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ウルトラマン51年目の挑戦 大人攻略へ多様に変身!

2016/8/23 日経MJ

「ウルトラマンフェスティバル2016」の展示を楽しむ親子(東京都豊島区)

特撮ヒーロー「ウルトラマン」が、放送開始から50周年を迎えた。今も新作が製作され高い知名度を誇るが、「仮面ライダー」など他の長寿キャラクターに人気や事業規模で引き離された。最高視聴率が40%を超えた往事の人気を取り戻そうと、アパレルや美少女キャラなど思い切った商品展開に走る。人々の注目の的としていま一度、帰ってこられるか――。

「がんばれ!」。7月下旬、東京・池袋で始まったイベント「ウルトラマンフェスティバル2016」。舞台で宇宙忍者「バルタン星人」と戦う「ウルトラマンオーブ」に子供らの声援がとんでいた。今回が26回目の開催で、累計の来場者は440万人を超える。

父親(45)と来た3歳の男の子は動画配信で過去の作品も視聴しており「一番好きなのは(1970年代初めの)『帰ってきたウルトラマン』」と話す。

ウルトラマンの放送が始まったのは66年7月。今夏で50周年を迎えた。13年には「最も派生テレビシリーズが作られたテレビ番組」として、ギネス世界記録に認定された。

人形や変身グッズなど長年の玩具展開が評価され、今年の日本おもちゃ大賞の特別賞はバンダイのウルトラマンシリーズが受賞した。だが、15年度の同社などのキャラクター別売上高では仮面ライダーの157億円に対して、ウルトラマンはわずか27億円。特別賞どころか、カラータイマーが点滅しかねないピンチだ。

ウルトラマンは円谷プロダクション(東京・渋谷)の経営不安など、制作サイドの都合で新作が作れなかった空白の期間が長い。2000年から途切れず番組を送り出してきた仮面ライダーシリーズに比べ、存在感を落としてきた。

どう現状を打開するか。「これまでウルトラマンの商品展開は子供とコアなファンに二極化していた。しかし一時40%を超える視聴率をとったウルトラマンは、もっといろんな層の心にくさびをうっている」と、円谷プロのマーケティング統括室の藤田浩ビジネスプロデューサーは話す。

「オタク」ではない大人世代をどう攻略するか。カギになるのが、親会社でパチンコやコンテンツ事業を手掛けるフィールズと始めた新ブランド「A MAN of ULTRA」だ。

アパレルや雑貨など50社以上が参加。コンセプトは「日常の世界に『ウルトラな男』を創り出す」と極めて抽象的だ。ウルトラマンや怪獣を「リアルには表現しない」という、通常のキャラクタービジネスとは真逆の条件を掲げている。

光線や怪獣の皮膚の模様が使われているが、よくよく観察しないと分からない。ウルトラマンに愛着はあるが、キャラ商品を身に付けるのはためらう「ライトユーザー」を狙った。

例えばシチズン時計の腕時計(税別2万7500円)は、「M78」とウルトラマンの生まれたM78星雲を思い出させるロゴをさりげなく入れた。「イメージをいかに少ない要素でデザインにまとめるか。ほかのキャラ商品と大きく違った」(グローバル企画事業部の岡崎光陽さん)

三越伊勢丹は4~7月、9店舗でA MAN of ULTRAの期間限定店を展開した。40~60代の男性が多く、手にして「ウルトラマンなんだ」と気がつき買っていく人も。三越日本橋本店では「同様の広さを使ったプロモーションの平均売り上げは軽く超えた」(紳士・スポーツ統括部の井染尚二バイヤー)。

記者も試しにスーツ姿のウルトラマンとおぼしき刺しゅうがある約1万円のネクタイを購入。半月以上、毎日身に付けて仕事をしてみた。ウルトラマンの商品だと気づいたのは、円谷プロの社員を除けば後輩1人だけだった。確かにさりげなく日常使いができる。

