冷蔵庫選びの新争点 野菜は起こすか、眠らせるか

日経トレンディネット

フラットな前面でクリスタルガラスを採用した日立アプライアンスのWXシリーズとXGシリーズ
フラットな前面でクリスタルガラスを採用した日立アプライアンスのWXシリーズとXGシリーズ
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2016年7月、三菱電機と日立アプライアンスから冷蔵庫の新製品が発表された。どちらも、冷蔵庫市場のトップシェア(容量501L以上)を競う人気のメーカーだ。この2つの発表会で焦点となったのは、「野菜室」の新機能だった。

野菜のビタミンCを増やす「朝どれ野菜室」

新機能「朝どれ野菜室」を搭載した三菱冷蔵庫WXシリーズ、JXシリーズ、Bシリーズ

三菱電機の冷蔵庫といえば、2015年に発表された、チルドや冷蔵室より低温の約マイナス3~0℃で保存できる「氷点下ストッカーD」と、約マイナス7℃で凍らせ、凍ったまま食材を切り分けられる「切れちゃう瞬冷凍」が好評。この2つの機能は同社の冷蔵庫を購入する際の決定ポイントの50%以上を占めるという。一方、野菜室の開発については他社に比べて後発だった。

今回発表された新機能「朝どれ野菜室」は、光合成を行う野菜の特性を生かし、青・赤・緑の3色のLEDの光を24時間周期で効果的に照射し、野菜のビタミンCをアップさせるというもの。LEDの照射なしの場合と比べると、保存3日目に、約23%もビタミンCがアップしていたという。

朝どれ野菜室

野菜を3日以上冷蔵庫に入れておくと、特に葉物野菜はしんなりして、変色していることが多い。これは徐々に栄養素が消費されているからだ。こうなると、栄養価はもちろん、味も落ちてしまう。

朝どれ野菜室は、背面にLEDを配置し、青・赤・緑・OFFを1日の光合成のサイクルに合わせて照射する。色にはそれぞれ役割があり、青は目覚まし効果があり、野菜を起こし光合成を促進させる。赤は葉の表面で光合成させる。緑は葉の内部へ浸透し、光合成を補助する役割があるという。そして、畑で光合成を行っているように、朝2時間は青から緑までの3色が同時に点灯。昼間の10時間は赤と緑だけが同時に点灯し、夜の12時間は消灯するのだそうだ。

日光の1日のサイクルに合わせ、照射するLEDの光の組み合わせを制御する
朝は青の光が点灯し、野菜を起こして光合成を促進させる
赤は葉の表面で光合成させる
緑は葉の内部まで浸透して光合成を補助する

同社の静岡製作所、冷蔵庫製造部の大矢恵司技術第一課長は「スイッチを入れたときから光合成のサイクルが始まります。実験では、葉物野菜の場合、5~7日目から緑化も促進されます。1週間入れたままの野菜でも色も鮮やかで鮮度も失われません」と話す。

キャベツを野菜室内のLED照射エリアに7日間保存した際の緑化の比較。左のキャベツはLED照射なし、右はLED照射あり

朝どれ野菜室に野菜を大量に入れても、「光が少しでも当たっていれば光合成の効果は徐々に広がっていく」と大矢氏は言う。栄養素が増えるほかに、LEDの光によって緑化するというが、それは葉緑素を持つ葉物野菜だけ。反対に「葉物以外の野菜にLEDの光は影響がないのか」という質問に対して、「ジャガイモやもやしなどの根菜類は、2週間程度の実験では影響はないと確認している」と大矢氏は話す。

鮮度保持する「密閉構造」

従来、野菜を長持ちさせるには、葉物はぬらしたキッチンペーパーで包んだり、ラップや袋に入れないと難しい。朝どれ野菜室は、その手間を省いても鮮度が保たれる構造を採用した。

野菜室下段の手前のポケットとの間に新たに仕切りを追加して密閉性を向上。野菜に直接冷気が当たらないように気流を制御し、温度を下げて水分の蒸散量を抑制して乾燥度を約44%も抑制。野菜の保存に適した低温環境を実現したという。

野菜室に入れて7日目のほうれん草とこまつ菜を比較。それぞれ写真の左側が2015年度のMR-WX71Z。写真右側が新製品の朝どれ野菜室に保存したもの。葉や茎部分のハリが違う

