ATMから現金を引き出すときに手数料が発生するのは主に2種類のケースだ。
まず自分が口座を持つ銀行(以下、自行)が設置したATMの場合、平日の夜間・早朝(通常、夜6時~翌朝8時45分)と土曜・日曜・祝日に使うと手数料がかかる。「時間外手数料」とよばれる。メガバンクをはじめ多くの銀行はその金額を108円か216円と定めている。
もうひとつは他行ATMや、コンビニエンスストアに設置されたATMを使う場合だ。手数料は平日の日中が108円、夜間・早朝や土日祝が216円などと定められている。
振込手数料の負担はさらに重い。例えば大手行で、ATMからカードを使って他行口座宛てに振り込む場合でみて216~432円ほどかかる。
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こうした手数料を確実に節約する方法がある。
まず会員サービスに申し込むことだ。大手行などが導入しており、一定の取引条件を満たせば手数料が安くなる(表)。預金口座を開設済みであれば、手続きにより入会でき、会費は通常かからない。優遇を受けるための取引条件は意外と緩いので活用しない手はない。
例えばみずほ銀行では「マイレージクラブ」へ申し込む。預金などの月末残高が合計10万円以上あると、その翌々月には、曜日・時間帯にかかわらず、自行ATMがいつでも無料に、コンビニATMは月4回まで無料になる。他行宛て振込手数料についても、残高50万円以上で月1回無料だ(ネットバンキングか自行ATM利用の場合)。
三井住友銀行は「ポイントパック」への申し込みが前提。給与の受け取り、残高30万円以上、指定クレジットカードでの代金引き落とし、といった条件のうち1つでも満たせば、自行ATMはいつでも無料に、コンビニATMは月4回まで無料になる。取引に応じてたまるポイントを他行宛て振込手数料に充てて、節約することもできる。
手数料の節約法でもうひとつ考えられるのが、もともとの手数料体系自体を割安に設定している銀行を選ぶことだ。
例えば新生銀行ではATMでの現金引き出しは無料。曜日・時間帯や回数にかかわらず、他行・コンビニATMも含めて手数料がかからない。ゆうちょ銀行の場合、全国各地にある自行ATMを使えば、現金引き出しはいつでも無料になる。
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最近は地方銀行などの間でATMを相互開放する動きも目立つ。預金者は、提携先銀行のATMを、割安な手数料で利用することができる。例えば横浜銀行は、北海道銀行や群馬銀行、千葉銀行、常陽銀行などとそれぞれ提携している。
若年者を対象に優遇する銀行も出てきた。りそな銀行は25歳以下なら自行ATMが時間帯によらず無料で、26歳以降も給与振込口座に指定するなどすれば継続できる。池田泉州銀行は18~23歳を対象に、自行ATMをいつでも無料にするなどしている。
ネット専業銀行は全般に振込手数料が割安といえる。
住信SBIネット銀行は条件なしで月1回は他行宛てネット振り込みを無料でできる。無料となる回数は取引内容により段階的に増え、例えば預金が100万円以上あれば月3回まで無料。無料回数を超えた場合も手数料は154円と低めだ。ソニー銀行では条件なしで月1回まで振込手数料がかからない。
一般に振込手数料は店頭で依頼すると最も高くつく。ATMでは現金を投入するよりカードを使ったほうが安い。総じていえばネット振り込みが優位なので、定期的に振り込みをする人は、ネットバンキングの利用契約を申し込んでおくといい。
(ファイナンシャルプランナー 坂本 綾子)
[日経プラスワン2016年8月13日付]