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悪口大会のお仲間

電車の中や化粧室などで、おしゃべりに花を咲かせている人たちの話が耳に入ってくると、その場にいない人の悪口だったということがあります。

「○○部長って、上の顔色ばかりうかがって、仕事もろくにしないのよね」

「そうそう、面倒なことはみんな、私たちに押し付けてくるのよ」

「本当に、嫌だわ……」

このような話は、誰しも聞きたくはないでしょう。しかし、思いがけず悪口や噂話など「聞きたくない話」の輪に巻き込まれてしまうこともあります。

「○○さん、どう思う?」

悪口に対する意見を求められたら、あなたはどうしますか? 輪の中心にいる人は、こちらが黙っていても水を向けてくるものです。ここで、「そうかもね~」などと口を滑らせたら最後、あなたも「悪口大会のお仲間」ということになります。

こういう場合、一緒になって悪口を言うことを避けるのは当然ですが、「そうかもね?」「そういうところがあるのかな?」というような発言は、曖昧さを残しつつも「同意」しているのとほとんど同じですから、やはり避けるべきです。後日、悪口を言われた当人の耳に入り、あなたの人間性が疑われかねません。

悪口に反論したら

では、「あの人はあなたたちが考えているような人ではない」とか、「彼のことを誤解している」などと反論したらどうなるでしょうか? 今度はあなたが攻撃を受けたり、かえってその話題がエスカレートしてしまう可能性もあります。

実は私自身、悪口には苦い経験があります。

知り合いの女性3人と、お茶を飲んでいたときのことです。その場にいない共通の知人の批判を一人が始めました。

「K子さんの頑固さにはあきれる。もう一緒に仕事をするのは嫌!」

「本当にそう、やりにくいよね。あれじゃあ、ご主人も手を焼いていると思うなあ」

「尻に敷かれていたりして……(笑)」

最初は、私も黙って聞こえないふりをしていましたが、このような話は連帯感を覚えるのでしょう。どんどんエスカレートしていきました。仕事の姿勢が「頑固」ということならば、聞き流すこともできたのですが、家庭生活の話に及び、聞くに堪えられなくなって、

「頑固というけれど、彼女は真面目なのよ」

肯定的な表現に言い換えて、フォローしたつもりでいたのですが、

「そういう臼井さんこそ、頑固よ」

(今度は、私がターゲットなの?)思わぬ展開に驚くばかり。言葉を失ってしまいました。さすがに私が血祭りにされることはありませんでしたが、嫌悪感が残りました。

まず「話題」を変える

悪口の輪に巻き込まれたら、聞こえないふりをしている、関心がないという姿勢でいるというのが基本です。そしてある程度のタイミングで、話題を変えてみましょう。悪口を言っている人たちや、悪口の対象とは関係のない話題が好ましいです。

「そんなことよりも、夏休みの予定、決まった?」とか、同僚や後輩ならば「今度の会議だけど……」と、まったく違う話にふることができれば最善です。とにかく少しでも早く、その話題から抜け出すための気配りをしましょう。それでもうまく抜け出すことができなければ、トイレに立ったり電話をかけに行くなど、その場を離れる工夫をします。

戻ってもまだ、その話題で盛り上がっていたら、「急なアポイントが入った」とか、「会社から呼び出しがあった」など、適当な理由を付けて立ち去ります。

自分の悪口に遭遇したら

オフィスの廊下やトイレ、なじみのお店などで、知り合いの人が自分の悪口を言っているところに遭遇することもありえます。実際、オフィスの給湯室の横を通りかかったら、自分の悪口が耳に入ってきたという友人や、行きつけの飲み屋で背中越しに、自分の悪口で盛り上がっている後輩たちの声が聞こえたという人もいます。

そんな時の基本は、「聞き流す」。反論すればより激しく攻撃してくるかもしれません。おおらかにしていましょう。

でも聞き流すなんてできない。ひと言でも、言い返したいと思うのも人情です。そこで、私でしたら、にっこりと相手に近づき、「私のことをそんなふうに思っていたの? 残念だわ」、あるいは「そうなんだ……、ごめんなさい」と言って、その場から離れます。

あとは堂々としていたら、相手のほうが気まずくなり、悪口は止みます。悪口を言う人というのは、相手から返答されない安心感や、悪口仲間のつながりを意識することに醍醐味を感じているものですから、返答されると困ってしまうのです。

悪口で傷つかないために

悪口を言うというのは、そもそも品のない行為です。ですから、傷ついてしまわないように「品のない人だから、しょうがない」と割り切るのも一つの方法です。

また、物事の捉え方は人それぞれですから、「私は、そう思われることもあるんだ」と受け止めてもいいでしょう。それが自分でも改善したいと思うところならば、直す努力をしてみましょう。

誰にでも短所はあります、受け止め方で短所は長所にもなりますし、長所も短所になります。

(例)
きちょうめん(長所) → しゃくし定規(短所)
気配り(長所) → お節介(短所)
柔軟な思考力(長所) → コロコロと変わって扱いにくい(短所)

誰にでも好かれるという人は、本当はいません。好かれているように見えても、「八方美人」とか「お調子者」と、どこかでは嫌われているのが人間です。ですから、悪口を言われたということで、落ち込む必要はありません。悪口を言う人は、自分が嫌だ、気に入らないと思ったことを他人に肯定してもらわないと気が済まない、自信のない人ともいえます。

それよりも、冷静に考えて間違ったことはしていないと思えるなら、自分を大切にして私を分かってくれる人はいると柔軟にとらえましょう。悪口を言った人はスルーして、他の人たちと信頼関係を築けばいいのです。

「悪口なんて、いい大人はしない」と思うでしょうが、無意識に「悪口の首謀者」になっていたり、「意見するつもりが悪口に受け取られる」ということも考えられます。言ったことは戻せません。「ひと言の重み」を充分理解しながら、豊かな人間関係を構築していきましょう。

 「臼井流最高の話し方」は水曜更新です。次回は9月14日の予定です。

[2014年8月20日公開の日経Bizアカデミーの記事を再構成]

臼井 由妃(うすい・ゆき)
1958年東京生まれ。健康プラザコーワ、ドクターユキオフィス代表取締役。理学博士、健康医科学博士、MBA、行政書士、宅地建物取引士、栄養士。33歳で結婚後、病身の夫の後を継ぎ会社経営に携わる。次々にヒット商品を開発し、独自のビジネス手法により通販業界で成功をおさめる。日本テレビ「マネーの虎」に出演。経営者、講演者、経営コンサルタントとして活動する傍ら、難関資格を取得した勉強法も注目される。ビジネス作家としても活躍。著作は50冊を超える。

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