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1万人集客 都立国立高校「日本一の文化祭」を拝見

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NIKKEI STYLE

都立高校でもトップレベルの進学校である国立高校(東京・国立市)の文化祭は、全3年生がクラスごとに挑む演劇のレベルの高さからインターネットを中心に「日本一の文化祭」と話題だ。大手企業がプロジェクト・マネジメントの側面から関心を寄せている「国高(くにこう)文化祭」の日本一たるゆえんを探ってみた。

4日午前8時すぎ。9クラスある3年生の演劇の初回公演を見るために、約900人が抽選待ちの会場となっている体育館を埋め尽くしていた。普段授業を行っている教室が会場となるため、鑑賞できるのは75人まで。2日間の日程で、1回80分の公演が初日は4回、2日目は3回あるが、もっとも人気のクラスの公演の席を確保するためには約5倍の倍率をくぐらなくてはいけない。

かつては受け付け順に鑑賞者を決め、8年前から整理券を配っていたが、「早朝から人が並び午前6時には校門前に100人以上が列をなす」(文化祭担当教員)状況になり近隣住民から苦情が出た。3年前から抽選形式を導入して改革を進めてきたが「申し込みや抽選結果をボードで確認するのに時間がとられ、他の展示物が見られない」(同)などの不満の声が相次いだ。

そのため、今年から有人受け付けに加えインターネットによる受け付け抽選も取り入れたところ、7割近くの来場者がネットを利用し「20~30分あった待ち時間が5分程度に短縮した」(同)。全公演の抽選に外れた人を救済する措置もネット受付と同時に組み込んだ。倍率を調整することで1回目の公演の抽選で漏れた人は2回目に当たりやすく、また1回目も2回目も外れた人は3回目に当選しやすくするなどした。

システムを開発したのは、3年生の松本海月さん(18)。クラス担任で数学を教える丹羽裕教諭が「数学の成績は正直、普通。能ある鷹(たか)は爪を隠す」と評する松本さんは1人で約4カ月かけ、しかもプログラミングのノウハウは独学だという。「アクセスが集中してダウンすることがないよう、事前に3回リハーサルして調整した」と松本さん。実は、3年3組の演劇の監督でもあった。

松本さんのクラスの作品は「NBL大作戦」という、2015年秋によしもとクリエイティブ・エージェンシーなどの協力で都内で公演された劇(作・演出は柿ノ木タケヲさん)をアレンジしたものだ。

高校を舞台にしたSF要素もあるドタバタ青春ラブコメディーだが、出演陣のアドリブ的な一発芸もあり終始笑いの渦に。純愛的でファンタジーあふれるクライマックスには思わずウルッときていた客もいた。今年同校に入学した娘を持つ口分田重夫さん、葉子さん夫婦は「娘から一押しだと言われて3組を選んだ。初めて3年生の演劇を見たが、高校生とは思えない出色の出来栄え」と目を細める。

3年生は演劇の準備に約1年の月日をかけている。松本さんも2年生だった15年10月に「劇選」と呼ばれる翌年の演劇作品を選ぶ担当になり、いろいろな舞台を見に行ったという。上映許可を得て遅くとも5月までには演目を決定させキャスト選びに入る。通常は自薦他薦から実際にオーディションをするそうで「監督の友達だからといった恣意的な理由では決めていない。できるだけ生徒全体が納得する方法にしている」と、学生たちは口をそろえる。

今年は、3組のほかに2つの劇の前評判が高かった。1つは「ナイゲン」(6組)という千葉県立国府台高校の文化祭前の会議をモデルにしたというコメディー(脚本は冨坂友さん)で、ナイゲンとは文化祭での展示内容を限定する会議、内容限定会議の略称だ。

舞台となる会議の場を観客席が三方で囲む配置で、キャストは80分の間ずっと観客に見られ続けることになるが、キャストは緊張するどころか、俳優の堺雅人さんばりに数分間もの長セリフを何度も難なくこなす。

役柄も原理主義者、お調子者、付和雷同、しらけ派など、実際の会議風景「あるある」な感じだ。「筋論」を主張する学生が最適な解のために妥協せざるをえないくだりは圧巻。同校OBの中尾駿太さんと一緒に鑑賞した金子萌美さんは出身の茨城の高校では演劇部だった。「演劇では観客を引き込むことが大事。本格的な演技で面白く、自然と引き込まれた」

