道具要らず インテリアにもなる女性向けプラモデル

日経トレンディネット

ディズニー映画に登場する城をモチーフにした「キャッスルクラフトコレクション」シリーズ。中央は、2016年7月発売の新製品「シンデレラ」、左は「リトル・マーメイド」、右が「アナと雪の女王」
ディズニー映画に登場する城をモチーフにした「キャッスルクラフトコレクション」シリーズ。中央は、2016年7月発売の新製品「シンデレラ」、左は「リトル・マーメイド」、右が「アナと雪の女王」
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玩具メーカー大手のバンダイは2016年、同社で初となる女性向けのプラモデルを発売し、新たな市場の開拓に乗り出した。「カワイイ」をコンセプトにすると、プラモデルにまったく縁のない女性でも興味を示すという。手づくりホビーが広がるなか、「モケジョ」(=模型女子)を中心に、女子のプラモ遊びが人気を集めるかもしれない。

成熟する国内プラモデル市場で、手つかずの女性需要を狙う

国内プラモデル市場で、これまでバンダイが手つかずだったのが女性層だ。「大きな市場になるかは未知数」(バンダイ ホビー事業部 グローバルプロモーションチームの所 学さん)だが、2015年あたりから新たな動きもみられる。ガンダムの劇中に登場するおなじみのキャラクター「アッガイ」を原点とする新キャラクター「プチッガイ」を商品化したところ、アンケートでの女性からの高評価に手応えを感じたという。16年は、ミルクホワイトとチャチャチャブラウンの2色を展開。今後も新色を出していく予定だという。

接着剤を使わずに組み立てられる「プチッガイ」(実売価格は380円前後)
こちらがプチッガイ誕生の原点となる「アッガイ」というキャラクターのプラモデル。『機動戦士ガンダム』第1作に登場し、ガンダムファンにはおなじみのキャラクターだ(画像提供:バンダイ)

プチッガイは接着剤を使わずに組み立てることができ、プラモデルの初心者にも作りやすい。完成すると手足が動くのでポーズをつけたり、あるいは色を塗ったりデコったりと、好みのアレンジも可能だ。「プラモデルって組んでみるとすごく愛着が沸く。やはり“完成品ではない”ところがプラモデルの一番の魅力でしょう。ホビークラフトを楽しむ女性を狙っていきたい」と所さんは意欲をみせる。

“インテリアにもなるプラモデル”を女性向けに

バンダイは、2016年に初めての「女性向けプラモデル企画」を発売した。ディズニー映画に登場するプリンセスたちの舞台となるお城をモチーフにした「キャッスルクラフトコレクション」シリーズで、ターゲットはディズニー好きの女性。購入客は、プラモデルに初めて触った人がほとんどだが、満足度は予想以上に高いという。ただし、通常の模型店には女性はまず足を運ばない。ホビー事業部で新しいターゲットに向けた企画を担当する三宅のぞみさんは、「女性向けプラモデルは、女性が立ち寄るような店に置くこともポイント」と語る。

同シリーズの「シンデレラ」と「アナと雪の女王」の城はLEDを内蔵しており、夜はほのかに光らせて飾ることもできる。「ガンプラが、男の子にとって劇中のポーズをかっこよくとらせたい!とガシガシ遊ぶものだとすると、女性向けプラモデルはインテリアにもなるかわいさが1つの売り」。三宅さんはアプローチの違いをこう説明する。完成後にキラキラとデコレーションするなどし、さらに自分だけのカワイイを追求できれば、満足度はなお高まる。

ファンタジーの名作に登場する城を、組み立てながらリアルに再現する「キャッスルクラフトコレクション」シリーズの新作「シンデレラ」。全高約21cm(画像提供:バンダイ)
城の中をのぞくと、舞踏会へ続く階段にシンデレラが落とした“ガラスの靴"が見える。物語を象徴するイメージをも再現し、細部にまでこだわった(画像提供:バンダイ)
内蔵するLEDライトをつければ、窓から光がもれる「夜のシンデレラ城」を再現。小物やアクセサリーと並べて飾るとかわいい(画像提供:バンダイ)

ガンプラ開発で重ねた技術から生まれた「女性向けプラモデル」

プラモデルはかつて接着剤が不可欠で、少年時代にプラモも手もギトギト、ベタベタに汚して夢中になって作った読者諸兄も多いと思う。だが、今では接着剤を使わずにパーツ同士をパチッとはめるだけで組み立てられる「スナップフィット」と呼ぶ技術を用いたプラモデルに進化した。嵌合(かんごう)が極限まで調整されており、パチッとはめると基本的に離れない。パーツ同士の組み合わせに接着剤が要らず、ストレスなく組めるのが特徴だ。また、ニッパーのような工具を使わずに枠からパーツを手でもいで外せる「タッチゲート」と呼ばれる技術を採用したプラモデルも開発された。刃物を使わないので、子どもにも危なくない。

パーツは枠から手で簡単に外せる(画像提供:バンダイ)
よく見ると、パーツの枠はシンデレラの物語を連想させる「かぼちゃ」のデザイン。細かいところまで「カワイイ」が盛り込んである(画像提供:バンダイ)

接着剤を使うことなく、プラモの城が組み上がる(画像提供:バンダイ)

こうしたさまざまな工夫によって、プラモデルになじみのない初心者でも“パズルのような感覚”でストレスなく組むことができるようになったのだ。2016年7月発売の新作「シンデレラ」もこんな具合だ。

「モケジョはかっこいい!」のトレンドは来るか

プラモデルで女性市場を開拓する推進力となる要素として三宅さんが挙げるのが、女性のアクティビティに見られる昨今の変化だ。ホビークラフトを楽しむ女性たちの輪が広がりをみせている。道具を使って偽物のお菓子を作る「スイーツデコ」の流行や、プラモデルが趣味という「モケジョ」の増加に注目する。メディアに取り上げられた「モケジョが集うサークル」はバンダイ主導ではなく、自然発生的な活動だそうだ。

プラモ好きの「モケジョ」の存在が話題になり始めたのは5~6年前というから、ちょうど「歴女」や「囲碁ガール」「アウトドア女子」などが大量に出現した時期と重なるようだ。メディアが取り上げてブーム化すると、囲碁なら「入門グループは女子校状態」になる。

歴史や囲碁が好きな女性はブーム以前から当然いるわけで、その子たちがのちのブームの核となる。同じように、ガンダム好き、プラモ好きの女性も少なからず潜在する。人口減や少子化の影響で国内市場が縮小するなか、そのことにメーカーが気づき、女性の潜在需要を開拓することは必須だろう。

「○○女子」には市場を動かす潜在需要のヒントがあるし、ひいては「~好き」にはオンナもオトコもないのだ。そのうち、「ガンプラをぎっしり並べて暮らす女はかっこいい!」……とリスペクトされる日が来るかもしれない。

(ライター 赤星千春)

[日経トレンディネット 2016年8月8日付の記事を再構成]