マネー研究所

得々家計

不妊治療や失業給付… 出産の前後、公的支援を活用

2016/8/25

 出産や子育てに関する公的な支援制度が拡充されつつある。自治体による不妊治療費への助成をはじめ、出費のかさむこの時期の家計にとって、十分には認知されていないものの大きな助けになるという制度は多い。どんな制度があるかを知っていれば、いざというときに安心。利用する際の注意点と併せてみていこう。

家計の助けとなる公的な支援制度は多い

 健康保険が適用されず費用がかさむ不妊治療に対して、一部を助成する制度がある。「特定不妊治療」とよばれる体外受精と顕微授精を対象に、1回につき15万円(治療により7万5000円)を上限に支給する。都道府県(政令指定都市など含む)が窓口となり、国の補助を受けて実施している。

 今年度にかけて内容が一部見直された。妻の年齢(初めて助成を受ける際の治療開始時)によって助成を受けられる回数が異なるようになり、39歳以下が通算6回まで、40~42歳が同3回までで、43歳以上は対象外となった。夫婦合算所得が年730万円未満という条件がある。

 あまり知られていないが、今年1月20日から、初回の助成分に限って支給額上限が30万円に倍増され、治療を始めやすくなった。さらに治療の過程で夫が手術を受けた場合に15万円まで支給する仕組みが加わった。

 特定不妊治療については市区町村が独自に支援する例も増えつつある。都道府県の助成で賄いきれない場合、一部を補ってくれる。例えば東京都港区は年度あたり30万円を上限に助成する。不妊治療は期間が長くなり、費用が合計100万円以上かかる例も少なくない。自分の住む自治体に独自制度があれば支えになるので確かめてみよう。

 助成を利用する際には早めの準備を心がけたい。病院で検査を受けてもすぐに治療が始まるとは限らない。病院によっては説明会への参加を義務付けられたりする。年齢区分が上がって助成対象回数が減る前にまずは夫婦で検査を受けてみたい。

 出産前から子育てに至るまで家計にとって助けになる制度は充実してきている()。多くは自治体や加入する健康保険が窓口となる。原則、期日までに申請する必要がある。

 代表的なものをいくつか紹介しよう。出産前は、妊婦健康診査にかかる費用に対する助成がある。全国の市区町村は、指定する医療機関で使える受診券を配布するなどして14回分の妊婦健診の費用を負担してくれる。

 出産時は、加入する健保から原則42万円が出る「出産育児一時金」があり、物入りの時期の助けとなる。出産後、子どもが傷病で医療費を負担したときに役立つのが、市区町村による「医療費助成制度」。医療証が配布され、通常2~3割の自己負担分について一部か全額を市区町村が賄ってくれる。

 助成制度については留意したい点がある。出産や育児に専念するために会社を辞めるといった場合の対応だ。

 例えば健康保険の「出産手当金」は、出産のために会社を休み給料の支払いを受けなかった場合が対象。在職しながら休暇を取っている間は一定日数を上限に受け取れるが、会社を辞めた後は適用対象外になる点は再確認しておこう。

 育児などを機にいったん離職した後、育児が一段落したら再就職したいと考える人も多いだろう。だがその際、仕事がすぐに見つかるとは限らず、失業状態に陥る心配がある。そうした事態に備えるためにしておきたい手続きがある。雇用保険の受給資格期間の延長だ。

 雇用保険のいわゆる失業給付(基本手当)は、育児などを理由として働けない間はそもそも対象外。しかも、離職後1年を超えると原則、資格自体を失ってしまう。このため通常、数年で子育てに区切りを付けていざ働こうという時期に、運悪く職が見つからなくても、期限切れにより給付を受けられない。

 しかし、事前に期間延長の手続きをしておけば、追加で最長3年間資格を保ち続けることができる。これにより求職活動中に失業給付を受け取ることが可能になる。手続きは、離職してから一定期間内にハローワークに届け出ておく必要がある。

 公的な支援制度は拡充途上にあり、制度が変わりやすいのも特徴。継続的に情報を収集することが大切だ。

(生活経済研究所長野 関口 輝)

[日経プラスワン2016年8月20日付]

マネー研究所新着記事

ALL CHANNEL