高価なハイエンドモデルを買わなくても手持ちのスマートフォン(スマホ)を使ってVRコンテンツを楽しめる環境が急速に広がってきている。アマゾンや家電量販店の一部の店頭には、スマホ対応のVRヘッドセットがずらりと並ぶ。価格は1000円台から1万円台と値頃なものばかりだ。どれもスマホに表示したVRコンテンツをレンズを介して見る仕組み。性能はそれほど変わらないように思えるが、実は製品によって使い勝手が大きく異なる。
快適に使うためにまず必須なのが、スマホのジャイロセンサー機能だ。主流のスマホであればほぼ問題ないが、古いタイプや低価格モデルのなかには非搭載のものもある。
「スマホモデル」のヘッドセット選びで重要なのが中に入れたスマホをどこまで操作できるか、だ。ヘッドセットにスマホを入れたまま、多くの操作ができるかどうかが使い勝手を大きく左右する。全く操作できないものは、その都度ヘッドセットからスマホを取り出さなければならない。
また、ゴーグル部の幅が狭く、眼鏡の上から装着できないヘッドセットもある。その場合は、裸眼でもピントを調節できるような「視度調節」機能が重要になる。
レンズ間の距離を調節できるかどうかもポイントの一つだ。両目の瞳の間隔は人によって異なる。ヘッドセットのレンズの左右位置の調節できる機能があれば、より鮮明なVRコンテンツを見られるようになる。
群を抜いて優れる“没入感” タッチパッドでの操作も可能

サムスン電子ジャパン 実勢価格1万4690円(税込み)
最も高い没入感を味わえるのが、スマホのギャラクシーシリーズ(S6/S6エッジ、S7エッジ)に対応したサムスン電子ジャパンの「Gear VR」だ。同社とVRヘッドセットメーカーのオキュラスVRが共同開発したモデルだけあり、VRのクオリティは群を抜いて高い。
オキュラスリフトと同じホーム画面を備え、専用のコンテンツも数多くそろえる。秀逸なのが本体右側に配置したコントロール部。指先でなぞったりタップするだけで、メニューの操作が可能だ。スマホをいちいち取り出すことなく、VRコンテンツを自在に次々と選べるのは他にない優位点。実勢価格は1万4690円(税込み)と高額な部類に入るが、ギャラクシーユーザーであればまず選ぶべきモデルといえる。
手を動かして専用アプリを操作 ヘッドホン搭載など機能も充実

メガハウス 予想実売価格9250円(税別)
iPhoneやアンドロイドでも使える汎用性が高いモデルのうち、“思わぬ伏兵”だったのが「ボッツニューVR」(予想実売価格9250円・税別)。玩具メーカーのメガハウスが発売するVRヘッドセットの第2弾で、視度調節やレンズ間調節に対応するだけでなく、ヘッドホンも搭載するなど、“初代”よりも機能が格段に向上している。
特筆なのが独自のARマーカー機能。両手に持った専用コントローラーの動きをスマホのカメラで検知し、ジェスチャー操作でVRゲームなどを楽しめるようになる。前方から飛んでくるアイテムを手でキャッチしたり、敵に銃を向けて撃ち倒したりするなど、他のスマホモデルではできない、体を使った操作が可能だ。専用サイトを用意し、独自コンテンツが充実していることも評価できる。
段ボール製でコスパ抜群 手軽なVR体験にうってつけ

ハコスコ 実勢価格1296円(税込み)
税込み1296円と安く、コストパフォーマンスに秀でるのがハコスコが発売する「ハコスコ タタミ2眼」だ。段ボール製の組み立て式ヘッドセットで、使わないときは折りたたんで持ち運べる。思わず膝を打つのが右目用レンズの下に開いたスマホ操作用の穴。アナログではあるが、ここから指を入れてスマホの画面を確実に操作できる優れたアイデアといえる。シンプルな構造で視度調節やレンズ間調節には対応しないが、手軽にVRを体験するには十分だ。
ハコスコでは、360度の動画や静止画をスマホやパソコンで見られるオンライン共有・配信サービス「ハコスコストア」の他、スマホ用アプリ「ハコスコアプリ」なども公開。アーティストやアイドルが登場するVRビデオから、一般ユーザーが投稿した360度映像まで、さまざまなコンテンツを手軽に楽しめるようになっている。
左右別々にレンズの視度調節が可能 幅広いバンドで装着感に優れる

InfoLens Inc. 実勢価格1万580円(税込み)
バンドの幅が広く形状が工夫されているため、フィット感が高いヘッドセット。ピント調節を独立して行えるので、左右の視力が異なる人にも向きそうだ。レンズ間調節も可能だが、使用中の画面操作は不可。
ピント調節など機能は標準的 6000円台の手頃な価格が魅力

ハコスコ 実勢価格6450円(税込み)
「STEALTH VR VR200」と構造が似ている。フィット感は高めでレンズ間調節も可能だが、ピント調節は左右同時に行う。画面操作はできないが、標準的な機能を搭載しながらも6000円台という価格は魅力だ。
スマホ画面を“疑似タッチ” Googleの紙製ヘッドセット

ハコスコ 実勢価格1620円(税込み)
Googleが提供している段ボール製ヘッドセットの設計をハコスコがアレンジしたもの。スマホを入れた際のカメラ穴と、操作用の穴が追加されている。右側面のボタンを押すと導電性の突起が飛び出てスマホの画面をタップできる仕組み。
ワンタッチでスマホを外せる300g弱の超軽量モデル

Proteus VR Labs. 予想実売価格1万3800円(税別)
板を貼り合わせたようなユニークな形状のモデル。セットしたスマホをワンタッチで外せる他、295gとスマホ対応のオーバーヘッドタイプのなかでは最も軽く持ち運びに向く。視度やレンズ間距離の調節、画面操作はできない。
(日経トレンディ編集部)
[日経トレンディ2016年9月号の記事を再構成]