パリパリ羽根付きギョーザ 道具とワザで失敗知らず
ギョーザを香ばしく焼き上げるには「鍋」が重要
こんにちは! 飯田結太です。私は人が集まるとよくギョーザパーティーを開きます。特に夏はビールにギョーザがぴったり! そこで、今回は私も愛用しているギョーザ用の調理グッズを検証します。
プロは「すべてのギョーザにキレイな焼き色を付けるのは、ステーキを焼くよりも難しい」と言います。特に大量のギョーザを一度に焼き上げる場合、鍋全体に熱が均一に伝わっていないと、中心は焦げているのに、外側のギョーザはまだ焼き色が付いていないということになってしまうからです。
そこで、おいしいギョーザを作るにはまず鍋選びが重要になります。プロが焼き物で使うのは鉄製で、さらに「板の厚み」がポイント。板が厚いほど熱はじっくりと全体に均一に伝わっていきます。業務用のギョーザ鍋は板厚が薄いものでも4.5mmはあります。普通のフライパンは板厚2.3mmあれば厚いほうなので、それに比べるとギョーザ用の鍋は約2倍の厚みがあることになりますね。
プロ仕様、9mm厚のギョーザ鍋
これは、板の厚みが9mmもある重量級のギョーザ専用鍋。中華料理店で見かけたことがある人もいるのではないでしょうか。板が厚いので、熱がいきわたるのも時間がかかりますが、一度熱が伝わると簡単には冷めません。フタも本体も深さがあるので、蒸気がまんべんなく循環して蒸し焼きもうまくでき、パリパリの羽根付きギョーザも得意。ギョーザ好きの私としては憧れの鍋で、冬のボーナスで買う予定です。これで焼いたらスゴイうまいギョーザができると思います!
このままテーブルに出してもさまになるギョーザ鍋
私が現在愛用しているのがこちら。中華料理道具専門メーカーのもの。板厚は4.5mmですが、家庭で使うなら十分。最近人気なのが、ギョーザを丸く並べて焼く方法。これなら丸く並べてそのままテーブルに出せば演出もばっちり。角型餃子鍋もそうですが、鉄製なので、最初に使うときは残り野菜などで炒め物をして焼ききることで鉄臭さがとれます。それから油をなじませて使いましょう。
1人前でもおいしくキレイに焼けるギョーザ鍋
上記2点の鍋に比べて板厚が1.6mmと薄いのですが、普通の中華鍋の厚みがちょうどこれくらい。熱は速く伝わり焼きムラができやすいのですが、鉄製なので一度強火で熱してから冷まし、再度熱を入れながらギョーザを焼くと焼きムラが起きにくくなります。ぜひお試しを。これは、プロ用の長さのあるヘラ(ロングターナー)がぴったりはまるサイズです。
■簡単キレイにひだが作れるパック
ギョーザを作るときに苦労するのが、皮に具(あん)を入れて包む作業。あんを入れすぎて無理やり皮を閉じようとして破れてしまったり、うまく"ひだ"が作れずに見た目が悪くなってしまったり。私もかなり失敗しました。これは慣れることが上手に包むための一番の近道なのですが、初めてギョーザの皮を包む人でもキレイにできてしまう調理道具「パック」があるんです。
パックは、容器に皮をセットして、皮にあんを置いてパカッとフタをして押すだけ。きれいな三日月形のひだ付きギョーザができます。
人気があるのは、「ぱっくん餃子セット」(870円)。プロはあまり使いませんが、意外なのは、中国、台湾からの観光客の方々に人気が高いんです。これは、大判皮と普通サイズの皮の両方に対応します。スプーン付きなので、あんをスプーンですくって皮の上にぽんと置くだけ。
スプーンは内側が凸凹しているダブルエンボス加工なので、あんがくっつきにくいんです。あとは赤いフタを倒して少し押せば完成です。ただこのパックの弱点は、あんをほんの少ししか入れられないところ。具だくさんのギョーザが食べたいという人には、下村工業の「味わい食房 ギョーザ名人」がおすすめです。まず、皮をセットしたら一度パタンと型で押して、形を作ります。そこにあんをのせて、反対側の型をパタンと下ろすとギョーザが完成するというもの。
なぜギョーザにひだがあるのかをご存じですか? もともとは、中国の古い貨幣「馬蹄銀(ばていぎん)」の形をまねて作られたものなんです。ギョーザはお金を運んでくるもの、縁起の良い食べ物という意味があったんですね。実はこのひだを作らなくてもギョーザの味は変わらないんです。個人的にはひだのないギョーザのほうが食感も良くておいしいと思うのですが。これは個人の好みですね。
アンベラとコナツギって何?
