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アラスカに漂着した謎のクジラ、新種と判明

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ナショナルジオグラフィック日本版

米国アラスカ州の小さな島に打ち上げられたクジラが、DNA分析などで新種と判断され、7月26日付で科学誌「Marine Mammal Science」に掲載された。

物語は死体発見から始まった……と言うとミステリーの名作を思わせるが、この「死体」は体長7.3メートルもあった。

ベーリング海に浮かぶ岩と草地の小さなオアシス、プリビロフ諸島(米国アラスカ州)に属するセントジョージ島に死骸が打ち上げられたのは2014年6月。人のいない、風が吹きすさぶ海岸で、半分砂に埋まった何かを若い生物教師が目に留めた。教師は、かつてオットセイの研究者だった女性に連絡。彼女は当初、その正体がすぐ分かったと思った。大型で灰色、深海に潜り、時々死骸が潮流に乗って海岸に流れ着くツチクジラだ。

北海道の漁師は「カラス」と呼んでいた

ところが詳しく調べていくと、ツチクジラにしては肉の色が濃すぎ、背びれはかなり大きく柔らかい。成体というには小さすぎるのに、歯は年齢のため摩耗して黄色がかっていた。

今回の論文によると、この死骸はツチクジラなどではなく、全くの新種だという。ツチクジラより小さく、妙な体形の黒いクジラは、日本の漁師たちが「カラス」と呼んでいたものだ。「個体数も、どこでよく見られるのかも、何も分かっていません」と話すのは、米海洋大気局(NOAA)南西水産科学センターの分子遺伝学者、フィリップ・モリン氏だ。「今後、解明を進めていきます」

クジラの新種が見つかるのは珍しい。DNA研究が進んだおかげで、過去15年でクジラ目の新種は5つ発見されたが、2つはイルカであり、わずかに違うだけの近縁種の間に収まるようなケースがほとんどだった。今回の新種はツチクジラ属に含まれ、最も近い種とも外見が大きく異なる。また、北太平洋の中でも海洋哺乳類の研究が何十年も続いている海域に生息していた。

論文の共著者で、NOAA国立海洋哺乳類研究所のポール・ウェード氏は「まさに一大事です」と話す。「地上でも大型哺乳類の新種発見は極めてまれです。そうあることではありません。大きな注目に値します」

骨格、口吻、骨の粉末

モリン氏らはセントジョージ島の死骸の調査に加え、博物館にある古い標本から骨の粉末を取ったり、オホーツク海のクジラのDNA検査結果を検討したりした。それらの頭骨や口吻を調べ、さらには日本の捕鯨船による記録も分析。アリューシャン列島にある高校の体育館の天井から吊り下げられたクジラの骨までも調べ上げた。

その結果、チームはこう結論付けた。まだ命名されていないこのタイプのクジラは、北半球のツチクジラからは遺伝的にかなり遠い。分かっている中ではツチクジラに最も近縁の、南極海に生息するミナミツチクジラともほぼ同程度の隔たりがある。それどころか、違いがあまりに大きいため、上記2種のどちらとも違うと言うほかない。

「2016年になっても、6メートルを超えるような哺乳類にまだ新種が見つかると思うと、とても興奮します」とモリン氏は話す。

興奮したのはモリン氏だけではない。全海洋哺乳類の一覧を毎年発行する海洋哺乳類学会で分類委員を務めるロバート・ピットマン氏もその1人だ。中国のヨウスコウカワイルカが実質上ほぼ絶滅し、メキシコのコガシラネズミイルカも絶滅の危機にあるなど、海洋哺乳類の多様性が低下しつつある中で、ピットマン氏は今回の発見を「勇気づけられる」と評価する。

「これだけ大きくて変わった外見のクジラを、科学界が長い間見過ごしてきたと思うとあ然とさせられます」とピットマン氏。「海に関する私たちの知識がいかにちっぽけかという、はっきりしたメッセージです」

今回の発見は、エネルギー開発からソナーの使用まで、海での人間活動が引き起こす問題を私たちがどれほど分かっているのかという疑問も突き付けている。こんな生物がいるということすら、知っている人はごくわずかだったのだ。

観察困難、謎のクジラ

現在生きているクジラ目の種は、シャチやザトウクジラ、ハンドウイルカ、イシイルカなど88種が確認されている。うち22種がアカボウクジラ科で、その中で最大なのがツチクジラだ。体長は10.7~12メートル、体重12トンに達する。大きな群れで移動し、900メートル以上も潜ることがあり、1時間水中にいることも可能だ。日本は今でもアカボウクジラ科のクジラを捕鯨対象としているが、生態などはほとんど分かっていない。その理由として、餌を捕るために岸から遠く離れた海底深くで長時間を過ごしていることなどがある。

