配偶者控除見直し 生活実態に合った制度を

自民党税制調査会の宮沢洋一会長は、2017年度の税制改正で配偶者控除見直しを検討すると表明した。配偶者が年収103万円以下であれば控除が受けられる同制度は、専業主婦優遇制度とされる。高度成長期中葉の1961年に導入されたが、共働き世帯の増加にともない「時代遅れ」との指摘もある。

たしかに専業主婦のいる世帯割合は70年代をピークに低下し、97年以降共働き世帯が逆転。15年現在では共働き世帯1114万世帯、専業主婦世帯687万世帯と、427万世帯共働き世帯の方が多い。

背景には、若年層を中心に総体的な賃金水準低下や昇給ベースの鈍化が見られ、夫婦二馬力で家計破綻リスク回避を図らねば立ち行かない世帯が増加したという切実な事情がある。

主婦パート労働の実態に詳しい国学院大学教授・本田一成氏によれば、女性パートの就労動機は、90年代から00年代にかけ「家計補助」型から「生活維持」型へと変化しており、もはや「中流」世帯の生活水準を維持するためには、既婚女性の就労が不可欠だと指摘する。

アイデム「パートタイマー白書」(13年)によれば、企業が雇用しているパート・アルバイト従業員は74%が「主婦」であり、非正規雇用の最大多数派でもある。また主婦パートは8~9割が希望勤務時間帯を「9~15時」と答えるなど、家庭責任重視の傾向も見られる。主婦偏重の家庭責任をそのままに、闇雲に就労へ動員するばかりでは問題だ。

また、そもそも配偶者控除は妻という「地位」に付加される制度だが、現状ではこの地位と育児や介護などケアワーク負担の重さは、必ずしも同義ではない。

たとえば現在、生涯未婚率(50歳時点未婚)は男性2割、女性1割であり、「未婚男性が老親の介護を担う」ようなケースも増加しているが、この立場に対する控除はない。福祉先進諸国はすでに70年代以降、家族形態よりも個人のケア負担の重さを眼目に社会保障制度改革を行ってきた。

現状に鑑みれば、配偶者控除は「成長した子どもの窮屈になった衣服」のようなものだが、新しく現状に即したケア保障がなければ、その子どもを裸のまま野に放つに等しい。国民個々人の生活実態に即した制度改革を、切に望む。

みなした・きりう 1970年生まれ。詩人。中原中也賞を受賞。「『居場所』のない男、『時間』がない女」(日本経済新聞出版社)を執筆し社会学者としても活躍。1児の母。

〔日本経済新聞朝刊2016年9月3日付〕