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朝夏まなと『エリザベート』で魅せる宝塚・男役の神髄

日経エンタテインメント!

2016/9/1

未婚の女性のみが舞台に立つ、世界でも類を見ない演劇集団・宝塚歌劇団。創立101年目となった昨年に現在の劇場がオープンして以来最高となる年間トータル動員数273万人(※1)を突破。拠点である宝塚大劇場と東京宝塚劇場の稼働率は2年連続で100%超を記録するなど、大きな盛り上がりを見せている。

今年の上半期も雪組で往年の大ヒットマンガ『るろうに剣心』を舞台化し、連日の満員完売。下半期も、大ヒットミュージカル『エリザベート―愛と死の輪舞ロンド―』の再演を筆頭に、話題作が目白押しだ。

女性が男性を演じる「男役」だからこその様式美、豪華な衣装やセット、華麗なダンスに、「歌劇団」の名に相応しい歌の数々──長きにわたり女性たちを虜にしてきた魅力を、宙組トップスターの朝夏まなとはどう感じているのか。『エリザベート-愛と死の輪舞-』の公演を控えた、宙組のトップスターに話を聞いた。

あさか・まなと 2002年に88期生として入団。星組『プラハの春』で初舞台後、花組に配属。12年6月に宙組へ組み替えし、15年2月から同組トップスターに就任。(写真:山本尚侍)

「きれい」「豪華」というのが一番にありますが、それは見た目だけではなく、一生懸命な姿勢がきれいなんだと感じます。何かを届けたいという演じる側の思いや精神の美しさが魅力的。だからこそ、お客様から(舞台を見て)「元気になりました」とか「楽しかった」などの感想を頂くと、伝わったんだと本当にうれしくなります。

それから、温かいところも魅力。お客様も生徒(※2)1人ひとりの成長を見てくれていますし、スタッフにも宝塚に愛のある人しかいません。実際に宝塚に入って分かったことですが、脚本も演出も、振り付けや衣装も全て生徒の個性が引き立つよう考えてくださっているんです。いい作品を作るためにスタッフも生徒も一丸となっている。その愛や温かさが、見た方に感動したと言っていただける舞台につながっているのだと思います。

(2014年の)100周年以降、男性のお客様が増えたことは舞台上からも分かりますし、ファン層の広がりは日々感じています。

宝塚は、常に主役を務める「男役トップスター」を頂点としたスターシステムが特徴。要となるトップスターの役割とは。

後輩たちには、背中で見せることを意識しています。やれと言われてやるのとそうでないのとでは結果が全く違いますから、気がついてもらえるように、舞台上でも日常生活でもやるべきことをやっていくしかない。メリハリは大事ですから、ときには体育会系の雰囲気作りもしますが、そこは臨機応変に考えています。

タカラジェンヌとしては「礼儀」「品格」を大切にしています。言葉で教わったことではありませんが、宝塚音楽学校(※3)時代からこれまで、舞台人としてやらなくてはいけないことをやっていくと、そこにたどり着くようにできているんです。だからこそ、これまで宝塚精神は失われずにきたのだと思います。

■大作『エリザベート』の魅力

朝夏がこの夏挑むミュージカル『エリザベート』は、96年に雪組で初演されて以来、宝塚で過去8度上演され、延べ216万人を動員する人気作。そこで、オーストリア皇后のエリザベートを「死」へと誘う黄泉の帝王トートを演じる。本作は世界各国で上演されているが、宝塚版のみトートの視点で物語が描かれているのが特徴だ。取材時は歌稽古が始まったばかりのタイミング。「トート役を演じる実感はまだない」と言う朝夏だが、「『エリザベート』がすごい作品だとは実感している」と話す。

ミュージカル「エリザベート―愛と死の輪舞ロンド―」皇后エリザベートの生涯と、彼女につきまとう「死(=トート)」の愛の物語。公演期間/東京宝塚劇場は9月9日~10月16日(C)宝塚歌劇団

衣装、セット、動きそのどれもが計算し尽くされていて、かつ音楽が全てを物語るのが『エリザベート』。今はまだやる準備をしている段階ですが、プレッシャーよりも演じられるうれしさのほうが大きいですね。制作発表のときに小池先生(※4)から、「(朝夏のトートへのアプローチが)いろいろ削ぎ落として、核心をついている」と言っていただいたのですが、稽古はこれからなのでどう役が出来上がるのか(笑)。演じながら自分の中から出てくるものを見たいですし、やりたいこともたくさんあるので、実際に舞台に立って何かを実感するのかも…とは思います。

宝塚版はトートとエリザベートが主軸になっていて、駆け引きも、きゅんきゅんする場面もあります。そして、ドロドロしたところも含めて全て美しく描いているのが宝塚版です。冒頭の歌から世界観が広がりますし、独特の客席のひんやりとする感じや、スリリングでハラハラする感じを、ぜひ劇場で味わってほしいですね。

舞台の魅力を「奇跡が起こること。そしてその奇跡を目の当たりにできること」と語る朝夏。長身で華やかなルックスと、抜群の運動神経を生かした美麗なダンスが持ち味の彼女は、トップスターのなかでもひと際“陽”の雰囲気を漂わせる。そんな朝夏が演じる黄泉の帝王・トートは、新しい解釈をもたらしてくれるに違いない。

※1…宝塚大劇場と東京宝塚劇場の本公演に加え、梅田芸術劇場、赤坂ACTシアター、全国ツアーなど、外部劇場での公演動員数も含む。※2…宝塚歌劇団に所属する劇団員は「生徒」と呼ばれる。※3…宝塚歌劇団団員の養成機関。「清く正しく美しく」をモットーに、演劇や声楽、バレエなどを学ぶ。※4…小池修一郎。宝塚歌劇団所属の演出家。東宝ミュージカルなどの作品も広く手がける。

(ライター 山内涼子)

[日経エンタテインメント! 2016年8月号の記事を再構成]

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