでいる
一番上の引き出しには、「デュオフォールド QESTペン」のデザインスケッチなどの資料、プロトタイプのパーツやペン先が入っていた

これらがショーケースに収まっていて、見る人は、ショーケースの引き出しを一段ずつ開けて、中に入っているペンや資料を見るという趣向だ。それは、パーカーと英国のつながりを表した歴史であり、パーカーという筆記具メーカーが良い筆記具を作るために培った技術の公開。それらの貴重な資料を内包したショーケース自体が旅して回る、まさに「トラベリングミュージアム」と言える趣向もしゃれが利いている。

このように引き出しを開けて中の展示を見る仕掛けが面白い
ショーケースのサイドに置かれていた本には、パーカーの歴史を示すビジュアル資料が詰まっていた

もちろん、手にすることはできないが、かなり近くで見ることができるし、サイドボードに用意されたパーカーの歴史をビジュアルでまとめた写真集も面白い。この機会に、普段は目にすることもない限定品の世界をのぞいてみよう。

「パーカー トラベリングミュージアム」は2016年8月25日~31日、銀座・伊東屋 K.Itoya(東京都中央区)2階で一般公開

(文・写真/納富廉邦)

[日経トレンディネット 2016年8月31日付の記事を再構成]

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