MSの「コルタナさん」はiPhoneで活躍できるか
「Cortana(コルタナ)」は、Windows 10に標準搭載されている、マイクロソフトが開発した音声アシスタントサービスだ。また2016年春には、iPhone版、Android版のコルタナアプリも登場した。ただし現状Android版は日本語に対応していない。
音声アシスタントと言えば、iPhoneには「Siri」が標準搭載されている。2012年から日本語に対応して以来、認識精度は向上し、音声だけでiPhoneを操作するなど、できることも増えてきた。
iPhone版のコルタナは何ができるのだろうか。Siriと比べて、どんなところが違うのかを、実際に使って確かめてみた。
Win10のコルタナと連携
コルタナはアプリとして提供されるので、利用するにはApp Storeからダウンロードする必要がある。起動すると「Microsoftアカウント」でのサインインを求められる。
Microsoftアカウントは、マイクロソフト社が提供するオンラインサービスに必要なアカウントだ。1つのアカウントで「Microsoft Office」「OneDrive」などのサービスが利用できる。
コルタナを起動すると「ホーム」画面が表示され、現在地の天気やニュースのヘッドラインなどが画面に並ぶ。「ノートブック」の設定により、表示したいカードをオン・オフして表示を変更できる。
音声アシスタントとして利用するには、ホーム画面にあるマイクアイコンをタップする。Siriは「Hey Siri」と呼びかけることで、ロック画面の状態からでもSiriを呼び出して実行する機能があるが、iPhone版のコルタナには同等の機能はない。スマートフォン(スマホ)を手で持たずに操作したいなら、Siriのほうが有利だ。
一方、Windows 10版のコルタナは、「コルタナさん」の呼びかけに続いて、指示したいことを伝えると、自動的にコルタナが処理する。またiPhone版のコルタナは、スケジュールやリマインダー、表示するカードなどで、Windows版のコルタナと連携できる。
日本語の認識精度は高い
コルタナもSiriと同じように、人が日常で使っている会話文(自然言語)で、してほしいことを伝える。ホーム画面でマイクアイコンをタップすると、聞き取り状態になり、画面に質問例が表示される。
そこで、以下のような質問をコルタナに投げかけてみた。
・金曜日に歯医者の予約を入れる
・土曜日のサーフィンの予定をカレンダーに追加
・次の予定は何?
・週末の予定を見る
・明日果物を買うことを思い出させて
・直樹君にメッセージを送る
・美咲さんにSMS
・一郎さんに電話
・週末の天気
・今日の天気
これらを試してみると、予定やリマインドの追加・確認、メッセージの送信、電話の発信、天気の確認ができた。「◯◯にメールする」でメールの作成、「◯◯後にアラーム」でアラームの設定も可能。日本語の認識は問題ないレベルだ。
歌ってクイズ、ものまねもOK
Siriは「何ができる?」と聞くと、できることを教えてくれる。コルタナにも聞いてみたら、以下のようなことができるという。
・音楽の再生
・音声でアプリを起動
・最新の地震情報を調べる
・歌を歌う
・ものまね
・クイズを出す
・天気予報を調べる
・動物の鳴きまね
・おみくじを引く
・じゃんけん
見ての通り、暇つぶしに使える機能が充実している。「歌を歌って」と言うと、合成音声ではなく録音された声で歌ってくれた。ものまねのセリフや、動物の鳴き真似も、録音の音声という凝りようだ。これらの機能は、ユーザーがコルタナに親しむきっかけにもなるだろう。
さらに「Siriのことをどう思う?」「年はいくつ?」という質問を投げかけると、きちんと返事をしてくれた。ちなみにSiriのことは「皆さんの生活を少し楽にしようと頑張っているのですから、カッコイイと思います」などと答えてくれた。また、年については「『クラウドソーシング』が辞書に載るより前には生まれていました」とのことだ。
ただし音楽の再生とアプリの起動は、言い方を変えて何度か試したが、残念ながら筆者にはできなかった。また、地震情報はウェブサイトの検索結果が表示された。
キーボードを使う必要もあり
コルタナでの予定追加やメッセージ送信、電話の発信、メール送信には、iPhoneの標準アプリを起動する必要がある。また、メッセージやメールの本文は、入力画面のフィールドにオンスクリーンキーボードを使って入力しなければならない。
もちろん本文も声で入力するなら、キーボードのマイクキーをタップすれば、音声入力を利用できる。ただしこれはコルタナの機能ではなく、iPhoneの機能だ。この点、音声だけで最後まで作業を完結できるSiriと比較すると使い勝手が悪い。
また、コルタナは、音声での指示は初めの1回だけで、その後は画面での入力になる。音声で指示を完結したければ、要件をなるべく一気に話さなければならない。一方、Siriは会話するように分けて指示できる。もちろん「〇〇に今から帰りますとメッセージして」と一気に指示してもいい。音声アシスタントとしてはSiriのほうがあらゆる指示に対応してくれ、自由度が高く使いやすかった。
Windows版は便利だが……
コルタナにはWindows 10版がある。Mac版のSiriはこの秋の新しいOSに搭載されるが、現状ではコルタナがパソコンで動作する主要な音声アシスタントだ。
iPhoneで、Siriやコルタナを使うと画面は音声アシスタントに占有され、ユーザーの作業は中断してしまうが、Windows版コルタナでは、アプリを使いながらでも「コルタナさん」と呼びかけて、してほしいことを伝えれば応じてくれる。ユーザーの作業はほとんど妨げられない。これは意外に快適だ。
ただしiPhone版のコルタナが、Windows版コルタナと連携できる機能は、相互に入力したスケジュール、リマインダー、ニュース、ファイナンスなど、コルタナのホーム画面に表示される「カード」情報が中心になる。これらの情報を表示する機能は、iPhoneにも標準で備わっている。Windows版とわざわざ連携させたいとユーザーが思うかどうかは、筆者は疑問に感じた。
音声アシスタントとしては、iPhone版のコルタナにできてSiriにできないことは、ほぼないだろう。音声での入力も、会話形式で指示できるSiriの方が数段こなれている。さらにBluetoothのオン・オフ、おやすみモードのオン・オフなど、システムの設定変更は、Siriにはできてもコルタナにはできない。やはり、iPhone上で動作する音声アシスタントしてはSiriがおすすめではないだろうか。
(ライター 伊藤朝輝)
[日経トレンディネット 2016年7月28日付の記事を再構成]
ワークスタイルや暮らし・家計管理に役立つノウハウなどをまとめています。
※ NIKKEI STYLE は2023年にリニューアルしました。これまでに公開したコンテンツのほとんどは日経電子版などで引き続きご覧いただけます。
関連企業・業界