わかりやすい解説本『フィンテック』が八重洲で人気
八重洲ブックセンター本店
フィンテックビジネス街の書店をめぐりながらその時々のその街の売れ筋本をウオッチしていくシリーズ。今週は定点観測に戻り、八重洲ブックセンター本店を訪れた。お盆休みで人の流れも少なく、全般的に本の動きも低調だったようだが、「この1冊ですべてがわかる」とうたうフィンテックの解説書が発売直後から快調に売れ行きを伸ばしているという。
上司の質問にうまく答えられる本!?
その本は柏木亮二『フィンテック』(日経文庫)。文庫というシリーズ名だが、新書判の本だ。255ページというコンパクトな中身ながら、帯に書かれた「すべてがわかる」という触れ込みが受けたのか、「幅広い層にコンスタントに売れている」とビジネス書売り場を担当する2階フロア長の木内恒人さんは話す。
手にとってみると、前書きに示された本書の構成がきわめてわかりやすい。「上司から『フィンテックって何?』と聞かれたときに、その質問の内容に応じてうまく答えられるような構成になっています」というのだ。「フィンテックって最近よく見るけど、何で注目されてるの?」と上司に聞かれたときは第1章を読んでおけばよい。「フィンテックってどういう意味?」と聞かれたときは第2章で、「フィンテックの具体的なサービスってどんなものがあるの?」という質問には第3章で答えられる。と、こんな具合だ。
フィンテック関連本は今年初めから出版ラッシュの様相で、入門書的なものから専門性の高いものまでいくつも出ているが、本書はいくぶん後発気味のため少し乗り遅れた人にわかりやすい見取り図と知識を提供することに成功しているようだ。第3章までなら、金融業界以外の人に最低限の知識を教えてくれるし、4章以降では金融ビジネスの実務への影響やどう対応すべきか、フィンテックのさらなる進化への展望にも視野を広げており、金融業界の人が考えるベースをも提供してくれる。著者は野村総研の金融ITイノベーションの専門家だ。
営業の成功物語がロングセラーに
それでは、いつものように先週のベスト5を見ていこう。
2階からのエスカレーターの降り口に特設の平台を設けた
1位と2位は著者や版元関係のまとめ買いでランクインした本。3位は5月のリブロ汐留シオサイト店のランキングにも顔を出した。営業の最前線のサクセスストーリーだが、リアルな現場の苦労や工夫が伝わってくる元気の出るストーリー性がロングセラーになっている。題材になっているビールという商品が夏向きということもあって版元も様々な書店で販促展開を強めており、八重洲ブックセンター本店でも1階に特設の平台を設置するなどのしかけが好調な売れ行きにつながっている。同店では必ず売れる長谷川慶太郎氏の本も8月初めに新刊が出て4位に食い込んでいる。冒頭に紹介した『フィンテック』は発売2週目で5位にランクインだ。
(水柿武志)