4Kブルーレイプレーヤー 今買うなら?
2016年6月に本格的な国内販売がスタートした4Kブルーレイコンテンツ「Ultra HD Blu-ray」(記事「4Kブルーレイ登場、解像度だけじゃない進化点」参照)。販売好調な4Kテレビの実力を楽しむには最適なソフトといえるが、その再生には対応ハードウエアが必要だ。現状ではどんな選択肢があるのだろうか。
現時点で対応プレーヤーは3機種のみ
「Ultra HD Blu-ray」(UHD BD)を再生できるプレーヤーはまだ少ない。海外ではサムスン電子の「UBD-K8500」やフィリップスの「BDP7501」といったモデルが発売されているが、日本国内ではパナソニックが15年11月に発売したUHD BD再生対応ブルーレイレコーダー「DMR-UBZ1」、同じくパナソニックが6月に発売した「DMP-UB900」、7月に発売した「DMP-UB90」の3モデルのみ。ちなみにDMR-UBZ1は4K放送の録画には対応していない。DMP-UB900とDMP-UB90は再生専用だ。
サムスン電子は日本国内ではスマートフォン「Galaxyシリーズ」を展開する程度で家電製品は以前に撤退しており、フィリップスもAV機器については日本国内で基本的に販売していない(スピーカー、ヘッドホンなどのオーディオ製品は販売している)。国内でパナソニック以外のメーカーからプレーヤーがいつ登場するかは未知数だ。
気になるのはAV機器業界ではパナソニックと覇権を争っているソニーの動向だろう。同社の関連会社であるソニー・ピクチャーズエンタテインメントは積極的にUHD BDタイトルの普及に務めている。なのにプレーヤーが一向に出てこないというのは不自然だろう。
未確認ではあるものの、16年秋に発表されると噂されている次世代PlayStation 4(噂では「PS 4K」、「PS 4.5」「PS NEO」などと呼ばれている)は4K出力に対応し、UHD BDの再生も可能になるといわれている。過去を見るとDVDの普及には00年に発売された「PlayStation 2」(世界初のDVDプレーヤーは1996年に登場)、Blu-ray Disc(BD)の普及には06年に発売された「PlayStation 3」(世界初のBDプレーヤーも06年に登場)が大いに寄与している。次世代PlayStation 4にUHD BD再生機能が搭載されたら、普及に弾みが付くのは間違いないだろう。
次に、現在発売されている3機種の特徴について解説する。
4K映像を手軽に味わいたい人向けの入門機「DMP-UB90」
現状で最も手軽にUHD BDを楽しめるのが、16年7月に発売されたUHD BDプレーヤーの「DMP-UB90」だ。ディスクに記録された4K映像を高画質でデコード(復元)する独自の4K対応エンジン「4Kリアルクロマプロセッサ」を搭載。ハイレゾ音源などを保存したUSBメモリーを本機に接続すれば、音楽再生も楽しめる。大手家電量販店での実勢価格は税込み7万1080円(16年8月28日、ネット店での販売価格を調査。以下同)。BDやDVDも再生できる。ただし録画機能はない。
4Kの高精細映像と高音質を楽しむ「DMP-UB900」
UHD BDの高画質だけでなく、さらに高音質で味わいたいという人にオススメなのが、2016年6月発売のUHD BDプレーヤー「DMP-UB900」だ。「DMP-UB90」の上位モデルという位置づけになる。UB90に搭載している4K対応エンジン「4Kリアルクロマプロセッサ」をさらに拡張した「4Kリアルクロマプロセッサplus」を搭載。4K映像の輝度信号と色信号を画素単位で分析・補正し、鮮鋭感や精細感を自在に調整する「4K超解像」機能を備えている。画質面では次に紹介する「DMR-UBZ1」と同等のクオリティーを実現している。
また、ハイスピード大容量電源や各種高音質パーツなど、高音質技術も搭載。音声信号と映像信号の分離出力が可能な2系統のHDMI出力端子や、アナログ7.1chオーディオ出力端子も備えている。大手家電量販店での実勢価格は13万8240円。
4Kを楽しみながら地デジやBSも録画したいなら「DMR-UBZ1」
画質も音質も徹底的にこだわりたい、さらには地デジやBSも録画したいという人にオススメなのが、15年11月に発売されたUHD BD再生対応ブルーレイレコーダー「DMR-UBZ1」だ。3チューナーに3TB HDDを搭載しているので、地デジやBS、CS放送を録画できる(ただし4K放送の録画には非対応)。
画質面ではほぼDMP-UB900と同等だが、音質面ではそれ以上にさまざまなこだわりを見せている。不要な振動を抑える「4層構造ベースシャーシ」や剛性強化・振動低減を図る「センターフレーム構造」、高音質パーツなどを採用し、高級オーディオアンプなどで採用されているバランス音声出力端子も搭載している。画質も音質も追求したい人向けのモデルだ。大手量販店での実勢価格30万8660円。
「コンテンツを所有できる」のはVODにはない魅力
以上、2回に分けて4Kブルーレイについて解説してきた。
「これ以上画質がよくなっても意味がないのでは?」――これは新規格、新フォーマットが登場するたびに議論されることだ。
VHSからDVDに移行したときは、テープメディアからディスクメディアへの移行ということもあって、画質だけでなく、「面倒な巻き戻しが不要」「頭出しが簡単になった」など、取り扱いのしやすさも大きく向上した。しかしDVDからBDへのときと同様、BDからUHD BDへの進化では使い勝手に大きな変化はない。
とはいえ、DVDとBDの画質の違いは誰が見ても一目瞭然であるように、BDとUHD BDにも多くの人がハッキリと感じられるほどの違いがある。以前の記事(「好調4Kテレビ コンテンツの本命は放送よりVODか」)で、4Kテレビは地デジやBDなどを超解像化(高解像度映像に変換すること)するため、フルハイビジョンテレビに比べきれいな画質を楽しめると書いたが、超解像技術で4K化したBDとUHD BDを、横並びで映像を比較してみても、その差はしっかりと感じられた。
UHD BDはまだ決してコンテンツは豊富ではないし、プレーヤーも気軽に買える価格帯でもない。4K VODサービスが充実してきた現在、4Kコンテンツを視聴できる唯一のメディアというわけでもない。しかし、CDやDVD、BDなどと同様、「コンテンツを所有できる」のはVODにはない魅力だ。好きな映画をできるだけきれいな画質で、何度も何度も見直して思う存分堪能したいという人は、UHD BDプレーヤーを検討してみてはいかがだろうか。
前述の通り、噂レベルだが新型PlayStation 4がUHD BDに対応するといわれている。それが事実かどうか、価格帯がどの程度になるのかは不明だが、現状で国内で購入できるUHD BDプレーヤーは7万円以上もすることを考えると、UHD BD再生だけでなく超高精細な最新ゲームも楽しめるのであれば、8万円前後であっても高くないのではないか。「興味はあるけど、まだソフトも少ないし……」という人は、新型PlayStation 4の発表を待ってから考えてもいいかもしれない。
(IT・家電ジャーナリスト 安蔵靖志)
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