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採用面接においては、多くの場合「転職する理由」を尋ねられますが、そこでつまずいてしまう人が少なくありません。包み隠さず正直に伝えても、あるいは不都合なことを隠して表面的な理由を述べても、面接担当者から厳しいツッコミを受けてしまうことがあります。今回は、相手が納得するような転職理由の伝え方についてお話しします。

面接で厳しいツッコミを招いてしまう「転職理由」とは

採用選考の場では、今の会社で活躍している人ほど、「なぜわざわざ転職する必要があるのだろう?」という疑問を持たれます。「所属部門が縮小・閉鎖」「事業撤退」など明確な理由があれば納得を得やすいのですが「何か問題を抱えているのでは」と勘繰られてしまうことも。

ところが、応募者側は自身のスキルやキャリアをアピールすることに集中し、「転職理由」をどう伝えるかを熟慮していないケースがよく見られます。皆さんが思うよりも、企業側は転職理由に敏感。不用意な発言をして不信感を抱かれ、採用を見送られてしまうこともあります。

「この転職理由を話したら、相手はどう感じるだろうか」という点を意識して臨んでください。

では、応募者が語りがちな転職理由で、企業側からツッコミを受けやすいものの一例をご紹介しましょう。

1.「評価に納得できない」

「今の会社で正当に評価されていない」と伝えたら、「あなたが評価に値する働きをしていないのでは?」と捉えられる可能性があります。実際には社内のパワーバランスや上司との関係性によって不当な評価となっていたとしても、こうした疑念を向けられるのは避けられないでしょう。

しかも、企業から「なぜ評価されないのか」と問われた場合、それに答えようとすると、上司や会社に対する愚痴や不満になってしまいがち。それは当然ながらいい印象を与えません。

相手を納得させるなら、自身がどんな業績や成果を上げてきたか、会社にどう貢献したかを、第三者が聞いて納得できるような事実として語れるようにしておきましょう。

2.「職場の人間関係が良好ではない」「上司とソリが合わない」

これは「転職理由の本音」として多いのですが、そのまま正直に話すのはやめておきましょう。面接担当者からこんなツッコミを受けてしまいます。

「人間関係の悩みなんてどんな会社にもあるもの。うちに転職したとして、人間関係がうまくいく保証はない。うまくいかなければまた辞めるのですか?」

人間関係の悩みやトラブルは、相手側に非があったとしても、現場を見ていない第三者からすると本当はどちらが悪いのか判断ができません。「あなたの方に問題があるのでは?」と思われるリスクもあります。

転職したとなると、新たな職場でゼロから人間関係を築く必要があります。「コミュニケーション力に難があるのでは」と思わせるのは得策ではありません。

3.「今の会社ではやりたい仕事ができない」

「やりたいことがある」という前向きな意欲は評価されますが、面接担当者によっては次のように考えることもあります。

「あなたにその仕事をこなせる力がないと思われているのでは?」

「やりたいことを主張する以前に、現在の自分の役割はちゃんと果たしているの?」

例えば、営業職を務めてきた人が、十分な業績を上げていない状況で「企画がやりたい」「マーケティングがやりたい」と訴えても、なかなか受け入れられないものです。

この理由を挙げるなら、今の役割をしっかり果たしていることを伝えた上で、「次のステップを目指したいが、組織事情により(あるいは会社の方針、人事制度の都合上など)実現できそうにない」というストーリーを具体的に語りましょう。

4.「経営状態が悪く、会社の将来性に不安がある」

もっともな転職動機です。ただし、管理職以上のポジションに就いている人であれば、こう問われる可能性を想定しておいてください。

「あなた自身は、経営立て直しのためどんな努力をしましたか?」

この質問に対して相手が納得できる回答を用意できない場合、「自分の責任を果たさないまま逃げようとしているのでは?」という印象を持たれる恐れもあります。自分の担当部署だけでなく、組織全体のことを考え、どんな提言や取り組みを行ってきたのかを語れることが大切です。

「不満」を「目標」「ビジョン」に転換する

――以上が、応募者が転職理由として語りがちな4大不満です。これらに限らず、「不満」から転職活動に踏み切った人は、転職理由をどう伝えればいいのでしょうか。

お勧めするのは、「不満がきっかけだったとしても、そこにはあえて触れず、今後の目標や将来ビジョンにフォーカスする」という伝え方です。「○○が嫌だった」「○○に耐えられなくなった」ではなく、「これから○○がしたい」「こんな自分になりたい」「こんな人々の役に立ちたい」といったことを前面に出しましょう。

「○○がしたい」と言うと、「今の会社ではできないの?」と突っ込まれることもありますが、相手からの質問に答えるという流れで現状の不満を語る分には、納得を得やすいものです。それに、「○○がしたい」「○○を目指す」を語れば、企業側はそちらに興味を抱き、そのテーマに関する深掘りを始めますので、根底の転職理由を探られることなく面接が進んでいくでしょう。

もちろん、「○○がしたい」を具体的に、しっかり語れるようにしておくことも大切です。

転職理由と志望理由には「一貫性」を

前向きな「転職理由」を準備したとして、もう1点、注意すべきことがあります。

転職理由と同様、その会社を志望した理由も必ず聞かれますので、「転職理由」と「志望理由」に整合性を持たせておく必要があります。

例えば、「○○分野での専門性をより深めていきたい」という転職理由を語っておきながら、相手企業を志望した理由を「幅広い分野に事業展開しているから」と言ったなら「深めたいのか広げたいのかどっち?」という疑問を持たれます。転職を考え始めてから、その会社を志望するに至ったプロセスを、筋の通ったストーリーとして語れるようにしておくことが大切です。

 「次世代リーダーの転職学」は金曜更新です。次回は9月23日の予定です。
 連載は3人が交代で担当します。
 *黒田真行 ミドル世代専門転職コンサルタント
 *森本千賀子 エグゼクティブ専門の転職エージェント
 *波戸内啓介 リクルートエグゼクティブエージェント代表取締役社長
森本千賀子(もりもと・ちかこ)
株式会社リクルートエグゼクティブエージェント エグゼクティブコンサルタント
1970年生まれ。独協大学外国語学部英語学科卒業後、93年にリクルート人材センター(現リクルートキャリア)入社。大手からベンチャーまで幅広い企業に対する人材戦略コンサルティング、採用支援、転職支援を手がける。入社1年目にして営業成績1位、全社MVPを受賞以来、つねに高い業績を挙げ続けるスーパー営業ウーマン。現在は、主に経営幹部、管理職を対象とした採用支援、転職支援に取り組む。
 2012年、NHK「プロフェッショナル~仕事の流儀~」に出演。『リクルートエージェントNO.1営業ウーマンが教える 社長が欲しい「人財」!』(大和書房)、『1000人の経営者に信頼される人の仕事の習慣(日本実業出版社)』、『後悔しない社会人1年目の働き方』(西東社)など著書多数。

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