従来の人気機能も搭載、断熱材の薄型で大容量

2015年に搭載した、食材を解凍する手間を省く機能、チルドや冷蔵室より低温の約マイナス3~0℃で保存できる「氷点下ストッカーD」と、約マイナス7℃で凍らせ、凍ったまま食材を切り分けられる「切れちゃう瞬冷凍」はそのまま新製品にも搭載。

また、三菱電機独自のウレタン発砲技術でウレタン部分を均一に薄く充てんすることで、従来製品よりも薄型の「薄型断熱構造SMART CUBE(スマートキューブ)」を実現している。

購入時の鮮度のまま寝かせる「新鮮スリープ野菜室」

冷蔵室の下段に設置された「真空チルドルーム」で売り上げを伸ばしている日立アプライアンス(以下、日立)。今回発表された新製品は、真空チルドルームに加えて従来から好評だった「新鮮スリープ野菜室」、「デリシャス冷凍」の3つの技術をさらに進化させたという。

新鮮スリープ野菜室は、その名前の通り、野菜を眠らせてみずみずしさと栄養素を長持ちさせる機能。野菜から出るエチレンガスやニオイ成分をプラチナ触媒で分解し、炭酸ガスを生成。この炭酸ガスが野菜の気孔を閉じ、野菜の呼吸活動が低下することで、栄養素の消費を抑制するという仕組みだ。新製品には、従来よりも能力を強化した「新プラチナ触媒」を採用し、従来の製品に比べて、炭酸ガスの濃度が約1.2倍高まったという。

7日間保存後の比較。従来の製品に比べて、炭酸ガスの濃度が約1.2倍高まった新製品。ブロッコリーの緑が鮮やかだ

また、野菜室の構造も見直した。野菜室を上部から覆う「うるおいカバー」を追加。これで密閉性が高くなり、水分を閉じ込めて乾燥を防ぐという。そして、余分な水分は「うるおいユニット」でケースの外に放出し、野菜室はいつも適度な水分量を維持しているのだそうだ。

新鮮スリープ野菜室を上部から覆う「うるおいカバー」(オレンジのふた)を追加

新たな新鮮スリープ野菜室と、3年前の製品の「うるおい野菜室」で7日間保存後に比較検証した結果、大葉の水分量は従来製品が残存率69.4%だったのに対して、新鮮スリープ野菜室は残存率が86%に、ビタミンEは従来より12%、ビタミンCは約4%アップした。

「野菜は購入時の鮮度が最も良いと考え、その鮮度を保つことに注力しました。野菜はラップをしないでそのまま野菜室に置くだけで良いというところがポイントです」と、日立アプライアンス、栃木家電本部冷蔵庫設計部の青木和昭主任技師は話す。

ポイントは“置くだけ”

新しい日立の冷蔵庫の最大のポイントは、“置くだけ”だ。調整やスイッチなどは必要なく、それぞれの部屋に置いたら閉めるだけで機能が発揮されるというのがウリだと、青木主任技師は言う。「野菜の水分量も、魚や肉の鮮度、温かいご飯などを冷凍するときも、それぞれの場所に置くと冷蔵庫が判断する」そうだ。

真空チルドルームは、肉や魚が凍らない約マイナス1℃の設定で、大気圧より気圧が低い低酸素状態にして酸化を抑える機能。新たな真空ポンプをチルドルーム奥に配置して、約0.8気圧の環境ができた。これに新プラチナ触媒を採用し、食品の表面の酵素の働きを抑えておいしいまま保存するという。

デリシャス冷凍は、従来のものより約2.3倍の大きさのアルミトレイを採用。従来のものは面積が狭く深いタイプだったが、面積が広く浅いタイプに変えたことで、食品を重ねる必要がなく、すばやく冷凍することができるようになった。さらにトレイに置くだけでその食品の温度を検知して運転を自動で切り替える。冷凍時間も通常の半分でできるようになった。

従来の急冷凍室の約2.3倍の大型アルミトレイを採用したデリシャス冷凍

2社の冷蔵庫に共通しているのは、共働き世代をターゲットに、食品のまとめ買いに対応する大容量だということ。選ぶ際にポイントとなるのは、一方は、冷蔵庫の中で野菜を起こして光合成をさせることで野菜の栄養素を増やす機能、もう一方は野菜を眠らせることで鮮度と栄養素を保つ機能を搭載していることだ。真逆の機能がユーザーにどのように受け入れられるかを注目したい。

(ライター 広瀬敬代)

[日経トレンディネット 2016年8月2日付の記事を再構成]

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