マネー研究所

転ばぬ先の不動産学

住宅ローン借り換えには「明と暗」 不動産コンサルタント 田中歩

2016/8/17

長期金利の低下で住宅ローン金利も過去最低水準まで低下している

 今年1月29日、日銀が金融政策決定会合でマイナス金利政策の導入を決定しました。これを受け、3月初旬までに多くの金融機関で10年固定金利選択型の住宅ローンの最優遇金利が1%を割り込み、借り換え需要が大幅に増えたといわれています。

 また、英国のEU離脱の是非を問う国民投票で離脱支持派が勝利を収めたことから、安全資産とされる円にマネーが流れ込み、長期金利がさらに低下。この流れを受け、変動金利で0.5%前後、10年固定金利選択型で0.35%といった金利を提示する金融機関も出てきています。

 住宅金融支援機構も「フラット35」の8月の適用金利を引き下げ、「借入期間21年以上35年以下、融資率9割以下」の場合の最低金利を過去最低の0.9%に、「期間20年以下」の最低金利も過去最低の0.83%としています。

 これだけ金利が下がってくると、読者の中には、自分も借り換えをしたほうがよいのではないだろうかとお考えの方も多いのではないでしょうか。

 一般的に、金利差「1%以上」、残債務「1000万円以上」、借り換え後の返済期間「10年以上」の場合は、借り換えによってメリットが出るといわれています。つまり、1000万円を金利1%、返済期間10年で借りた場合の金利総額分を節約できるかどうかが、借り換えの目安というわけです。

 元利均等返済の場合の金利総額の概算値は「借入額×金利×返済期間÷2」(残債が少なくなるにつれて利息が少なくなるため)で求められますので、この場合は50万円となります。

 なぜ、約50万円の節約が借り換えの目安かというと、借り換えるローン商品によって違いはありますが、1000万円の借り換えの場合、「抵当権抹消費用」「期前返済に伴う手数料」「借り換える金融機関に対する事務手数料」「契約書貼付印紙税」「保証料」「抵当権設定費用」等で、20万~40万円程度の費用がかかるからです。

 なお、金利差、残債務、返済期間のいずれかが突出していれば、必ずしも「1%以上」「1000万円以上」「10年以上」である必要がないことはいうまでもありません。例えば、金利差が0.5%しかなくても、残債務2500万円、返済期間が25年ならば、約156万円(=2500万円×0.5%×25年÷2)の利払い額を圧縮できることになります。

 ただし、ここで注意しておきたいのは、この計算は「金利差」がずっと変わらないという前提に立っているということです。

 フラット35などの全期間固定金利型ローンから、同じ全期間固定金利型ローンへ借り換えるなら、返済期間中の金利は不変ですから、金利差も不変となり問題はありません。例えば、5年前に3000万円を全期間固定金利2.4%、返済期間30年で借りていた方が、全期間固定金利0.9%に借り換えた場合、残債務を2600万円とすれば、約487万円(=残債務2600万円×金利差1.5%×残りの返済期間25年÷2)の利払いコスト圧縮が可能となります。

 返済期間が10年少々ならば、現時点で最も金利の低い10年固定期間選択型ローンへの借り換えもお勧めです。10年間金利は固定されていますし、10年経過後の残債は残り少なくなっているため、多少の金利上昇があっても影響は少なくなるからです。

 注意したいのは、残りの返済期間が長いにもかかわらず、目先の金利が低い変動金利型や固定期間選択型を選ぶ場合です。返済期間が長ければ、途中で金利が上昇し、上昇した金利が適用される期間が長くなる可能性が高まります。つまり、当初想定していた「金利差」が縮小、あるいは逆転してしまい、思った節約が実現できなくなる可能性があるということです。

 さらに、固定金利選択型の中には、期間経過後の優遇金利幅が縮小するタイプの商品が存在しますので、これも金利差が縮小する大きな要因となります。

 当面、金利水準は低いままと思いますが、日銀によるこれ以上のマイナス金利引き下げや、国債買入の増額は難しいのではないかとささやかれる中、借り換えを検討する場合、足元でどの程度の節約効果があるかだけでなく、今後の金利上昇リスクと返済期間の長短に応じた商品の選択が大切だと思います。

田中歩(たなか・あゆみ) 1991年三菱信託銀行(現・三菱UFJ信託銀行)入行。企業不動産・相続不動産コンサルティングなどを切り口に不動産売買・活用・ファイナンスなどの業務に17年間従事。その後独立し、ライフシミュレーション付き住宅購入サポート、ホームインスペクション付き住宅売買コンサルティング仲介など、ユーザー目線のサービスを提供。2014年11月から「さくら事務所(http://sakurajimusyo.com/)」執行役員として、総合不動産コンサルティング事業の企画運営を担う。さくら事務所ではこれから初めて住宅を購入される人向けに「賢い住宅ローンの選び方セミナー」を開催。詳細はhttp://www.sakurajimusyo.com/mortgage0823

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