4Kブルーレイ登場、解像度だけじゃない進化点
以前、「好調4Kテレビ コンテンツの本命は放送よりVODか」で「4Kテレビが好調」と紹介したように、4Kテレビの普及に拍車がかかっている。GfKジャパンの調べによると、2016年5月のテレビ市場全体における4Kテレビ販売金額構成比は約49%だが、家電量販店に絞ると同51%で、初めて半数を超えたという。
その背景として、衛星放送やVOD(動画配信サービス)での4Kコンテンツ提供が増えたこと、4Kテレビの認知が向上したことなどが挙げられる。
そんななか、いよいよ"4Kブルーレイ"の販売がスタートした。冒頭で紹介した記事の中で筆者は「4Kコンテンツの本命はVODになるのではないか」と書いたが、4Kブルーレイは4Kコンテンツの"対抗馬"の1つといえる。
高画質・高音質で映画などのコンテンツを楽しめる
4Kブルーレイの正式名称は「Ultra HD Blu-ray」で、「UHD BD」などとも呼ばれる。CDやDVD、ブルーレイ・ディスクなどと同じ、直径約12cmのディスクメディアだ。記録容量は片面2層で最大66GB、片面3層で最大100GB。従来のブルーレイに採用されている「MPEG-4 AVC/H.264」に比べて約2倍程度の圧縮効率を実現した映像圧縮方式「HEVC/H.265」によって4K(3840×2160ピクセル)の映像を記録する。
4Kブルーレイの大きな魅力は、「高画質」と「高音質」、それに加えて「安定性」にある。
「好調4Kテレビ コンテンツの本命は放送よりVODか」に書いたとおり、4Kコンテンツの主流は4K VODになると見られている。理由は「最新4Kテレビのほとんどが4K VOD(インターネット経由で4K映像を視聴できる動画配信サービス)視聴機能を搭載している」「パッケージメディアに比べてコンテンツを流通しやすい」からだ。
しかしVODにも大きな弱点がある。視聴する場所のインターネット環境に左右されるという点だ。
光インターネットサービスなどの高速インターネット接続環境があれば問題なく視聴できる場合が多いものの、速度によっては画質が落ちてしまうこともある。その点、UHD BDはディスクメディアに映像・音声を記録しているため、インターネットなどの外部環境に左右されずに安定して高画質・高音質を存分に味わえる。
また、「話題になった映画などを見る場合はレンタルやVODで十分だが、気に入った映画だけは手元にディスクで残したい」という人も少なくないのではないだろうか。そういった人には、UHD BDが最適といえる。
UHD BDの特徴は3つ
UHD BDは、最初に紹介したように、ブルーレイが採用するフルハイビジョン(1920×1080ピクセル)の4倍の解像度を持つ4K(3840×2160ピクセル)の映像を記録できる。4Kテレビが普及し始めている今、ようやくディスクメディアの解像度がテレビの解像度に追い付いたことは好ましいことだ。しかし、「解像度」は、3つあるUHD BDの進化ポイントのうちの1つにすぎない。
UHD BDは、従来のブルーレイに比べ、解像度にくわえて、「高コントラスト化」「広色域化」という点でも進化しているのだ。
解像度と同様に、映像の臨場感や立体感が増す効果を発揮するのが「高コントラスト化」だ。UHD BDには、光り輝くような高輝度映像を記録できる「HDR(ハイダイナミックレンジ)」と呼ばれる規格が採用されている。最新の4KテレビにもHDR規格対応モデルが増えており、HDR対応テレビならUHD BDの高コントラスト映像をより楽しめるようになっている。
従来のブルーレイなどに採用されている「SDR(スタンダードダイナミックレンジ)」と呼ばれる規格では、最大100ニット(輝度の単位)までしか記録できなかった。しかしHDRでは最大1万ニットまで記録できる。波間に反射してきらめく太陽の光や、夜のキャンプファイアーなど、まぶしくて目を細めてしまうような映像表現が可能になった。効果が得られるのはコントラストの高い映像だけではない。より細かい輝度表現が可能なため、通常の映像でも解像感がアップしていることが実感できるはずだ。
「広色域化」については、地デジやブルーレイなどに採用されている「BT.709」と呼ばれる色域に比べて、大幅に色再現範囲が広がった「BT.2020」が採用されている。光の3原色のうち赤と青はBT.709でも再現性は比較的高かったのだが、緑はあまり高くなかった。BT.2020では緑方向の再現性が高まっているため、森の緑や、エメラルドグリーンの海などの再現性がさらに上がっている。解像度やコントラストの向上に比べると効果は限定的かもしれないが、環境映像などを楽しみたい人には注目したいポイントの一つだ。
どんなコンテンツがそろっているの?
4Kブルーレイコンテンツの国内販売は2016年6月に本格スタートした。現在はハリウッド映画タイトルを中心に充実し始めている。
ソニー・ピクチャーズ エンタテインメントは『アメイジング・スパイダーマン2』や『ハンコック』、20世紀フォックスは『エクソダス:神と王』や『X-MEN:フューチャー&パスト』、ワーナー・ブラザース・ホームエンターテイメントは『マッドマックス 怒りのデス・ロード』や『クリード チャンプを継ぐ男』など、合わせて20を超えるタイトルが発売および発表済みとなっている。DVDやブルーレイなどと比べるとまだまだ少ないが、公開されたばかりの人気タイトルが多い点には注目したい。
もう1つ特徴的なのが、「4K ULTRA HD&ブルーレイセット」という2枚組、3枚組のタイトルが多いことだ。これは4Kブルーレイだけでなく、ブルーレイ(フルハイビジョンの従来ディスク)が付属している。こうした戦略はDVDからブルーレイへ移行する過渡期にもあった。「最新映画のブルーレイが欲しいけど、4Kじゃないブルーレイを買うのはもったいない」という人には朗報だ。現状ではまだ4Kブルーレイプレーヤーは決して安くないため、安くなるまで待ちたいという人も多いことだろう。しかし、それまで見たい映画の購入を我慢するのもストレスだ。「4K ULTRA HD&ブルーレイセット」なら、まずはブルーレイで視聴し、しばらくして4Kブルーレイプレーヤーを購入したら4Kで見るといった使い方ができる。
◇ ◇ ◇
もちろんUHD BDを再生するには専用のプレーヤーが必要になる。現在、どのようなプレーヤーが発売されているのか。次回(「4Kブルーレイプレーヤー 今買うなら?」)は、4Kブルーレイを楽しめるプレーヤーを紹介しよう。
(IT・家電ジャーナリスト 安蔵靖志)
ワークスタイルや暮らし・家計管理に役立つノウハウなどをまとめています。
※ NIKKEI STYLE は2023年にリニューアルしました。これまでに公開したコンテンツのほとんどは日経電子版などで引き続きご覧いただけます。
関連企業・業界