AI革命で日本株は復活する(藤田勉)日本戦略総合研究所社長

「2020年代に到来するであろう人工知能(AI)革命において、日本企業の技術的な優位性は高い。AI革命を大きな相場のテーマとして、日本株が復活することが期待される」

日本株復活のカギは、人工知能(AI)革命だ。2020年代に到来するであろうAI革命において、日本企業の技術的な優位性は高い。そこでまず、IT(情報技術)革命時代の株価を分析した上で、AI革命時代の日本株市場を展望したい。

1990年代以降のインターネットを軸とするIT革命においては、米国企業が圧勝した。その結果として、長期にわたって世界の主要市場の中で米国株の上昇率が群を抜いて高い。過去10年間で米国株は約1.6倍(8月5日時点)に跳ね上がった。これに対し日本はほぼ横ばいにとどまり、米株のパフォーマンスの良さが突出している。

しかしながら、米国の今年の経済成長率は1.8%(シティグループ証券予想)と低水準の見通しだ。つまり米国株上昇の理由はマクロ要因では説明しづらい。それではなぜ、米国株が大きく上昇しているのか。それは、企業の成長力と収益力が高いからだ。米国企業の自己資本利益率(ROE)は約15%と、欧州、日本(ともに7%台)の2倍に達する。

最近ではアマゾン・ドット・コム、グーグルを傘下に持つアルファベット、フェイスブックといった巨大IT企業3社の株価が大きく上昇しており、これが相場を大きく押し上げている。これら米IT企業は、巨大だが動きは敏しょうだ。強力なリーダーが、リスクを取って大胆な投資や企業買収を実行している。

アマゾンの時価総額は36兆円(8月5日時点、1ドル=100円換算)、アルファベットは約55兆円、フェイスブックは約36兆円もある。この1年間にアマゾンの株価は4割超上昇し、時価総額は約11兆円も増加した。アルファベットは約2割、フェイスブックは約3割それぞれ上昇して、ともに約9兆円増加した。このところ株価に一時の勢いはないが、アップルの時価総額はなお約58兆円、マイクロソフトは45兆円もある。

ちなみに、日本で巨大IT企業といわれるパナソニックや日立製作所の時価総額は2兆円台、そして今や日本最大のIT企業となっているキーエンスでも4兆円台にすぎない。8月5日時点での世界時価総額ランキングでは、キヤノンは273位、パナソニックは511位と06年末時点の85位、151位からそれぞれ大きく低下した。

しかし、来るべきAI革命においては、日本が圧倒的な優位性を持つ分野が多い。安倍政権も第四次産業革命と称して、AI革命をアベノミクスの柱に据えつつある。

AI革命の主戦場は、あらゆるモノがインターネットにつながる「IoT」、自動走行、ロボット、フィンテック(ITと金融の融合)の4分野だ。これらはいずれも日本企業が先行しているか、あるいは将来リードすることが見込まれる。

AI革命で最大の市場は、自動走行技術になるだろう。その主戦場である自動車の技術力も規模も、日本は世界を圧倒している。トヨタ自動車の時価総額(約19兆円)は、世界2位ダイムラーの2倍以上ある。トヨタは京セラと並んでKDDIの筆頭株主であり、移動体通信システムの技術力は大変高い。

そしてハイブリッドシステム、カーナビゲーションシステムなど自動車のIT化において、日本の自動車メーカーは世界を圧倒する。自動走行に不可欠なセンサー、小型モーター、電子制御用自動車部品においても、日本電産、オムロン、デンソーなど世界のトップ企業が数多い。

ロボットは、伝統的に日本が強い分野だ。ファナック、安川電機、パナソニックは、世界の工業用ロボットのトップメーカーである。そして、ソフトバンクグループ、ソニー、ホンダなどがサービス産業向けのロボット開発に注力している。その成功例がソフトバンクのペッパー君だ。またサイバーダインはロボットスーツを開発し、医療・介護の分野で新産業を創出した。

IoTでは高度なセンサーや電子部品が不可欠だが、この分野でも村田製作所、キーエンス、オムロンが世界的な競争力を持つ。さらに、コマツ、ファナック、三菱電機が機械の電子制御化において世界をリードしており、オリンパス、富士フイルムホールディングス、テルモなどが医療用機器のIoTで先行している。

フィンテックによって産業界と金融界の垣根が低くなり、その結果、産業界から金融業への進出が加速しよう。たとえば、ソニーや楽天の営業利益の半分前後はすでに金融事業から生まれている(15年度)。日本では楽天Edy(エディ)、WAON(ワオン)、nanaco(ナナコ)、Suica(スイカ)など電子マネーが普及しているため、フィンテックと親和性が高い。

日本の個人金融資産は1700兆円を超えるが、預金などが多いため、その配当利息収入は13兆円(利回り0.8%)にすぎない。仮にフィンテックによって「貯蓄から投資へ」が実現し、配当利息収入の利回りが1ポイント増えれば、配当利息収入が17兆円も増えることになる。これは日本の国内総生産(GDP)の3%以上に当たり、潜在的な市場は大きい。セブン銀行、ソニー銀行、SBI証券など金融分野への新規参入者が急成長しているが、これは金融事業にビジネスチャンスが大きいことを示している。

フィンテックによってメリットが最も大きいのが、自動車業界だろう。15年度の営業利益のうちトヨタ自動車は3392億円、ホンダは1994億円が金融事業によるものだ。自動車は元々、ローン事業が関係するし、損害保険、生命保険などとも親和性が高い。

このようにAI革命は、日本最強の産業である自動車を中心として産業界全体に大きな恩恵をもたらすことだろう。そして20年に向けて、AI革命を大きな相場のテーマとして、日本株が復活することが期待される。

藤田勉(ふじた・つとむ) 山一証券、メリルリンチを経て、現シティグループ証券顧問。2016年に日本戦略総合研究所社長。10年まで日経ヴェリタス人気アナリストランキング日本株ストラテジスト部門5年連続1位。慶應義塾大学「グローバル金融制度論」講師。SBI大学院大学教授。内閣官房経済部市場動向研究会委員、経済産業省企業価値研究会委員などを歴任。一橋大学大学院修了、経営法博士。1960年生まれ。
近づくキャッシュレス社会
ビジネスパーソンの住まいと暮らし