変わりたい組織と、成長したいビジネスパーソンをガイドする

会員登録をすると、編集者が厳選した記事やセミナー案内などをメルマガでお届けしますNIKKEIリスキリング会員登録最新情報をチェック

ビジネス街の書店をめぐりながらその時々のその街の売れ筋本をウオッチしていくシリーズ。今回は定点観測の3店を離れて、別の街に足を延ばしてみた。本の街として名高い神保町。その中心的書店、三省堂書店神保町本店だ。明治大学など大学と古書店と出版社の街というイメージが強いが、 一ツ橋・九段やお茶の水、神田地区へと連なる一帯は多くのオフィスビルがひしめく。大手町からも遠くない。本の街での売れ筋はどんな本なのだろう。

政治や国際情勢…「地政学」に関心

「メガヒットはないけれど、ビジネス書の売れ行きはまずまず安定的。4、5年前に比べると回復してきている」。ビジネス書や法経書を担当する神保町本店次長の中條聡さんは最近の傾向をこう話す。「とくに最近動きが目立つのはビジネス書、経済書というより政治や国際情勢にかかわる本がよく売れている」という。

中條さんが注目する本としてあげたのが大越匡洋『北京レポート 腐食する中国経済』(日本経済新聞出版社)。今年3月まで4年間、北京に駐在した新聞記者による中国経済報告だ。習近平指導部の発足直前から政権2期目に入る前までのこの駐在期間に見聞したことをベースに体制の矛盾が様々な形で経済社会をむしばんでいく姿をとらえている。

特徴的なのは、習体制下を生き抜く中間層の人々の様々な行動や暮らしぶりにところどころで光を当てていること。政策や統計、中枢の権力闘争を追うだけでは見えてこない中間層の行動様式にこそ、体制の矛盾や中国という国や人の底力といったものが端的に現れている。

冷静なルポや分析にニーズ

「嫌中本のような一方的な本ではなく、実際今どうなっているのかという冷静なルポや分析がある本が最近はよく売れる」と中條さんは話す。中国関係だけでなく、英国のEU離脱に関連した欧州関連の本にも動きがあるといい、最近の売れ筋のキーワードは「地政学」なのだという。

同店は1~6階に売り場を持つ大型書店で、ビジネス書は法経書、語学・辞典などとともに3階に広々とした売り場を持つ。エスカレーターの降り口近くに3台の島型の平台を置き、新刊やおすすめ本を展示する。その中にも欧州関連本や政治関連など最近関心の高いテーマの本を並べたコーナーがあった。

それでは先週のベスト5を見ていこう。

(1)最強の働き方ムーギー・キム著(東洋経済新報社)
(2)自分を操る超集中力DaiGo著(かんき出版)
(3)総理の影 菅義偉の正体森功著(小学館)
(4)魂の退社稲垣えみ子著(東洋経済新報社)
(5)超速パソコン仕事術岡田充弘著(かんき出版)

(三省堂書店神保町本店、2016年8月22日~8月28日)

ベストセラーはエスカレーターを降りてすぐの平台に陳列

ベストセラーはエスカレーターを降りてすぐの平台に陳列

第1位は、8月初めのリブロ汐留シオサイト店の回で店長注目の1冊として紹介した仕事術と仕事への心構えを説いた本。そのときは発売まもなくでランクインはしていなかったが、1カ月たってここでは堂々1位に入った。2位の本も6月の八重洲ブックセンター本店のときに紹介した集中力を高める技術を説いた本。ここでも発売以来ランキングに顔を出し続けているといい、ロングセラーになっている。

3位はノンフィクション作家が本人へのインタビューなどをもとに安倍政権を仕切る菅義偉官房長官の実像に迫った評伝。石原慎太郎『天才』などに続く政治家関連本の人気も地政学ブームと気脈を通ずる。4位は50代で退社した新聞記者の女性によるロングエッセー。5位はビジネス書として売れるパソコンスキルの本で、中條さんによれば、「最近はスキルに絡めた自己啓発本が売れる傾向にある」と言う。他の書店では著者や版元によるまとめ買いがあった本がランクインすることがあるが、ここでは集計のときに外すようにしているとのことだ。

(水柿武志)

新着記事

Follow Us
日経転職版日経ビジネススクールOFFICE PASSexcedo日経TEST

会員登録をすると、編集者が厳選した記事やセミナー案内などをメルマガでお届けしますNIKKEIリスキリング会員登録最新情報をチェック