マネー研究所

Money&Investment

財布レス時代がやってくる 決済、非金融がしのぎ スマホが金融を変える(4)

2016/8/23

 最近、店でスマートフォン(スマホ)を使って支払いをしている人をよく見ます。どのような仕組みなのでしょう。安全面は大丈夫ですか。

 スマホを使う金融サービスの担い手は金融機関とは限らない。IT(情報技術)分野のベンチャーから大手までがしのぎを削る。特に競争が激しいのが、お金を払う決済サービスだ。

客のスマホと店のタブレットを近づけるだけで、買い物代金の決済ができる(Origami pay)

 5月、一風変わった決済サービス「Origami pay(オリガミペイ)」が、雑貨「ロフト」や紳士服「AOKI」などで始まった。客はスマホを店員が持つタブレットへかざして支払いをする。スマホに入った電子マネー「おサイフケータイ」と使い方は似ているが、オリガミペイはクレジットカードを使う。

 サービス提供元のOrigami(オリガミ、東京・港)によれば、スマホにアプリを入れ、本人確認の手続きをした後、カード情報を登録すればすぐ使える。オリガミペイを利用する時だけの割引サービスなどの特典もある。

 安全対策はどうか。まずカード番号など重要情報はアプリではなく、高いセキュリティー対策を施したネット上のサーバーで管理する。支払時はスマホと店のタブレットが無線通信をするが、その時にはカード番号は全くやりとりされない仕組みとなっている。

 2012年設立のコイニー(東京・渋谷)が提供するサービスでは客は普通にクレジットカードで支払うが、店はスマホやタブレットを使う。「ターミナル」と呼ぶ専用機器がカード情報を読み取り、この機器とスマホなどを接続して必要な情報を通信する。

 ターミナルはカード番号を暗号化する装置を内蔵し、ターミナル内などには重要情報は保存しない。ネットに接続できれば、どこでも使えるのが強みで、「催事会場や屋外の仮店舗などでもカード決済が簡単にできる」(同社)。

 ベンチャーがスマホを使ったクレジットカードの新しい活用法を編み出す一方、IT大手は既存のカードだけに依存しない独自の決済サービス開発に熱心だ。

 LINEは3月、プリペイドカード「LINEペイカード」を発行した。登録はLINEアプリからのみ可能で、実質的にスマホ利用者専用カードだ。事前入金した金額の範囲ならJCB加盟店でクレジットカードと同様に使える。利用額の2%と、一般的なクレジットカードの約4倍のポイントを還元するのも特徴だ。LINEの利用者間で送金もできる。

 ヤフーは5月、独自の電子マネー「ヤフー!マネー」を開発。クレジットカードを持たない人向けの決済サービスを強化した。同社のオークションの売り手は落札代金をヤフー!マネーで受け取るだけで代金の2%分が上乗せされる。スマホがあれば、ヤフー!マネーを使う人同士の送金も無料だ。17年にはネット外の一部実店舗でもヤフー!マネーが使えるようになる。

 LINEやヤフーの新サービスは親の同意があれば、未成年も自由に使える。近い将来、財布を持たず、スマホで支払いの一切を済ます若者が街にあふれるかもしれない。一連の新顔企業は金融サービスの常識そのものを揺さぶっている。

[日本経済新聞朝刊2016年8月17日付]

マネー研究所新着記事

ALL CHANNEL