銀座の高級紳士服 元主婦、夫の借金100億に悪戦苦闘銀座テーラーグループ社長 鰐渕美恵子氏(上)

ただし、私がそんな厳しい商売の世界に身をおくようになったのは44歳からです。それまでは2人の娘を抱えた専業主婦でした。

バブル崩壊とともに営業の最前線へ

専業主婦だった私がビジネスの世界へ足を踏み入れる1つのきっかけは、バブル崩壊でした。当時、銀座テーラーの売り上げを支えていたのは贈答用のお仕立券。バブル崩壊で法人需要が激減するとまず、このお仕立券がまったく売れなくなりました。

「私にはもう売っていく自信がありません」と、それまで売り上げナンバーワンだった営業マンが突然、退社を申し出たのが1991年のこと。営業の最前線にいた彼には、店の経営が苦しくなっていくのが手に取るようにわかったのでしょう。その彼が辞める際、なぜか、社長だった私の夫にこう進言したのです。

「私の後には、奥さんを入れたほうがいいです」

この進言がきっかけで、私は銀座テーラーに入社することになりました。

主人は経営のことはハナから興味がなく、病気になる以前から、財務など面倒なことはほとんど番頭役の専務に任せきりでした。

そんな夫の性格を知っていた義父は会社の行く末を心配し、亡くなる前に、財産の多くをセザンヌやルノアールなどの一流絵画に代えて残しておいてくれたのですが、義父が亡くなると、夫はそれも次々と売り払い、自分好みの現代アートに買い替えていました。

これは後になってわかったことですが、夫はそのころ、絵画投資にも随分とのめり込んでいました。

商才のあった義父はテーラー事業で得た利益を不動産投資に回し、それを別会社として運営していました。そのため、鰐渕家は一時、銀座に多くの貸しビルを所有していたのですが、夫はその不動産を担保にして銀行から多額の融資を受け、オークションで絵画を次々と競り落としていました。

ブックコーナー ビジネス書などの書評はこちら
出世ナビ記事アーカイブ一覧
ブックコーナー ビジネス書などの書評はこちら
出世ナビ記事アーカイブ一覧