リオ五輪あす開幕 LRT、開催契機に導入、街に活力

巨大壁画のわきを走り抜けるリオのLRT(写真・山根昭)
巨大壁画のわきを走り抜けるリオのLRT(写真・山根昭)

リオデジャネイロ五輪が日本時間の6日朝に開幕する。リオ市内では地下鉄や次世代型路面電車(LRT)などの交通インフラも整備され、五輪・パラリンピックの観戦客を迎え入れる用意が整った。特にLRTには三井物産が出資し、地元企業にはない日本企業特有のきめ細やかなマネジメント手法も採用。新しい交通網は競技施設へのアクセスを改善するだけでなく、大会後も年間600万人を超える都市住民の生活を支え続ける。大会準備の遅れや治安面での不安が指摘されるリオ五輪だが、次世代に残すレガシー(遺産)の整備も進んでいる。

真新しい白色のLRTの車両が市の中心部に近い港湾地区にあるパラダ・ドス・ナビオス駅からゆっくりと動きだす。駅前には、ブラジルの有名アーティスト、エドゥアルド・コブラ氏が制作した原色をあしらった巨大壁画がそびえ立つ。開会前から乗り込んできた各国の観光客の目をひいている。

リオ市近郊に住むジョバンニ・カバロ・ダ・シルバさん(35)はLRTを利用し、「仕事でサンパウロに行くとき、(国内線が発着する)サントス・ドゥモン空港までのアクセスが格段に便利になった」と喜ぶ。車内は地元住民と五輪観光客が入り混じり、ほぼ満員。LRTは早くも地域に不可欠な交通インフラとして定着しつつある。

地元の住人と観光客で満員になった車内

五輪開催に合わせて導入されたLRTは専用軌道を走り慢性的な交通渋滞に巻き込まれることなく、乗客を輸送できる強みがある。6月に開業し、7月26日から有料の運行に移行、運賃は距離に関係なく3.8レアル。リオ市内のバス料金と同じだ。市民は地下鉄などと共通のプリペイド式交通カードを使い、日本円にして120円弱の運賃で、気軽に利用されている。

LRTのプロジェクトを進めたブラジル三井物産の藤田洋平・交通プロジェクト部副部長は「今は部分開業の段階。来年の前半に28キロの全線が開通し、31駅の交通網が完成すれば、もっと利便性は高まる」と話す。全線開通時に輸送能力は1日あたり28万5000人になる見通しだ。リオ市はLRTの整備に伴い、市内の中心部を走る既存のバスの車両を減らす方針を示している。巨大スポーツイベントに合わせて導入された交通インフラは、バスの排ガスを抑制できる環境配慮型の都市整備も可能にした。

三井物産がブラジルの複合企業オデブレヒトとの合弁で都市鉄道事業に参入したのは2014年。ブラジルでの都市鉄道事業はサンパウロの地下鉄など4つのプロジェクトがあり、リオのLRTもその一つだ。このLRTには15億レアル(約480億円)を投じて開業にこぎつけた。

港湾地区の再開発によって街に賑わいが生まれた(港湾地区のポート・マラビリャ)

リオのLRT整備は市が主導した港湾地区ポート・マラビリャの再開発プロジェクトと連動している。この地区は以前は近づいてはいけない危険な場所とされていたという。ブラジル三井物産の旭俊哉副社長は「再開発によって街の風景は激変し、にぎわいが生まれた」と効果を強調する。再開発エリアは五輪期間中に大型のモニターで競技の映像を視聴できるライブサイトのほか、聖火台も設置される予定。このエリアにLRTで多くの若者らを呼び込み、街に活気をもたらす狙いだ。

リオでは、三井物産が出資するLRT以外にも新しい交通インフラが登場している。五輪公園(オリンピックパーク)などがあるバーラ地区と馬術やホッケーなどの競技会場が集まるデオドロ地区を結ぶバス高速輸送システム(BRT)は7月9日に完成。工事が遅れていた地下鉄4号線も7月30日に開業した。これらの交通インフラは貴重な都市のレガシーとして生活しやすさ、働きやすさを下支えする。五輪開催を契機にした都市整備は前回ロンドン大会でも行われており、20年の東京大会ではどのような都市を世界に見せるのだろうか。

LRT 従来の路面電車よりも車両の床を低くし、高齢者らが乗り降りしやすいように工夫した新しいタイプの路面電車。「ライト・レール・トランジット」の略。高性能モーターの採用によって騒音や振動も低減し、乗り心地を高めている。都市の中心部に整備することで、自動車による交通渋滞を解消したり、環境負荷を低減したりして都市の再生に役立つとされる。

(リオデジャネイロ=山根昭)

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