9月から年金保険料がアップ 給与明細をよく見よう
働く女性の相談を受けることが多いFPの加藤梨里さんが、これまで受けた相談を紹介しながら、お金やライフプランの課題を解決します。今回は、9月から引き上げられる厚生年金保険の保険料について。私たちのお給料の手取りにもかかわるところですから、ぜひチェックしておきましょう。
厚生年金の保険料はいくら上がる?
こんにちは。ファイナンシャルプランナーの加藤梨里です。9月は秋への季節の変わり目であり、お金の面での節目でもあります。そのひとつが厚生年金の保険料。
9月から、厚生年金保険の保険料が引き上げられるって知っていましたか? 2016年8月分までは17.828%(一般被保険者)という保険料率だったのですが、これが18.182%にアップします。
といっても、料率の数字を見ただけではどれくらいの負担なのか、いまひとつピンとこない人が多いのではないでしょうか。そこで保険料の金額をみてみましょう。厚生年金の保険料は、おおよその月収の平均である標準報酬月額に料率をかけた金額です。たとえば月収が20万円の人なら、現在の保険料は17.828%をかけた月3万5656円です。このうち半分は勤務先の会社が負担しますので、自己負担は1万7828円です。9月分から料率が18.182%にアップすると、自己負担は1万8182円になります。月に約350円の負担増ということになります。一見小さな金額ですが、1年分にすると約4000円ですから、意外と侮れませんよね。
そして、負担アップはこれだけではありません! ボーナス時の保険料もアップするのです。
実は毎年アップしていた保険料率
厚生年金保険料は、毎月の給与だけでなくボーナスからも天引きされます。保険料は賞与の額に料率をかけて計算されますが、こちらの料率も18.182%(一般被保険者)にアップします。夏と冬のボーナス額が同じなら、次の冬のボーナス時には、今年の夏のボーナス時よりも保険料が増えることになります。ボーナスの金額が毎月の給与よりも高い人は、こちらの負担増も覚悟しておきましょう。
実は、厚生年金の保険料率は毎年アップしています。これは2004年の法律改正で保険料水準固定方式というものが導入されたためで、毎年0.354%ずつ引き上げられてきました。2017年9月には18.3%へとアップする予定です。その後の料率は固定される予定ですが、これまでもじわりじわりと保険料の負担は大きくなってきていたのです。
にもかかわらず、自分の厚生年金保険料がいくらなのかわからないという人は少なくありません。お勤めの人は厚生年金はじめ社会保険料や税金を勤務先が計算して、給与から天引きしてくれるので、自分で意識する機会があまりないためです。天引き額は給与明細に記載されているのですが、その見方もよくわからないという人もいます。厚生年金保険料アップのこのタイミングに、ぜひ一度給与明細の見方も確認しておきましょう。
給与明細の確認すべき項目は
給与明細の書式は勤務先によってさまざまですが、必ず記載されているのが給与の支給額とその詳細、そして天引きの金額と内訳です。それぞれ「支給欄」、「控除欄」と大きく分類されています。厚生年金保険料は「控除欄」のなかに記載されます。ここに書かれている金額が現在の保険料です。
保険料は毎年、4月から6月の収入をベースに9月に改訂されます。ですから、8月分の保険料までは昨年4~6月の収入ベース、9月分の保険料からは今年の4~6月の収入ベースで計算されます。昨年の春と今年の春で収入が変わった人は、冒頭にお話した保険料率のアップとは別に、9月分からは計算のもとになる標準報酬も変わります。
なお9月分の保険料は、一般的には10月支給の給与で天引きされます。9月に受け取る給与明細までは前月と変わりない人が多いと思いますが、10月に受け取る給与明細では、厚生年金保険料の天引き額が変わっている可能性があります。10月になって手取りが少なくなったと慌てないよう、今から意識しておきたいものですね。
そして、確認しておきたい項目は、保険料だけではありません。
社会保険・税金の天引きもチェックを
厚生年金の保険料がわかったら、ついでにほかの天引き額も確認しておきましょう。給与明細の控除欄には、ほかに雇用保険料、健康保険料、40歳以上の人は介護保険料も記載されています。また、これらを合計した「社会保険料合計額」が記載されていることもあります。さらに、所得税と住民税も記載されています。
お給料日には手取りの収入額は意識しますが、その前に天引きされている項目のことはあまり意識しないもの。改めてみてみると、お給料からさまざまなものが引かれていることがわかるはずです。そして、厚生年金保険料は天引きされる項目のなかでも特に金額が高いことに驚くことでしょう。9月分からはその厚生年金保険料がアップするわけです。月に数百円という規模ですが、同じように働いていて手取りが減るのはつらいもの。特に、毎月の家計のやりくりがきつい人、なかなか貯蓄ができない人にとっては痛手です。保険料のアップによって自分にとっての負担額がいくら増えるのかを確認して、今のうちからその対策も考えておきたいものですね。
ファイナンシャルプランナー(CFP認定者)、マネーステップオフィス株式会社代表。保険会社、銀行、FP会社を経て独立開業。家計、保険などお金のセミナー、執筆、相談を行う。働く女性のライフプランと健康にも関心があり、慶應義塾大学大学院健康マネジメント研究科特任助教も務める。
[nikkei WOMAN Online 2016年8月31日付記事を再構成]
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