ギョーザを作るとき、羽を作るときにプロにとって欠かせない道具が「アンベラ」と「粉次(こなつぎ)」です。
アンベラは、名前の通り、ギョーザのあんを練ったり、取り分けるときに使うもの。竹製とステンレス製があります。一般的にプロが使っているのは、衛生的なステンレス製。竹製は、使用後にキレイに洗って乾燥させないとカビがつきやすいのですが、昔からギョーザを作っているプロに根強い人気があります。竹は適度な丸みがあって手になじむのであんを練りやすい、また、適度な油分を含んでいるのであんがヘラから離れやすくて包みやすいという人も多いんですよね。
粉次は、たこ焼き屋などで見かけたことがあるかもしれません。小麦粉を水で溶いたものを入れるためのもので、羽根付きギョーザを作りたいときはこれがあると便利です。羽を作る場合は、小麦粉は水に対して5~10%の割合で溶くといいでしょう。
良いターナーがあれば失敗も隠せる
ギョーザを皿に盛り付けるときに欠かせないのがターナー(ヘラ)です。ターナーにもさまざまな種類がありますが、ギョーザ用に選ぶなら、ヘラの部分が長くて薄く、よくしなるロングターナーと呼ばれるものが適しています。長さは、ギョーザをまとめてきれいに取るため。さらに、ギョーザの皮を破らずにすくい取るには、鍋とギョーザの間にスッと入る薄さとしなやかさが必要なんです。特にヘラの薄さは重要ポイントです。ギョーザをすくうときに皮に引っかかってしまったり、鍋にくっついているとぼろぼろになってしまいますよね。でも、薄くてよくしなる、こしのあるターナーであれば、もう一度慎重に鍋とギョーザの間に入れてギョーザをキレイにリカバリーできることもあるんです。
ターナーはステンレス製とナイロン製があります。鉄鍋を使うプロの御用達はステンレス製ですが、フッ素加工のフライパンが広く使われるようになってから、フッ素加工を傷つけないナイロン製のロングターナーも登場しました。フッ素加工のフライパンを使っている人はナイロン製を選びましょう。ナイロン製と言っても、耐熱温度が低いと溶けてしまうこともあるので、200度以上のものを選ぶことが大切。説明書に書かれている耐熱温度は必ずチェックしましょう。
私のイチオシは、プロ用のロングターナーを家庭のフライパンでも使えるように少し短くした貝印の「セレクト100ターナー」(900円)。薄さはダントツ。紙のように薄くてよくしなります。持ち手もステンレスで握りやすいので、手が疲れにくいんです。24cm、26cmのフライパンを使っている人はこれがちょうど良い長さです。
プロに人気が高いのは、中華料理専門道具メーカー、カンダのオリジナルブランド「カンクマ」のもの。ヘラ部分の長さは220mmもあり、家庭用のおよそ2倍。大きな鍋を選ばないと引っかかってしまいますが、6個程度のギョーザなら一度にすくい取れる長さです。穴開きと穴なしタイプがあり、油を多めに使う中華料理店に人気なのは、油切りができる穴開きタイプ。羽根付きギョーザをすくい取るなら穴なしのほうが崩さずに取れるかもしれないですね。
台所番長流、こんがり羽根付きギョーザの作り方
最後に、私流のギョーザの作り方をお教えします。きれいな羽根付きギョーザを作るコツは3つあります。最初に鍋を強火で熱して一度冷ますこと、多めの小麦粉を溶いた水を使うこと、最後にゴマ油を回し入れること。では作ってみましょう!
1. キャベツ、ニンニク、ニラなどの好みの野菜をみじん切りにする。(台所番長はパクチーを入れます)
2. ひき肉と野菜をよく混ぜて粘りが出るまで練り、塩、コショウ、ゴマ油、しょうゆ、またはオイスターソースを入れて味を調える。
3. あんをギョーザの皮で包む。
4. ギョーザ鍋を数十秒間強火で空だきし、火を止めて一度冷ます。鍋底に手を当てて温かい程度になったら火をつける。(強火で熱してから一度冷まし、もう一度火をつけると鍋全体に熱がまんべんなく回ります)
5. 水に対して10%ほどの小麦粉を溶いておく(小麦粉を溶いた水は多めのほうが羽がキレイにできます)。
6. ゴマ油を適量入れてギョーザを並べる。
7. 強火で少し焼き目が付くくらいまで、約30秒。焼き目が付いたら、ギョーザの底がしっかり隠れるくらいの水を回し入れる(私は150CCほど入れます)。
8. ふたをして3分半から4分焼く。
9. ギョーザの周りにも焼き色が付いてきたら、ゴマ油を少量回し入れる(最後のゴマ油がパリパリに仕上げるコツです)。
これでパリパリの羽根付きギョーザの完成です! ぜひお試しを。(談)
(ライター 広瀬敬代)
[日経トレンディネット 2016年8月4日付の記事を再構成]
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