クールなA MAN of ULTRAに対し、振り切った企画もある。円谷プロはKADOKAWAなどと組んで、なんと怪獣を美少女に「擬人化」した「ウルトラ怪獣擬人化計画」を始めた。

雑誌連載から始め、今秋にはスマートフォン向けの映像サービス「dアニメストア」で、ゼットンやゴモラなど往年の名怪獣が美少女になって登場するアニメ「怪獣娘」を配信する。

円谷プロで同プロジェクトに関わる渡部祐樹さんは「テレビシリーズに触れていない世代にはアニメの方が刺さると思った」と話す。新作が少なかった80~90年代半ばに子供時代を送った谷間世代に、アニメを入り口にウルトラマンへの関心を高めてもらう狙いだ。

話題を呼んだ事例のひとつが、怪獣のフィギュアやイラストを並べた川崎市の居酒屋「怪獣酒場」。ベネリック(東京・港)などが2014年3月から1年間の期間限定で開いた。しかし週末は数時間待ちという人気で、15年から常設店「帰ってきた怪獣酒場」として営業を再開した。

フジテレビ系CS有料チャンネルではメフィラス星人などの宇宙人が商店街などを巡る「ウルトラ怪獣散歩」が放送中。散歩番組は人気とはいえ、着ぐるみの怪獣が稲荷大社にお参りし、舞妓(まいこ)と遊び、スキー場のリフトに乗る姿は何とも突き抜けている。

ウルトラファンの女性会社員(24)は「色々なコラボがあって仕事を選ばない感じがいい」と話すが、円谷プロにとってウルトラマンのイメージを壊しかねない危険な手にも見える。

多角化に基準はあるのか。IPプロデュース本部の庄司和宏・国内事業部長は「ヒーロー性を維持するためウルトラマンは慎重に。怪獣は比較的自由に展開していく」と話す。

暴れん坊怪獣のレッドキングなど、人気のある怪獣は広く設定が共有され、あまりにイメージに合わない企画が提案されることは意外に少ないという。ヒーローはクールに、怪獣は大暴れ。役割を使い分け、ファン層を広げていく。

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かつて国民的なヒーローだったウルトラマン。しかし今の子供たちの支持は薄い。バンダイが今年5月に実施した「子供の好きなキャラクター」調査では圏外。男女総合ランキングの発表が始まった2003年以降、10位以内に一度も入っていない。仮面ライダーが常連なのとは対照的だ。

「円谷プロは苦しんでいました」。07年、円谷プロが映像制作のTYOの傘下に入った時にはこんな新聞広告が。「ほんとうにご心配ばかりかけてきました。訴訟ごと、スキャンダル、そして重い資金難など『世界の円谷』として恥ずかしいことでした」

創業家内の対立もあり03~08年には社長が6回交代。「混乱で継続的にテレビ番組を作れなかったのが大きい」(関係者)。07~14年度は映画や再編集番組などが中心で、半年から1年間続くテレビ新作はない。

仮面ライダーは2000年代からオダギリジョーさんらを起用し「イケメン俳優の登竜門」としても定着した。円谷プロの大岡新一社長は「1996年の『ウルトラマンティガ』ではジャニーズが主演し、イケメン路線の先鞭(せんべん)を付けたが……」と悔しがる。新作が途切れてブームを作れなかった。

海外展開でも、映画やキャラクターの独占利用権を譲り受けたと主張するタイ人社長との訴訟が響き、手足を縛られている。

ビデオリサーチによれば7月末に放送された仮面ライダーゴーストの関東での世帯視聴率は3.8%。対して、ウルトラマンオーブはわずか0.9%だった。

一発逆転のスペシウム光線は出せるのか。ウルトラセブン最終回のセリフにならえば「ブランドは円谷プロ自らの手で守り抜かねばならない」。

(花田亮輔)

[日経MJ2016年8月5日付]

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