セントジョージ島は面積91平方キロ、人口約100人。数十万頭のオットセイが憩い、250万羽の鳥が羽を休める場所だ。この島のザパドニ湾でクジラの死骸を見つけた教師は、オットセイの研究をしていたことがあるカリン・ホルサー氏に連絡。ホルサー氏は初めツチクジラだと思ったが、潮と海流で全身が砂の中から現れると、まったく知らない種だと気付いた。ホルサー氏は同僚のクジラ図鑑を参照し、アラスカにいる他の専門家に写真を送って意見を求めた。

数日後に現場に到着した在野の生態学者、ミシェル・リッジウェー氏は、「背びれが大きく、尾のかなり近くに付いており、ツチクジラのそれより湾曲していました」と振り返る。「あごの構造とメロン体の形も違っていましたし」。しかも、明らかに成体でありながら、成長しきったツチクジラの3分の2程度の体長しかなかった。

ホルサー氏は島民と共に死骸の大きさを計測。リッジウェー氏が組織を採取し、何人かを介して、いささか臭いを放つサンプルを南カリフォルニアにあるモリン氏の研究室に送る手配をした。

これがモリン氏の関心を引いた。

「民間伝承にしかなかった」クジラ

そのちょうど9カ月前、モリン氏は日本のある研究チームの動向を追っていた。1940年代以降、捕鯨船員たちの間でささやかれていた珍しい黒いクジラと、ツチクジラとの違いを明らかにする研究が行われていたのだ。こうした比較的小さなクジラの群れが、北海道の根室海峡で時折目撃されていた。だが時期は4月から6月に限られ、科学者による生きた個体の目撃例はなかった。

「ほとんど民間伝承だったのです」とモリン氏は言う。

北海道大学などの研究者らは2013年秋の論文で、これはアカボウクジラ科の未知の種かもしれないと推測していた。だが、北海道沖で座礁したわずか3頭のDNAから結論を導かざるを得ず、さらに根拠が必要だと締めくくっていた。

モリン氏はこれを受けて、セントジョージ島のサンプルが届く以前から、もっと標本を集めようと奔走していたのだった。

まずNOAAが保管する組織をくまなく調べ、ツチクジラと判定されていた全標本およそ50個を取り出した。DNA分析の結果、その中の2つが2013年に日本のチームが検査した「黒い小型種」と遺伝的にほぼ一致することが判明。2つのうち1つは2004年に浜に打ち上げられたクジラで、現在はアリューシャン列島、ウナラスカ島のダッチハーバーにある学校の体育館に吊り下げられている。現地の研究者は、ツチクジラの幼体だと長い間考えていた。

日本の研究チームの1人からも、モリン氏に提案があった。その科学者は、1948年に見つかった奇妙な頭骨を持つスミソニアン協会のクジラの骨格を同定していたが、その骨を再調査してはというものだった。加えてモリン氏は、ロサンゼルス自然史博物館にある別の骨格標本の体測値も検討し、「黒い小型種」ではないかとの感触を得た。スミソニアンとロスの標本から骨の粉末を採取してDNA分析を行うと、「カラス」と一致した。

セントジョージ島のクジラも加わり、モリン氏は日本で見つかった3体に近い新たな標本5つを確認した。

とはいえ、新種を記述するには「多くの証拠を積み上げねばなりませんが、生きているところを見たことがない動物に関しては非常に困難です」とモリン氏は言う。だが、ツチクジラと「黒い小型種」の体測値はDNA分析の結果同様、非常に隔たりがあった。

ツチクジラは、ロシアや日本からメキシコまでの北太平洋全域に生息し、遺伝的なばらつきは小さい。一方、モリン氏が分析した新たな標本5つは、ツチクジラとは大きな差があった。いずれもベーリング海かアリューシャン列島で得られたものだ。

「小型種同士の遺伝的なばらつきはほとんどなく、これらとツチクジラとの相違の方がずっと大きいものでした」とモリン氏。「これが我々の主張の中心です」

今後、この新種は公式に記録され命名されることになるが、今回の発見はクジラ目の分類を行う外部の専門家からも認められる必要がある。だがピットマン氏ら研究者は、新種なのは間違いないと口をそろえる。

「人間による環境へのダメージは深刻化する一方ですが、世界に生物多様性が存在すると知りながら、保全に手を付けることすらできていません」とモリン氏。「この世界には、私たちが理解もできていないことが山のようにあるのです」

(文 Craig Welch、訳 高野夏美、日経ナショナル ジオグラフィック社)

[ナショナル ジオグラフィック ニュース 2016年7月28日付]

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