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不動産リポート

自宅を早く高く売るための3つのステップ 不動産コンサルタント 長嶋修

2016/8/24

 自宅を早く高く売るために、まず何をすればいいだろうか。

 自分がこれから売り出す中古住宅が、仮に駅徒歩15分、4LDK、築18年で3000万円だとしよう。3000万円前後で、ほかに売りに出ている周辺物件にはどんなものがあるだろうか。同じ駅で似た条件の物件をまずはピックアップしてみよう。もし同じ駅になければ周辺駅で同様の物件がないか探してみる。

 なぜこんなことをするのか。実はこの作業は、あなたの住宅を買ってくれるかもしれない潜在購入者の動きと同じだ。あなたの住宅を購入候補に入れる人が、ほかにどんな物件を検討するのか、つまり競合を把握するのだ。

 物件のピックアップができたらぜひ、それらを見に行ってみよう。その際には「駅までの距離と道のりの安全性や快適性」「建物の見栄え」「日照や通風」「周辺嫌悪施設の有無」「間取りの使いやすさ」など、あなたの物件より相対的に優れているところ、劣っているところを比較してみよう。

 すると、おのずと自分の物件の良いところ、悪いところが浮かび上がってこよう。同価格帯の物件と比べて有利な点が多いなら、もう少し高くても売れるかもしれない。逆に不利な点が多い場合は、価格付けが高い可能性が考えられる。

 築18年程度というのは外壁や屋根の耐久性を考慮すれば、すでに修繕を行うサイクルだが、過去一度も屋根や外壁などの修繕をしていない場合は、それなりに劣化した見栄えになっていることだろう。もし競合物件が外装のリフォームを終えていれば、明らかに見劣りがしてしまうはずだ。

 総床面積30坪程度(約100平方メートル)の住宅の屋根・外壁などを一通り修繕する場合、トータルで120万円から150万円程度のコストがかかる。外壁の修繕作業をする際には建物周辺に足場を組むから、ついでに屋根にも手を入れたほうが結果的に割安に済む。外壁と屋根は同時に工事を行うのがよい。

 売却前にこうしたコストをかけた場合、少なくともコスト分以上は高く、また早く売れると考えてよいだろう。これは私がかつて不動産営業をしていた頃の経験から実証済みだ。

 人の意識はたぶんに「第一印象」「見た目」に左右される。住宅も「見た目」が大事なのだ。購入動機にはもちろん駅までの距離など多様な諸条件があるが、それらはあくまで理屈であり、まずは「なんとなく気に入った」といった感情ありきで、諸条件はその上で検討されるものだ。

 不動産業界には中古一戸建てや中古マンションを買い取り、リフォームやリノベーションを施したうえで一定の利益を乗せて再販売する、いわゆる「買い取り再販」というビジネスモデルがある。このような事業は市場価格3000万円の物件を70%程度の2000万円で買い取り、500万円のリフォーム費をかけたうえで経費・利益を乗せ、3000万円で再販売するというイメージだ。

 中古住宅市場で売りに出されている物件はそのほとんどが個人の所有だが、早く高く売ることを志向してあらかじめリフォームなどを施すようなケースはほとんどみられない。投資対効果が不明なためだ。だからこそリフォーム済み物件は早く高く売れる。買い取り再販事業は個人の多くが早く高く売るための工夫をしていないがために成立している業態だとみることもできる。

米国では居住中の家にも装飾が施されて販売される

 欧米では自宅を売りに出す前に、屋根や壁を自分でリフォームしてしまうのはもちろん、水回り設備の交換なども自分で行ってしまうことが多い。例えばキッチンを交換するのも、リフォーム業者に依頼するのは全体の30%程度にすぎず、70%は自分で工事する。

 それだけではない。米国では自宅をより早く、高く売るため、インテリア専門のコーディネーターを雇う。自宅に合うカーテンやテーブルクロスから、テーブルやソファに至るまで、自宅売却までの一定期間レンタルしてくれる。自宅の見栄えをよくして、少しでも早く高く売ろうというのだ。このようなサービスを行う「ホームステージング」を行う会社が米国には無数に存在している。

 ホームステージングにかける費用は一般的に15万~30万円程度。これも自宅の第一印象を上げるための工夫の一つである。米国では、空き家はもちろん居住中の物件であってもほぼ例外なく、こうした装飾が行われている。自宅を早く売るためにはまず、第一印象を上げるための戦略を立て、必要に応じて実践したい。

長嶋修(ながしま・おさむ) 1999年、業界初の個人向け不動産コンサルティング会社「さくら事務所(http://sakurajimusyo.com/)」を設立、現会長。「第三者性を堅持した個人向け不動産コンサルタント」の第一人者。国土交通省・経済産業省などの委員を歴任し、2008年4月、ホームインスペクション(住宅診断)の普及・公認資格制度を整えるため、NPO法人日本ホームインスペクターズ協会を設立し、初代理事長に就任。『「空き家」が蝕む日本』(ポプラ新書)など、著書多数。

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