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海外資産で利回り確保 長期運用で回復力高く

2016/8/28

 金融商品で魅力ある利回りを求めると、おのずと海外の資産に目が向く。投資の初心者にはハードルが高そうだが、利回りの高い資産で長期運用すれば、価格下落のリスクはあまり気にしなくてもよさそうだ。

 「今は世界中の資産価格が割高なうえ、当面は大幅な上昇も期待薄。個人投資家は(利子や配当などの)インカムゲインを狙うべきだ」。JPモルガン・アセット・マネジメントの重見吉徳グローバル・マーケット・ストラテジストはそう主張する。

 日欧などの大規模な金融緩和が生んだ世界的な金余りが続き、資産価格は高止まりしている。一方、米国をはじめ世界景気に力強さはなく、企業業績の拡大による株価の一段高という強気シナリオも描きにくい。ならば、今はリスクを負って株式の値上がり益を求めるよりも、安定的な利子や配当を確保するのが得策という。

 ただ、インカムゲインの確保も一筋縄ではいかない。超金融緩和で金融商品の利回りは低下、預金はおろか、本来なら安定的なリターンが期待できる先進国の国債も投資妙味は薄い。

 一定以上の利回りがあるのは、海外ハイイールド債(低格付け債)や新興国国債、国内外の不動産投資信託(REIT)など、価格変動の大きそうな資産ばかり(グラフA)。値下がりによる損が怖いという人なら二の足を踏みそうだ。

 これに対してアムンディ・ジャパンの鈴木英典ディレクターは「利回りの高い資産の多くは価格が下がっても回復するのも早い。5年、10年の長期投資なら価格変動を気にする必要はない」と強調する。

■2年で元の水準

 高利回りの資産は本当に価格の戻りが早いのだろうか。そこで、主要な資産について、「100年に1度の世界的暴落」と言われたリーマン危機(2008年)前後の値動きを検証してみた(表B)。

 例えば日経平均株価(月末値ベース)を見ると、リーマン危機前の高値は07年6月の1万8138円で、そこから09年2月の安値(7568円)まで58%下落。その後、15年2月に危機前の高値水準を回復するまで7年8カ月を要した。

 下落率が小さく、回復期間も短いのは国内債券と先進国債券だった。一時的なショックは受けたが、株式市場などからの逃避マネーの流入で価格はすぐに戻った。ただ、残念ながら今は利回りが低すぎて投資対象からは外さざるを得ない。

 注目は新興国債券(ドル建て)と米ハイイールド債だ。高値からの下落率は2~3割強と株式の半分程度。その後の回復も早く、2年前後で元の水準まで戻していた。

 その理由は高い利回りにある。価格下落時には厚い利子収入が損失を穴埋めする役目を果たし、相場の回復局面では、毎年の利子収入が元本に加わって着実にリターンを膨らませる複利効果が生きる。

 同じ理屈は株式やREITにも当てはまる。グラフCは東証REIT指数と、その配当込み指数の推移。配当込み指数とは、受け取った配当を再投資しながら指数に連動する運用をした場合の投資収益を表す。

 結果は歴然で、東証REIT指数が7月末時点でいまだリーマン危機前の高値を下回るのに対し、配当込み指数は11%上回っていた。利子や配当の再投資効果は、運用期間が長くなるほど威力を発揮する。

 一般個人がこれらの高利回り資産を直接購入するのは難しく、投資信託を通じて投資するのが一般的だ。では、どんな投信を選べばいいのだろう。

■国・地域を分散

 利回りの高さで選ぶなら米国ハイイールド債で運用する投信になる。信用リスクの低い企業はデフォルト(債務不履行)が懸念材料だが、「運用担当者が銘柄選別するアクティブ型投信は、市場平均よりデフォルト率は低い」(独立系ファンドコンサルタントの吉井崇裕氏)。しっかりした運用実績のあるファンドを選ぶのが重要になる。

 新興国債券型は個別にみると経済・政治リスクが大きい国もあり、投資先の国・地域をきちんと分散しているかのチェックが欠かせない。運用管理費用(信託報酬)が高めの投信も多く、吉井氏は「低コストのインデックス型投信の中から選べばいい」という。

 JPモルガン・アセット・マネジメントの重見氏が推すのは米国の高配当株式ファンド。業績の先行きや減配の恐れなどが心配になるが、「米国の企業経営者は業績の伸び悩みを自覚しており、自社株買いや高い配当で株価を維持しようとするはずだ」と話す。

 国内外のREITも利回りは高いが、価格のブレが債券などに比べて大きい点を忘れてはならない。

 海外資産への投資で気がかりなのは為替相場の影響だ。急な円高になれば利益は一気に吹き飛んでしまう。そんなリスクを避けるためには為替ヘッジ付きの投信を選ぶのが無難だ。

 グラフDは現地通貨建てと円建て、為替ヘッジ付きの先進国債券指数の値動きを表す。為替をヘッジするにはコストがかかるため、ヘッジ付き指数の上昇率は現地通貨建てに劣るが、円建てのように為替相場の影響で乱高下することはない。ドルの調達難などでヘッジコストは足元で1%台半ばに上昇しているが、高利回り資産ならまだ吸収できる水準だ。

(QUICK資産運用研究所長 北沢千秋)

[日本経済新聞朝刊2016年8月24日付]

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