もう1つは、演出家の野田秀樹さんがドフトエフスキーの小説を原作に大幅に書き換えた「贋作(がんさく)・罪と罰」(7組)。時代は倒幕の志士がはびこる江戸末期。殺人事件を巡るサスペンスの要素とともに、理想と思想、金銭の呪縛、救いとは何か――といった人間の根源にも関わるテーマを扱っている。

女優の大竹しのぶさんや松たか子さんも演じた主人公役の女子学生は、すでに7公演目となるせいか冒頭から声がかすれていた。しかし、理想のために人を殺し、罪の意識にさいなまれるという難しい役柄を、他のキャストをも圧倒する迫力と存在感で演じ、声のかすれは逆にすごみになっていた。

「舞台回しなど、とても高校生とは思えない」。そう驚きの表情で語るのは、同校出身の女優で現在は国立市議会議員の石井めぐみさんだ。ちなみに石井さんも在学時代は3年7組で、文化祭では映画を制作したそうだ。

プロの女優も一目置く国高生の演劇レベルだが、3年の全クラスが演劇を披露するようになったのは平成になったころから。それが評判となり今では文化祭の2日間で保護者や卒業生を含めて約1万人が訪れる。

4日午前9時に受付の扉が開くと同時に、人の波、波、波。1、2年生の教室での出し物にも数十分待ちの列ができる。「最後尾はこちらです!」。プラカードを持った学生が大声で叫ぶ姿は、さながら百貨店の正月の福袋を待つ行列のようだ。

4階までのどのフロアもすごい人混みだが、怒声や罵声といった大きなトラブルらしきものは見当たらない。文化祭の担当教員によると「混乱しないよう導線を決めていて、学生が自分の役割を理解して動いているから」だそうだ。

このイベント管理能力の高さは企業にもとどろいているようだ。今年8月、トヨタ自動車グループのある大手部品メーカーが、国高における文化祭の組織や体制、進捗管理についてヒアリングを求めてきた。同社のプロジェクト・マネジメントに応用したいとのことだった。

ヒアリングに出席した文化祭実行委員長の植田健太さん(2年)によると、今年の文化祭では「減点方式を改めた」そうだ。これまでは、各クラスが準備を進める過程で、実行委員会が「ペンキが飛び散った」「教室の柱に傷をつけた」といった不備を見つけては「減点」をしていた。その狙いは「トラブル防止のための抑止力となる」(高校関係者)ことだという。

「しかし、減点を恐れて実行委員会に対して隠すケースも目立った。今年はミスをみんなでシェアして改善する方向にした」と植田さん。組織改正はこれだけにとどまらない。文化祭とともに9日の体育祭と後夜祭を含めた「国高祭」を統括する国高祭実行委員長の川向泰斗さん(2年)は「毎年決めるスローガンも、言葉だけが先走らないよう、ミッションの共有を大事にした」と語る。

例年はスローガンを全体から募集していたが、「キャッチーな言葉に決まりがちで、一体何をやりたいのか、といった中身がわかりにくかった」(川向さん)。そこで今年は川向さんと植田さん、体育祭と後夜祭の両委員長の4人で「国高プライド」をスローガンに決めた。

川向さんは「僕たちは自由を尊重するが、それは責任が伴い、また先輩たちの伝統などで成り立っている。そういう気持ちを在校生全員で共有したかった」と語り、折に触れて「本当にそれは国高プライドなのか?」との問いかけを徹底したそうだ。

国高の入学推薦の面接では、応募してきたほぼ全員が志望動機に3年次に演劇をしたいことを挙げると聞く。確かに演劇の実力は高いのだが、それを含めて文化祭、いや国高祭を支える学生全体が、自ら改革し国高祭を進化させていることが、「日本一」と呼ばれ、企業も関心を持つ秘訣なのではないだろうか。

「国高生の国高生による、すべての人が楽しめるための文化祭」。興味のある読者は、来年9月を待たずとも演劇の取り組みの様子が随時アップされる動画投稿サイト「ユーチューブ(YouTube)」を要チェックだ。

(編集委員 木村恭子)

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