ATからDCTへ、ギアも6速に ルノー・カングー

日経トレンディネット

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ルノー・ジャポンはMPV(多目的車)「カングー」の新グレード「カングー ゼン EDC」と「カングー アクティフ 6MT」の2モデルを発売した。価格はカングー ゼン EDCが259万円、カングー アクティフ 6MTが235万円。

ルノーのデュアルクラッチトランスミッション、6速EDCを搭載

カングー ゼン EDCは、既にカングーでも導入済みの1.2Lダウンサイジングターボエンジンにゲトラグ製のEDC(エフィシエント デュアル クラッチ)と呼ぶ6速のデュアルクラッチトランスミッション(DCT)を組み合わせたもの。クラッチペダルがない点はオートマチックシフト(AT)と同じだが、どちらかというとマニュアルシフトに近い方式で、二つのクラッチを使ってコンピューターがギアをチェンジしてくれる。ATに比べて、ダイレクト感があり、燃費も良くなるとされている。

これまでカングーでダウンサイジングターボを搭載するグレードは6速MTだけだったが、新グレードの登場でパワフルな走りをEDCでも味わえるようになった。

パワーユニットはルノー「ルーテシア」や「メガーヌ」にも搭載する1.2L直噴直列4気筒ターボエンジンで、カングー用のチューニングが施され、最高出力115ps/4500rpm、最大トルク190Nm/1750rpmを発揮。燃費消費率はJC08モードで14.7km/Lをうたう。

日本の要望で生まれたEDCカングー


仕様や装備内容は、現行型「カングー ゼン」と全く同じで、シフトレバーはAT仕様車と共通。内外装もシフトパターンも従来のAT車に準ずるとなると、じっくり見ても6速EDC車とは分からないだろう。

新グレードでありながら、なぜここまで共通化されているのかといえば、この6速EDC搭載車が日本導入を前提に開発されたモデルだからだ。

そもそも欧州では主流がMT車でAT車の需要が少ないため、初代だけでなく、2009年に2代目を発売して以来、ATは旧世代の4速ATしか存在していなかった。ルノー・ジャポンは本社からこの旧世代AT車の廃止を予告されたという。ところが日本でニーズが高いのはやはりAT車なので、日本側から働きかけ、新世代の1.2Lダウンサイジングターボエンジンと6速EDCを組み合わせたパワートレインを改良を行い、これを搭載した6速EDC車が誕生したのだ。

なお1.6L直列4気筒DOHCエンジンと4速ATを組み合わせた旧タイプのパワートレイン搭載モデル、ゼン ATは在庫がなくなり次第終了となり、今後のカングーのAT需要はカングー ゼン EDCが一手に担うことになる。



実用的なMPV車としては割高かも

ルノー・ジャポンによれば、6速EDCを組み合わせる新パワートレインは、従来のものに比べると高価で、どうしても価格は上昇してしまうという。実際、AT車より17万5000円高く、1.2LターボのMT車と比べても12万円高い。恐らく機器のコストに加え、生産台数が限られることも価格高の理由と思われるが、実用的な多目的車であるカングーにしては、少々割高な印象だ。

カングー アクティフ 6MTはエントリーモデルMT車の進化系復活版

一方、カングー アクティフ 6MTは、2014年末までに生産中止となっていたエントリーグレードであるアクティフのMT車のある意味“復活”だ。しかも1.2Lターボと6速MTの新パワートレインを搭載した進化系復活モデルで、特徴の黒バンパー仕様と簡素化された装備はそのままに、カラーは黒とグレーの2色のみとなっている。


EDCはこれまでのAT車より全面的に進化しているが

カングー ゼン EDCに試乗してみると、従来型のノンターボの1.6Lエンジンに4速ATを組み合わせたゼン ATとでは雲泥の差があり、従来のAT車で物足りなかった加速が改善。静粛性や乗り地も向上しており、全面的に進化している。変速もスムーズで、フィーリングもATに近い味付けなので、他車から乗り替えても違和感がなさそうだ。これはパワートレインの重量や性格に合わせて、足回りなどを専用に調整している効果だという。

正直に言えば価格は少々高い。しかし乗った印象は、最上級のカングーが誕生したと言っていいほど総合点も高く付けられる。ただし静粛性がアップした結果、これまで目立たなかった音や小さなメカニカルな振動に気がついてしまうというデメリットもあった。よく言えば、カングー ゼン EDCはそれだけ静かでスムーズな走りになったのだ。

同じダウンサイジングターボのMT車には、また異なる魅力があり、フランス車らしいキビキビした走りとシフトチェンジする楽しみが味わえる。価格も抑えられているので、MT車を選ぶのも悪くないと思う。

ゼン EDCはできが良く、オーナーが得る満足度は向上している。とはいえ従来のAT車との価格差を見ると、AT車が主流の日本では、カングーを選ぶ際の価格面でのハードルが上がったともいえる。それがどのように受け止められるかによって、日本で人気のカングーの売れ行きも変わってきそうだ。ただダウンサイジングターボの需要は安定した人気を確保しているだけに、価格差を見てMT派が増えるなんてことも、あるかもしれない。

(文・写真/大音安弘)

[日経トレンディネット 2016年8月25日付の記事を再構成]

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