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個人型DC、知っておきたい10の疑問 大きな節税効果も

2016/9/3

 個人が毎月掛け金を出し、運用次第で老後の年金が変わる個人型確定拠出年金(DC)。法改正で来年から現役世代の大半の人が使えるようになる。大きな節税効果があるが、制度の仕組みはあまり知られていない。賢く活用するうえで知っておきたい10のポイントをまとめた。

 「来年から個人型DCの積み立てを再開できる」。都内の会社員A子さん(42)は法改正を喜ぶ。個人型DCに加入できるのは現在、自営業者や企業年金のない会社員などだ(Q1参照)。A子さんはかつて個人型に加入していたが、3年前に転職した今の会社は確定給付型の企業年金があるため加入から外れている。

 この場合、新たに掛け金は出せず、資産の運用だけを続ける「運用指図者」になる。個人型DCの大きな利点は掛け金が全額、税金計算の対象から除外され、その分の所得税や住民税が減ること。運用指図者はこうした節税メリットがない一方、年間数千円の口座管理費用はかかり続ける。3月末で47万人もいる。

■再加入手続きを

 法改正で来年から企業年金のある会社員や主婦、公務員にも加入対象が広がる。運用指図者も大半は積み立てを再開できるので、忘れずに再加入の手続きをしよう。

 ただし会社が原則的に掛け金を出す企業型DCを導入している企業の会社員は、必ずしも個人型に加入できない。会社が企業型で拠出している掛け金を一定の金額以下に下げる規約変更が通常必要だからだ。ファイナンシャルプランナー(FP)の山崎俊輔氏は「企業型の掛け金を減らして個人型に切り替えると退職給付制度を再設計することになるので、規約変更をする企業は少なそうだ」とみる。

 「せっかく期待していたのに」と浮かない顔なのは高松市の女性会社員B子さん(54)。個人型の掛け金は最低月5000円で、預金も対象(Q2、3)と知って金融機関に相談したところ「収入が少ないので、メリットが小さいと言われた」と話す。

 掛け金拠出による節税額は概算で「掛け金の額×税率」(Q4)となる。B子さんの年収は250万円で、税率は所得税5%と住民税10%の計15%。月5000円ずつ年6万円の預金をすれば節税額は9000円だ。B子さんが相談した金融機関は口座管理費用が年7000円弱で、確かに節税効果の多くが消える。

 しかしこの金融機関の説明はやや不親切な面がある。掛け金を増やせば、節税効果は高まるからだ。実はB子さんはすでに別の銀行の一般口座で月2万~3万円ずつ預金している。節税のメリットがない一般口座での積み立てをやめて、個人型DCに上限の月2万3000円(年27万6000円)を拠出すれば、年4万1400円の節税になる。中央労働金庫など一部の金融機関のサイトでは、年収や掛け金額を入力すれば節税効果が簡単に試算できる。

 掛け金の額は年に1度変更できる。住宅ローンの返済額を増やす方が有利な場合などは下げる手もある。「掛け金はなるべく多く出す」のが大原則だが、家計の状況によって賢く増減したい。加入者が途中で亡くなれば、遺族に資産が支払われる(Q5)。

■管理コスト比較

 ただ個人型DCは10年以上の加入でも60歳からしか受け取れないし、加入期間などが短いと最大65歳まで後ずれする(Q6)。教育費など途中で使うお金は、個人型以外の口座を使うのが原則だ。

 B子さんが個人型DCの効果を上げる2つ目の方法は別の金融機関を選ぶこと。金融機関により口座管理費用や投資信託の品ぞろえは千差万別だ(Q7)。例えばスルガ銀行やSBI証券(資産50万円以上)を選べば、口座管理費用は年2004円ですむ。

 投信で運用する場合、長期になるほど信託報酬の影響が口座管理費用の差より大きくなる。低コストの投信が多いのは野村証券、SBI証券、りそな銀行などだ。9月下旬に参入する楽天証券も口座管理費用、投信コストともに最低水準になる。確定拠出年金教育協会のサイト「個人型確定拠出年金ナビ」では、各社の口座管理費用や投信のコストを比較できる。

 金融機関は途中で変更できる。変更に1~2カ月かかることも多いが、割高なコストを長期的に払い続けるよりお得だ。個人型DCは基本的に郵送・ネットで手続きができ、質問があればコールセンターなどが答えてくれる。地元の金融機関で加入する必要性は少ない(Q8)。

 掛け金の節税額について、所得税は年末調整または確定申告での還付が多い。住民税は翌年の住民税が本来払う額より少なくなる(Q9)。年末調整の還付はつい使ってしまいがちだし、住民税がどれだけ減ったのか意識する人は多くないだろう。FPの福島えみ子氏は「節税額を自分で把握し、その分をためていくのが大事」と話す。(編集委員 田村正之)

■一時金でもらうと有利なケース多い
 個人型DCで形成した資産を一時金でもらう場合は退職所得控除、年金でもらうなら公的年金等控除の対象(Q10)になる。ただどちらも個人型DC単独の控除枠ではなく、基本的に企業の退職金や公的年金と共通だ。退職金や公的年金が多ければそれで控除枠を使い切り、個人型DCに税金がかかる。
 「退職所得控除の枠を超える場合でも一般的に一時金の方が有利」と税理士の柴原一氏は話す。一時金は税金の計算上金額が半分になる一方、年金でもらうと毎年の所得が増えて健康保険料など他の負担が重くなりやすい。ただ人によって最善のもらい方は異なるので、税理士など専門家に相談するのも手だ。

[日本経済新聞朝刊2016年8月31日付]

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